株式会社SGC(東京・中央区)は2025年12月1日、ハワイ・オアフ島で同月14日に開催される「JALホノルルマラソン2025」に合わせ、純金製の「K24ホノルルマラソン2025記念メダル」を発売すると明らかにした。直径約2センチ、重さ約3グラムの24金製で、同社のスポンサーのもとで製作される。販売は店舗や公式オンラインストアのほか、大型催事「大黄金展」などでも行う。
同社は、個人向けに記念メダルを製作することで、ランナーのみならず観戦者を含めた大会参加の記念を「金」という素材で残すことを狙う。SGCは2023年からホノルルマラソンのスポンサーを務めており、過去には優勝者用メダルを手がけた実績を持つ。大会実施主体であるホノルルマラソン日本事務局との協業を通じ、金工作の技術を社会的イベントに生かすかたちを強化している。
フルマラソン優勝者に202.5グラムの純金メダル
SGCは今回、記念メダルの一般販売に加えて、フルマラソン男女および車いす部門男女優勝者に贈られる純金製メダルも製作する。2025年大会にちなみ、重さは202.5グラム。デザインは同社美術工藝部が担当し、「ランナーや関係者への感謝と祝福の想いを永遠の輝きに変える」というコンセプトで仕上げられる。同社は大会全体へのメダル提供のほか、10キロラン&ウォーク、カラカウア・メリーマイルの完走者向けメダルも手がける。これにより、フルマラソン本戦だけでなく関連イベントを含む多様なランナー層にSGCの製作技術が行き渡る構図となる。完走の達成感や記録だけでなく、持続的な記念品として「形に残る体験価値」を提供することを目指している。
金工作家が思いを形にする制作理念
今回のメダル製作は、同社が掲げる「想いを金でかたちにする」というものづくり理念に基づくものだ。制作担当者は「純金メダルは優勝ランナーだけのものではなく、多くの人々に手にしてもらえるように製作した」と述べている。SGCは精錬から製作、販売、買取までを一貫して手がける金専門企業で、銀座の本社拠点のほか国内百貨店での催事「大黄金展」を各地で実施している。総点数1,000点以上の金製品を展示・販売する催事として、京都や大阪など主要都市の百貨店で開催してきた。ホノルルマラソン記念メダルもこの催事のなかで生産・展示され、販売期間は2026年2月末までを見込む。
金製品人気と記念プロジェクトの拡大
金の高騰や資産性への注目の高まりを背景に、金製品を記念品として販売する動きが広がっている。SGCによるホノルルマラソン連携は、スポーツと文化イベントの融合という新しい形を取る。同社はこのほか、美術工藝や現代アート分野でも金を素材とした作品を制作しており、次世代の金工作家の育成も進めている。産業としての金加工技術を継承する構造づくりが国内で課題となるなか、スポーツイベントを通じた発信は、技術文化の振興にも寄与するとみられる。
マラソン大会との協業が定着へ
ホノルルマラソンは1973年に始まり、毎年世界中から2万人以上が参加するハワイ最大の市民マラソンとして知られる。大会運営の日本事務局は近年、バーチャル・イベントやSNSコミュニティ構築にも力を入れており、日本発のスポーツ文化交流としての側面を強めている。SGCがスポンサーを務めるのは3年目となる。2023年以降、同社は大会関連メダルのデザインから製作・提供までを担い、ランナーとの接点を拡大してきた。これらの活動はスポーツ協賛を広く展開する企業群のなかでも、工藝技術を中心に据える点で独自性がある。
今後の展望と課題
SGCは今後も金工作技術を活かしたスポーツ関連の記念製作を継続する方針だ。一方、金相場の変動や素材調達コストの影響など、安定的な供給体制の維持が課題とされる。受注生産で約2カ月の製作期間を要することから、需要動向に応じた計画的生産も求められる。業界関係者の間では、純金メダルのような「体験と所有」を組み合わせた記念品は、イベント経済の新たな価値モデルになり得るとの見方もある。ホノルルマラソンとの協働が定着すれば、他の国際大会への波及も予想され、スポーツを媒介にした日本発の金工表現の国際的広がりが注目されるだろう。