ユニオンテック株式会社(東京都渋谷区)は2025年12月からグループ経営体制への移行を本格化すると発表した。事業領域の拡大とグループ会社の増加を背景に、事業間連携とクロスセルを強化し、今後5年間で101名の事業責任者を育成する中期成長戦略「UT101」を始動する。
同社はオフィスや商業空間の設計・施工を軸に多様な事業を展開しており、今回の新体制移行は、分社化・M&Aを通じて拡大した事業ポートフォリオを最適化し、複数事業が協働して新規案件を創出できる体制を築くことを目的とする。
中期計画では、経営資源の統合と事業責任者層の育成を両輪に据えた成長モデルの確立を目指す。
「UT101」始動で中期成長ステージへ
ユニオンテックは、2021年に掲げた中期目標「UT100」(売上100億円・社員100人)を達成段階にあり、その先を見据えた取り組みとして「UT101」を策定した。
新たな5年間の重点領域は、新規事業の継続的創出、グループとしての非連続的成長、建設業界への貢献拡大の3本柱だ。同社は内部登用・外部採用・M&A・スピンオフ型の独立支援を組み合わせ、事業を担うリーダーを育てるとする。
「UT101」は単なる経営戦略にとどまらず、事業家志向を持つ人材が責任ある立場で事業運営を担う機会を提供する仕組みでもある。大川祐介代表取締役は、拡張した事業領域を束ねる仕組みを確立することで、グループ全体の持続的な事業創出を実現するとしている。
拡大続くグループ構成と横断体制
2024年から2025年にかけて、ユニオンテックグループには6社が新たに加わり、全体で15事業体となった。新規設立のdesignspirits、ロクラ、NFCの3社に加え、T&Cおよび家具制作会社がグループ参画したほか、新たにUTマーケティングを販社として設置した。
これにより、施主向けの企画設計から不動産仲介、家具・アート・PM支援、AIツールやBPOといった業界支援まで、建築バリューチェーンを包括する事業構造が形成された。
多角化により、オフィス改装やクリニック開業支援など、施主のライフステージに応じたサービス連携が自然発生的に進んでいる。
これに伴い、複数事業が協働で提案を行うクロスセルが加速。単一事業では捉えきれなかった提案機会が増加しており、グループ経営体制への移行は必然的な流れとなった。
新体制下の経営組織と役割
ユニオンテックは、2025年12月の新体制発足にあわせて組織を再編する。
グループ営業室は大川代表取締役が統括し、商材群の横断営業や新規顧客接点の創出を担う。グループ経営企画室(取締役・木村哲也)は中期計画の策定やM&A戦略を統括し、グループ企画統轄室(取締役・大髙健)が事業間連携とバリューチェーン再構築を推進する。
また、グループコミュニケーション室(取締役・赤枝泰明)が組織開発と社内広報を担い、カルチャー形成を支える。
取締役に新たに選任された大髙健氏は、グループ内の横断的な提案機会の拡大と、事業連携を通じた価値創出の司令塔を務める。
大髙氏はNTTドコモでのマーケティング経験を経て、建設スタートアップやコンサルティング分野で事業戦略を主導してきた経歴を持つ。
自身の就任に際し、「事業間の連携を軸に再現性ある成長モデルを築く」とコメントしている。
建設関連事業の外部環境と連動
同社の体制強化の背景には、建設・内装業界の構造変化がある。オフィス需要の多様化、医療・美容クリニックの新設増加、空き家活用など、需要軸の広がりとともに、複数業態を横断する企画力が問われている。
ユニオンテックはこれに対応し、空間設計やデジタル技術を融合させたサービス体系を広げ、3DCGやBPOなど周辺分野にも本格参入している。
一方で、業界では施工管理や人材確保の難易度が高まりつつあり、グループ内連携の効率化と意思決定の迅速化は運用上の重要課題と位置づけられる。同社は取締役層が横断的機能を直接管掌する仕組みを導入し、リスク分散と経営スピードの両立を図る構えだ。
継続的な事業創出体制の確立へ
大髙取締役は、グループ経営としての仕組みづくりを進める段階にあるとした上で、「持続的な新規事業創出を支える運営基盤の整備を重視する」と述べた。また、グループ横断のクロスセル機能や、事業責任者の自主性を高める育成施策を通じて、各事業のシナジーを高める考えを示した。業界関係者の間では、同社の「事業責任者101名構想」が、ベンチャー型の新規事業育成モデルとして機能するかが焦点となっている。
ユニオンテックは、施主向け価値の拡充や提供プロセスの外販化などを並行して進めており、
今後はグループ間の横断運営を主軸に、持続的な事業創出体制の確立を図る。今回の体制移行は、建設・設計分野で再編が進む中、小規模事業を束ねる新しい経営モデルの形成過程の一例といえる。