技術系アウトソーシング事業などを手がけるトライアロー株式会社(東京都港区)は、廃棄物処理・リサイクル事業を行う株式会社HARITA(富山県高岡市)と共同で、廃棄物処理工程における危険物の自動検知システムの開発に着手したことが明らかになった。AIによる画像認識を活用し、爆発や設備損傷の恐れがある物体を自動検出することで、処理現場の安全確保と作業効率の向上を目指す。
本取り組みの第一フェーズでは、ヤードやコンベア上を搬送する廃棄物に含まれる「一斗缶」「携行缶」「ガスボンベ」「塊状物」などをAIで検知する検証を進める。トライアローがシステム開発を担い、HARITAが現場データを提供する。業界で深刻化する人手不足や安全リスクへの対応を進める狙いがある。
AIと映像解析で危険物を自動検知
トライアローは産業廃棄物に特化したデータセットプラットフォームを独自に構築し、HARITAから収集した画像・映像データを用いてAIの精度を検証する。AIモデルは物体検出アルゴリズムを基盤とし、形状や色、質感などの特徴を学習。粉塵が舞う環境や背景が複雑な廃棄物ラインでも識別できるように設計する。同社が長年培ってきた産業設備の導入・保守ノウハウを生かし、安全性と操業効率の両立を図る取り組みだ。
AI検知によって現場作業員の目視確認を減らし、処理ラインの停止リスクを抑える効果が見込まれる。双方の連携により、実施工場の画像環境に近い条件で検証を重ねることで、実装後の精度向上と運用負荷の低減を目指す構えだ。
人手不足と災害廃棄物対応が背景
背景には、廃棄物処理業界全体で続く人材不足と安全管理の高度化がある。処理ラインでは異物混入や発火物投入などによる事故リスクが課題となっており、従来は作業員が目視で危険物を除去していた。AI化により検知作業を自動化し、被災時の復旧対応でも効率的な処理が可能になる。
自然災害の頻発により、一時的に大量の廃棄物が発生し、迅速な対処体制の構築が求められている。災害時に処理が遅れると、環境汚染や二次火災などのリスクが高まるため、AIシステムによる検知・分別が社会的課題の解消につながるとみられている。トライアローは今回の開発を、災害対応を含む広範な安全管理体制の支援基盤と位置づけている。
リチウムイオン電池も検知対象に
近年、廃棄物中に適切に分別されないまま混入するリチウムイオン電池が増えている。同電池は発火リスクが高く、火災要因として社会問題化しつつある。トライアローでは、将来的にリチウムイオン電池を特定できる検知機能の開発も視野に入れており、今後順次アルゴリズムの拡張を進める方針だ。
この取り組みは、AI処理技術を現場の安全管理に適用する先行事例の一つとなる。業界関係者の間では、設備損壊や操業停止リスクを軽減する仕組みとして波及する可能性が高いとみられている。
廃棄物処理の効率化と安全確保が焦点
トライアローは今後も国内廃棄物処理業の現場を中心に実証を進め、AI検知技術を段階的に最適化する構えだ。HARITAとの協働は継続的な検証体制の確保を目的としており、実運用を見据えた改良を図る。業界では安全性と効率を両立するシステム導入が急務とされており、AI活用による危険物検知の実装が具体的な対策の一つに位置づけられる。
今回の動きは、AIとリサイクル技術を融合させた安全管理の実践例として、今後の廃棄物処理現場全体の効率化に向けた流れの一端を示すものとなる。