スポーツ用品販売大手の株式会社アルペン(愛知県名古屋市)は2025年12月12日、東京都渋谷区の株式会社アールビーズと連携し、日本国内のマラソン大会を応援するプロジェクトを全国規模で拡大することを明らかにした。既に協賛している7大会に加え、新たに「さが桜マラソン2026」と「第28回長野マラソン」の2大会への協賛が決まり、計9大会を支援する体制となる。
両社はランニング分野の裾野拡大を目的に、初心者から上級者まで幅広い層の参加を促すイベントやキャンペーンを通じて地域大会を活性化する考えだ。アルペンは全国約200店舗を通じて大会情報を発信し、アールビーズが運営するポータルサイト「RUNNET」との連携でエントリー促進などを図る。
さが桜・長野マラソンを新規支援
今回新たに加わる「さが桜マラソン2026」は2026年3月22日に佐賀県内で、「第28回長野マラソン」は同年4月19日に長野県で開催される。前者は佐賀新聞社や県・市などが主催し、後者は日本オリンピック委員会や日本陸上競技連盟、長野県・長野市などが共催する全国有数の大会である。両大会では、出走ランナーを対象としたイベントやキャンペーンを展開するほか、店舗を活用した応援施策を強化する。アルペンが展開する「スポーツデポ」店舗では、ランナーの不安を解消する試走イベントを開催し、地元クラブコーチを招く形でトレーニング支援も行う。
全国展開へ 200店舗ネットワークを活用
アルペンは全国のスポーツデポ・アルペン店舗と、約1,100万人の会員基盤を活用し、各大会への参加促進やランナー同士の交流の場を設ける。富士山マラソンやにしおマラソンでは既に「完走おめでとう」メッセージ入りフォトスポットを設置し、参加者がゴールタイムとともに記念撮影できる機会を提供している。投稿キャンペーンを通じてSNS上での大会共有を促進するなど、各地で好評を得ている。
これに続き、長野マラソンでも抽選による出走権キャンペーンが展開される予定だ。対象店舗で規定額以上の商品を購入した顧客を対象に申し込みを受け付け、当選者には大会出走の機会を提供する。店舗を通じて参加意欲を後押しする仕組みとなる。
アールビーズ連携の背景と狙い
今回の拡大は、ランニング文化の深化に取り組む両社の協業が基盤にある。アルペンは1972年創業のスポーツ用品大手で、全国に幅広い小売網を有する。売上高2,600億円超(2025年6月期)、約200店舗を展開する一方、ゴルフ場やスキー場の経営も手がける。アールビーズは1975年創業で、雑誌「月刊ランナーズ」や国内最大のランニングポータルサイト「RUNNET」を運営する企業だ。大会運営やスポーツマーケティングにも強みを持ち、市民ランナーと大会主催者をつなぐ役割を果たしている。
両社は2023年以降、富士山マラソンや北九州マラソンなどで店舗連携による練習会や完走サポートイベントを展開してきた。地元指導者と協働する形式で、初心者が安全に大会へ挑戦する環境を整えることが狙いである。こうした取り組みが好評を得たことから、全国的なプロジェクト拡大に踏み切った。
ランニング市場の変化と企業の役割
国内のマラソン市場はコロナ禍後の大会再開を機に参加需要が回復し、2025年以降は主要大会のエントリー数が前年比を上回る傾向にある。特に地方大会では観光振興や健康志向と結びついた開催が増えており、企業がスポンサーとして地域振興に関わる例が目立つ。小売業者による支援は、物販拡大だけでなく「大会前から当日、完走後まで」を通した体験提供の形へ変化している。業界関係者は「参加型マーケティングへの転換が進む中で、アルペンのように店舗を拠点に地域大会と連携する動きは他社にも波及する可能性がある」とみている。
今後の展開と課題
アルペンとアールビーズは、現在の9大会支援を基盤として新たな地域との連携も検討している。試走会の継続や大会後のフォトイベントなどを通じ、ランナーが継続的に走る環境づくりに取り組む構えだ。一方で、地方大会の財政基盤やボランティア運営力の確保が課題となっている。協賛企業による資金面・広報面での支援が求められる中、民間主導の取り組みがどこまで持続できるかが注目される。
業界では、スポーツ用品小売と大会運営企業の連携が活発化しており、地域経済の活性化や健康増進の面でも波及効果が期待される。今回の協賛拡大は、商業とスポーツが一体となった新しい支援モデルを示すものと位置づけられる。両社が次にどの地域大会への支援を広げていくのかが、今後の焦点となるだろう。