三菱食品株式会社(東京都文京区)は16日、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(名古屋市)監修による新商品「ひとくちラスク じっくりコトコト 濃厚コーンポタージュ味」と「同濃厚かぼちゃポタージュ味」を発表した。2025年12月23日からローソンで先行発売し、2026年1月12日から全国で期間限定販売される。
三菱食品が展開するコラボレーションブランド「M’colla(エムコラ)」によるもので、人気スープ「じっくりコトコト こんがりパン」の味をラスク菓子として再現した。スープの濃厚な味わいをおやつ・夜食シーンで楽しめるよう提案するのが狙いだ。ポッカサッポロは監修者として味の方向性を示し、三菱食品は製造・流通を担う。M’collaブランドでは、メーカー各社との共同開発により新しい食体験を提供する取り組みを続けている。
全国展開へ ファン層の拡大狙う
今回発売する2種類の「ひとくちラスク」はいずれも内容量31グラムで、全国の小売店で3月末まで販売される。先行販売は全国のローソンで行われ、冬季の限定販売として展開される。両商品とも「じっくりコトコト」シリーズの濃厚ポタージュの風味を小型ラスクに閉じ込めており、ポッカサッポロのスープブランドと異なる切り口でファン層の拡大を狙う。
「濃厚コーンポタージュ味」は、スープの甘みと旨味の両立を意識した味設計とされ、「濃厚かぼちゃポタージュ味」は、冬場需要を背景とする温かなイメージを重ねたラインナップとなる。
期間限定販売とした背景には、季節変化にあわせたスナック市場の需要対応があるとみられる。販売エリアは全国で、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで取り扱う。
拡大するスナック菓子市場 トースト系の需要成長が後押し
三菱食品は商品の位置づけについて、スナック菓子市場の拡大を踏まえた新カテゴリー展開の一環とする。インテージSCIの推計によると、スナック市場全体の販売金額は2020年から2024年にかけて増加傾向を維持し、「トースト」などパン系菓子のカテゴリー成長が確認されている。背景には、“小腹満たし”を目的にした消費の広がりがある。食事と間食の境界が曖昧になるなか、ラスクのような軽食需要が伸びているためだ。
特に「トースト系菓子」は、甘味と塩味のバランス、歯ごたえなどが支持され、家庭消費・オフィス消費双方で拡大した。三菱食品はその動きに呼応し、「M’colla」ブランドを通じて既存の菓子カテゴリーにない味覚・食感体験を志向する製品開発を重ねてきた。市場ではインスタントスープやパン菓子など異業種間のコラボ商品が増えており、ブランド間連携がマーケティングの鍵になりつつある。
コラボブランド戦略に一段の厚み 食品卸の強み生かす
M’collaは、三菱食品がメーカーと共同で開発するコラボレーションブランドである。これまでも他社と組み、多様なカテゴリーで商品を展開してきた。同ブランドの特徴は、食品卸としての調達・流通基盤と、メーカーが持つ商品開発ノウハウを掛け合わせる点だ。今回のポッカサッポロとの協働では、同社の主力カップスープ「じっくりコトコト こんがりパン」を菓子に応用する発想が生まれた。
ポッカサッポロはスープ分野で高い知名度を持ち、特に秋冬の販売期に強みを発揮している。三菱食品にとっては、飲料・食品メーカーとの連携を深めることで販路を広げる狙いがある。両社が持つブランド資産を組み合わせることで、流通チャネルに新しい価値を提供する試みといえる。食品卸業は自社開発ブランドの育成を通じて、メーカー依存からの脱却を模索する動きが進んでいる。
持続販売の鍵はシーズン需要と商品訴求力
新商品の販売期間は冬季に限られ、4月以降は販売終了を予定している。これはスープ系風味の商品特性と、寒冷期に集中する需要構造に合わせたもので、消費時期を明確に設計する短期展開となる。
一方で、ローソンなどコンビニエンスストアを窓口にした流通形態が機動的であり、再販やシリーズ化への展開判断を容易にする。M’collaブランドでのシリーズ構築を見据えた市場反応の把握が次の課題となる。
小袋サイズ・短期販売という形式は、在庫リスクを抑えつつ新味を試すトライアル商品としても機能する可能性がある。
また、季節菓子として冬季限定で展開されることにより、来期以降の継続販売の可否を検討する局面も想定される。業界関係者の間では、こうした限定コラボ型商品がスナック市場の柔軟性を示す事例として注目されている。
外部環境の変化とリスク要因
背景には食品業界における消費動向の変化がある。外食控えや在宅勤務などの影響で、家庭内での軽食需要が強まったことが成長要因の一つとなっている。インテージのデータでも、コロナ禍以降スナック類の年間販売金額は右肩上がりを維持している。今後も生活様式の多様化が続くなかで、菓子・軽食双方の中間カテゴリーを狙った商品企画が増えそうだ。
一方、限定販売型商品の多発により、棚競争が激化する懸念もある。流通面では、店舗ごとの仕入れ判断や販売期間の短さが在庫管理上の課題となる可能性がある。コスト面でも短期製造・小ロット対応が必要になり、卸売業にとっては収益管理の精度が問われる。三菱食品は流通網を活かした調整でリスクを最小限に抑える構えだが、今後は中期的なブランド維持策の整備も課題に浮上している。
今回の取り組みは、菓子市場における異業種連携の一環として位置づけられる。M’collaブランドが引き続き新しい組み合わせを模索するなか、食品メーカーとのコラボ比率の拡大やシリーズ展開の可否が注目される。こうした開発は、流通主導型のコラボレーションが定着しつつある現状を映している。スナック需要の広がりに呼応した新商品戦略の動向が注目される。