株式会社TOPPANホールディングス(東京都文京区)は2025年12月11日、取締役会で代表取締役の異動を決議したことが分かった。2026年4月1日付で、現社長の麿秀晴氏が代表取締役会長CEOに就任する。大矢諭氏が代表取締役社長COOに昇任する。長期にわたる事業変革が一定の段階に達したことを受け、次期中期経営計画を担う新体制を発足させる。
経営トップの交代は、デジタル変革(DX)とサステナビリティ変革(SX)の推進を経て、次の成長局面へ移行する狙いだ。麿氏が主導してきた事業の再構築やグローバル化を土台に、トップ層の世代交代と持続的な変革の継続を組み合わせる。新体制の下では、TOPPANグループ3社の統合を完了し、事業単位での収益性強化を進める。
グループ再編を視野に新経営体制
今回の人事では、麿氏が2019年から進めてきた経営構造改革の基盤を継承し、大矢新社長がその実行を担う。トップマネジメントの刷新は、トップパン・エッジ・デジタルの3社融合を進めるための人選と位置づけられる。2027年3月期に始動する新たな中期経営計画では、TOPPANを存続会社としてグループを一体化し、ビジネスユニット(BU)制へ再編する方針が示された。これにより、各事業の独立採算化と意思決定の迅速化を図り、収益構造の強化を進める。
大矢氏は1972年生まれで、凸版印刷(現TOPPAN)でエレクトロニクスや経営企画の分野を歩み、2023年10月に営業統括の専務執行役員に就任した。2025年にはTOPPAN株式会社の社長に就任し、4月からグループ中枢のCOOを務めていた。グループ経営計画の立案から実務まで幅広く携わっており、次代を担う経営陣の中核とされてきた。
経営統合と高収益化への道筋
新体制の狙いは、グループ会社の異なる事業ポートフォリオを整理し、収益力の底上げを図ることだ。TOPPANエッジは情報ソリューション、TOPPANデジタルはDX事業を主力とし、TOPPANは印刷・エレクトロニクス事業を担っている。これらを統合することで、研究開発や製造体制の重複を削減し、グローバル市場での競争力を高める狙いだ。BU制導入は意思決定の分散と速度向上を目的とし、個別事業の価値向上を推し進める仕組みづくりとなる。同社は2027年を初年度とする新中期計画のもとで、収益構造改革を完遂し「高収益体質への転換」を掲げている。
歴史的転換期の継承へ
TOPPANホールディングスは、旧凸版印刷を中核として通信、情報、パッケージ、エレクトロニクスなど多角的に展開してきた。2019年の社長就任以降、麿氏はデジタル事業の拡大を推進。グループをホールディングス体制に改組し、環境対応やグローバル化にも取り組んできた。資本市場の変化や印刷需要の構造的縮小を背景に、事業モデルの再定義を急いだ格好だ。大矢氏は当時の経営企画本部長として中期計画の策定に関わっており、事業全体を俯瞰できる人材として社内外で広く知られる。社長就任により、これまで構想段階だった統合戦略を実行に移す役割を担うことになる。
2020年代に入り、国内印刷業は需要縮小と資材コスト上昇の二重苦に直面してきた。TOPPANはデジタルサービスや部材開発への転換を急ぎ、エレクトロニクス分野を成長軸に据える方針を示している。大矢氏はこの分野で成果を重ねており、その経験がグループ全体の変革に生かされるとみられる。
企業統合の行方に注目集まる
業界関係者は、TOPPAN、TOPPANエッジ、TOPPANデジタルの3社統合が完了すれば、国内印刷・情報産業の再編に影響を与えるとの見方を示す。グループ再編後の運営体制や事業領域の再構築が、同業他社の経営戦略にも波及する可能性があるためだ。特にエレクトロニクス事業はAI・半導体市場の拡大と歩調を合わせた発展が求められ、TOPPANグループとしても投資や技術提携を強化している。大矢氏の昇任は、こうした成長領域での収益拡大を加速させる布陣と位置づけられている。
次期中期計画と課題
2027年3月期に始動する次期計画では、グローバルでの経営一体化に加え、国内外での製造・販売拠点の効率化が焦点となる見込みだ。海外では既に情報通信分野を中心に事業拡大を進めており、統合効果を最大化できるかが問われる。DX・SXを軸とした新規事業の収益化スピードや、人材確保などの経営課題も残る。業界内では、今回のトップ交代が「世代交代にとどまらず、統合後の持続的成長を実証する試金石」との声も上がっている。中期計画の実現度と組織運営の透明性確保が、今後の評価を左右しそうだ。
麿氏の退任後は、取締役会長としてグループ全体の経営監督に専念し、変革の継続性を支える。体制変更を経て、TOPPANホールディングスが「真のグローバル企業への変革」をどこまで具現化できるかが、2026年度以降の主要なテーマとなるだろう。