住友化学(東京都中央区)は2025年11月20日、半導体用プロセスケミカルを手がける海外企業の買収に合意したと明らかにした。取得により台湾と米国に新たな拠点を獲得し、先端半導体分野におけるグローバルな事業展開を加速させる。
台湾・米国両市場で供給網を拡充
取得する企業は、台湾・米国にそれぞれ製造・販売拠点を有するプロセスケミカルの専門メーカーで、現地での製造ノウハウと顧客基盤を有する。住友化学はこれらの地域で製造拠点を直接保有することで、製品供給の柔軟性を高め、納期短縮や物流リスク低減を図る。現地の半導体メーカーとの協業機会も広がる見通しで、素材開発から量産対応までのスピードが向上すると見込まれる。2020年代後半に向けて進む先端プロセス技術の進化に即応する戦略的判断といえる。
電子材料事業で成長路線を拡大
住友化学は半導体材料やディスプレイ材料などの電子材料事業を成長の柱に据えている。同社はこれまでも国内外で機能性化学品の拠点整備を進めており、中国や韓国などアジア地域での供給力強化を図ってきた。今回の海外企業買収は、その延長線上で北米・台湾の両市場に直接アクセスできる体制を築くものである。これにより、研究開発から製造・販売までのグローバル一貫体制がさらに整備される。見据えた現地展開は、顧客密着型の製品開発や新素材の実装を推進する上で大きな意義があると業界関係者は見ている。
世界的に半導体分野ではサプライチェーンの地域分散が進み、素材メーカー間の再編や提携も相次いでいる。台湾ではファウンドリー大手の増産投資が続き、米国でも政府支援による新工場建設計画が進行中だ。こうした動きに伴い、生産現場近くでの化学材料供給への需要が急増している。
化学メーカーには高純度化・環境対応・安定供給といった高度な技術要件が課されており、開発から生産までをワンストップで手がける企業が優位に立つ構図が鮮明化している。住友化学の今回の合意は、こうした市場再編の流れに即したものである。
買収後の統合と成長の行方
今後は、買収先企業の統合プロセスや研究開発拠点の連携が焦点となる。拠点の重複調整や品質管理体制の統一など、グローバル経営上の課題も残る。住友化学は国内外での投資効率の最大化とともに、先端素材の開発・量産体制を整備する方針を示しており、今回の買収を起点に半導体材料事業の拡大がどこまで進むかが注目される。北米とアジアの両市場で競争優位を確立できるかが今後の主要なテーマとなるだろう。