タカラベルモント(大阪市中央区)は2025年12月8日、理美容室向けの多機能チェア「EQUA(エクア)」を発売すると発表した。近年広がる完全個室・半個室サロンの施術形態に対応し、顧客が移動せずに複数の施術を受けられる「定点サービス」の快適性向上を狙う。プレミアムとベーシックの2タイプで展開し、全国のショールームで順次展示を始める。
新製品投入の背景には、理美容市場で進むサービス多様化がある。タカラベルモントは、サロン空間の質向上ニーズの高まりに応え、利用者と施術者双方の快適性を追求したと説明している。従来製品で蓄積した座り心地・操作性の設計ノウハウを発展させるとともに、シャンプーやフェイシャルなど複数のビューティーメニューを一台で完結できる構造を強化した。施術の効率化と顧客体験の両立を図る戦略の一環となる。
心地よさと操作性両立 新構造で快適性高める
EQUAは、利用者が長時間快適に過ごせるよう、背もたれとシートに“ハンモック構造ウェビング”を採用した。身体を面で支える設計で体型差に柔軟に対応し、フルフラット機構により安定した寝姿勢を保てる。背もたれには送風機能「コンフォートエア」や、足元と腰部を温めるヒーターを内蔵したプレミアム仕様も用意し、施術中の快適性を高めている。これらの機能はすべて同社の独自開発で、特許出願中だ。 デザイン面でも施術者の作業性を考慮した。背もたれを薄型設計とし、前方施術をしやすい構造とした。手すりを短くして動きを妨げず、座面の高さを低く設定して体格差にも対応している。顧客の身体を支えるクッション部分には柔らかいウレタン合皮を採用し、快適さと高級感を兼ね備えた仕上げとなっている。
幅広い施術対応 店舗付加価値高まる
背もたれは最大175度までリクライニング可能で、ヘッドスパやフェイシャルエステなど多様な施術に活用できる。取付式大型ピロー「コンフォートピロー」は使用時に容易にセットでき、使用しないときはサイドに収納して空間美観を損なわない。操作系統ではワンタッチ姿勢切替プリセットを3種類搭載しており、シャンプーやハンドケア等のポジション登録が可能だ。オートリターン機能で初期姿勢へ自動復帰し、昇降時の衝撃を抑制する「ショックレスユニット」を採用して、顧客の休息を妨げない工夫となっている。こうした複合的配慮により、一定の位置で施術を中心にした店舗運営を支援する役割を果たす。
創業100年超え 体験価値向上へ軸足移す
タカラベルモントは1921年創業の理美容・医療関連機器事業者で、2021年に創業100周年を迎えた。現在「美しい人生を、実現しよう」を企業使命として理美容産業のサービス高度化を推進している。本社は大阪と東京の二拠点体制で、従業員は約1600名である。EQUAは同社の主力商品群の中でも上位モデルの位置づけで、サロン空間デザインと動線提案を並行させる戦略製品だ。特に高単価メニューを導入する都市型サロンでは、滞在時間中の快適性が店舗選択の要因となっており、設備投資の新たな焦点となっている。
理美容市場高付加価値化進む 専門家注目集まる
理美容市場では、単なるカットやカラーだけでなく、スパやフェイシャルなど複合メニューを採用する店が増えている。市場関係者は「客が動かずに複数のサービスを受けるスタイルが主流化した」と指摘している。EQUAのような多機能チェアが、こうしたニーズに応える設備として注目されている。
大阪府および首都圏でも完全個室・半個室サロンの拡大が進み、設備の有効活用と効率化を図る経営要件が高まっている。タカラベルモントは「EQUAを通じてサロンサービスの付加価値を一層高めたい」と述べ、美容教育およびショールーム体験の連携販売を強化する計画だ。
今後展望課題 設備連携省エネ化焦点担う
今後の展望と課題は、設備の連携と省エネ化にある。EQUAの販売は全国のショールームで段階的に体験展示を予定している。一方、市場からは投資費用とエネルギー効率への懸念が指摘される。多機能化に伴うヒーター搭載の拡大に対して、省エネ対応の開発が今後の主要課題となるだろう。理美容産業全体の高付加価値化が進む中、顧客体験を支える設備の方向性を巡る競争軸となる。