株式会社ウエニ貿易(東京都台東区)は2025年12月4日、同社が展開するスイス生まれの腕時計ブランド「テンデンス(Tendence)」と人気アニメ『ONE PIECE(ワンピース)』のコラボレーションモデル第4弾を、東京都渋谷区の渋谷ロフト1階・間坂ステージで展示販売すると明らかにした。イベントは「コラボレーションウォッチ ポップアップストア」の一環で、12月13日から25日まで開催する。オンラインで即完売したモデルを含む全10種類が来場者に公開される予定だ。
今回の発表は、同ブランドと世界的アニメ作品との4度目の提携を記録する。ウエニ貿易は近年、アニメや映画との協業を通じたファッション展開を積極化しており、今回の催しもその一環と位置づける。アニメ放送25周年を迎えた『ONE PIECE』のブランド力を生かし、ファン層との接点拡大とブランド認知の向上を狙う。
麦わらの一味を表現した10種の限定モデル
展示販売されるのは、主人公モンキー・D・ルフィ率いる「麦わらの一味」10人をモチーフにした特別コレクションだ。いずれもテンデンスの人気シリーズ「FLASH」をベースに開発され、LEDライトを搭載した7色+レインボー発光が特徴となっている。最大の魅力は光とカラーリングでキャラクターの個性を表現するデザイン性にあり、それぞれのモデルが象徴カラーとディテールを再現している。ラインナップはルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルック、ジンベエの全10種類。裏蓋には海賊旗マークを刻印したほか、キャラクター仕様の特製スリーブと、手配書をモチーフにしたセルベットが付属する。オンラインストアでは同シリーズが完売しており、渋谷会場での特別販売は希少な機会となる見通しだ。
スイス発ブランドが生むアニメとの融合
テンデンスはスイスで生まれ、ウエニ貿易が日本市場で総代理を務める腕時計ブランドだ。大型ケースやライトギミックなど大胆な設計で知られ、若年層からも支持を集める。今回のコラボでは「冒険」「仲間」「自由」といった『ONE PIECE』の象徴的なテーマを時計の発光デザインで表現するなど、アニメとファッションの融合を試みる内容になっている。期間中に開催される「コラボレーションウォッチ ポップアップストア」は、複数の人気アニメ作品とのコラボ商品を集めた特別展で、来場者が実際に製品を手に取り世界観を体感できる設計とした。主催者によると、ファンのみならず時計愛好家からも反響があるという。
ONE PIECEが広げる世界的メディア戦略
『ONE PIECE』は尾田栄一郎氏による漫画で、1997年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載開始。2021年にコミックス100巻を突破し、シリーズ累計発行部数は2024年現在で5億部に達する。テレビアニメは1999年の放送開始以来1,000話を超え、2024年に放送25周年を迎えた。劇場版『ONE PIECE FILM RED』(2022年公開)は累計動員1,474万人、興行収入203億円超(アンコール上映分を含む)を記録。2023年には尾田氏自らが制作総指揮を務めた実写ドラマ版がNetflixで全世界配信され、海外ファンの支持を拡大した。今回のテンデンスとの協業も、こうした広がりを背景に進められた動きといえる。業界関係者は「アニメコンテンツの持つ国際的な拡散力が、高級カジュアルブランドの世界戦略とも親和性を持つ」とみている。
ファッション商社ウエニ貿易の多角展開
ウエニ貿易は時計や服飾雑貨などを扱う国内大手のファッション商社で、タイメックス(米国)、フルラ(伊)、ヴェルサーチェ(伊)、ツェッペリン(独)など世界各国のブランドを日本総代理として展開する。一方で、自社ブランド「エンジェルハート」「エンジェルクローバー」などを開発するメーカー機能も備える。今回のテンデンス×ONE PIECE第4弾はその多角的事業の一端として企画され、輸入商社として培った販路網とイベント企画力を生かした取り組みだ。渋谷ロフトでのリアル展示に加え、オンライン販売とも連動する構成で、ファン層ごとの購買行動を把握する狙いも読み取れる。
拡大するライセンス事業、市場動向に関心
アニメや漫画作品と時計ブランドの協業は近年増加傾向にある。市場では、人気キャラクターを主題にした高付加価値グッズへの需要が続いており、ライセンスビジネスの収益構造にも影響を与えている。今回の「テンデンス×ONE PIECE」は、アニメ作品が持つファンコミュニティの熱量をリアルの消費体験へ転化させる試金石といえる。同イベントは12月25日まで開催予定で、会場では入場制限を設ける場合もある。人気アニメと実物ブランドの融合が、年末商戦期の話題をどこまで喚起できるかが焦点となりそうだ。