住友林業株式会社(東京都千代田区)は2025年12月15日、連結子会社である米国Brightland Homes, Ltd.の商号を「DRB Group Texas, LLC」に変更することを決定したことが分かった。ブランド戦略の見直しが目的で、同日付(米国時間)で実施する。併せて同社を有価証券報告書の「関係会社の状況」欄から削除し、適時開示基準上の「子会社等の異動」に該当することになった。
新商号の下でも資本関係は変わらず、米テキサス州に拠点を置く住宅建築・販売事業の中核を担う連結子会社として位置づけられる。住友林業は米国市場での住宅ブランド体系を整理し、地域別・事業別の再編を進めており、今回の商号変更はその一環とみられる。
米国での住宅事業基盤を再構築
新たに「DRB Group Texas, LLC」となる子会社は、President & CEOのロナルド・サラメ氏が指揮し、米国テキサス州を中心に住宅建築と販売を手がける。資本金は7,500万1,000米ドル(約117億円)で、大株主はDRB Enterprises, LLCが100%を保有する。直近3年の連結経営成績は堅調で、2024年12月期の売上高は約13億5,000万米ドル、当期純利益は約1億6,600万米ドルとなった。総資産は14億7,000万米ドルに達しており、同社の再編後も連結業績への影響は軽微とされている。
商号変更による登記・会計上の手続きは、2025年12月15日に米国時間で完了する予定だ。子会社の機能や雇用体制に変動はなく、名称以外の事業運営上の変更は行われない。
北米市場でのブランド統合を進める
住友林業は2018年に米国の賃貸用集合住宅開発事業へ参入し、集合住宅では2024年に5,344戸の着工を記録するなど、すでに全米上位に位置する事業規模に育っている。米国住宅市場での事業展開は、戸建分譲事業とともに主要な収益源となっている。同社は木を軸とした「ウッドサイクル」を通じて脱炭素化を進める長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を掲げており、海外事業でもブランド統一と開発効率化を進めている。
背景には、北米で事業領域ごとに分散してきたブランド体制を再整備し、グループ全体の認知・信頼を高める狙いがある。特に2023年に子会社化したJPIグループ(テキサス州ダラス市)を中心に、住宅開発や施工・設計を自社内で完結させる体制の構築を急いでおり、統一ブランドでの市場浸透を図る戦略だ。
財務安定性と再編効果に注目
Brightland Homes, Ltd.はこれまでの3年間で売上・利益の水準を維持しており、純資産は2022年から2024年にかけて約2億ドル増加した。再編による財務リスクは限定的とみられ、住友林業はグループ内のシナジー強化を重視する方針を掲げている。金融市場では、同社が既存の住宅事業を軸に米国での安定収益基盤を確立しつつあるとの見方がある。
今回の商号変更は、単なる名称の刷新にとどまらず、グローバル展開における事業再編計画の中で位置づけられている。ブランド統合により、米国内複数地域における設計・施工管理の標準化を進めるとともに、資材調達や建材供給ネットワークの効率化も視野に入れている。
北米住宅事業の拡大と今後の動き
住友林業は今後も北米各地で開発プロジェクトを拡大する構えだ。12月10日には東京建物との共同で、米カリフォルニア州ロングビーチ市で賃貸住宅開発に着工したと発表した。これは両社の協業第4弾に当たり、米国不動産事業での連携を強化している。今回の商号変更によって、テキサス州を核にした事業群と西海岸案件を並行する体制を明確にする狙いもある。
グループ全体では、森林経営から建材製造、建設、不動産開発までを一体化した「木を軸にした循環事業」を推進中だ。海外でも木造建築比率を高め、CO2の固定化や長期利用による環境価値を高める方針を掲げている。米国事業を支える各社のブランド再編は、その長期目標達成への布石といえる。
今回の動きは、住友林業が北米市場での住宅開発を持続的に拡大する過程で、グループガバナンスとブランド管理を統合的に進める流れの一環に位置づけられる。