両社は、建設現場の仮設計画でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用が急速に進む中で、屋内空間など外部足場に比べ計画が煩雑な内部足場領域での課題を補う狙いがある。ゼネコンなどからの要望が増えており、施工現場での3次元モデルデータ共有を円滑にする仕組みづくりが急務と判断した。
内部足場機能、直感的操作でBIM活用を促進
新たに開発する内部足場機能は、階段上部や障害物が多い屋内空間など、設計・組立が難しい現場でのBIM計画支援を目的とする。支柱や部材、単管などを自動または簡易に配置できる機能を備え、従来よりも短時間で精度の高い足場モデルを生成できるという。部材はドラッグ&ドロップ操作で配置可能で、設定条件に応じて手すりやステージを自動配置するなど、Revitの初心者でも扱いやすい操作性を特徴とする。こうした仕様により、これまで外部足場中心だった仮設BIMの利用範囲を屋内まで広げることを目指す。
展示会で先行披露、建設DXの潮流に対応
機能は、2025年12月10日から東京ビッグサイトで開かれる「第10回JAPAN BUILD TOKYO」内の第5回建設DX展で先行公開される。両社それぞれのブースにデモンストレーションを設け、施工現場での利用イメージを紹介する。 同展示会は、建築・土木・不動産分野のデジタル技術を集めた大型イベントで、設計や施工におけるDX推進を求める企業・技術者が集う。
共同開発の背景と業界の変化
応用技術は1984年設立のシステム開発会社で、BIMやCIM、GISを用いたソリューション事業を展開してきた。「BooT.one」は同社が開発したRevit用アドインで、これまで外部足場向け機能を中心に提供してきた。一方の杉孝は1953年創業の仮設機材総合企業で、全国の建設・プラント現場に製品を供給している。2010年代以降は「足場BIMサービス」や「BIM施工支援サービス」を推進し、次世代足場「アルバトロス」など独自システムを展開。両社は、BIMを工事計画段階から現場まで連携させる共通基盤を構築すべく共同開発に踏み切った。
建設現場では、安全性と工程効率を高めるため、仮設構造物もBIMデータで事前検証する手法が広がっている。特に内部足場は、天井高や空調配管、照明設備との干渉が生じやすく、手作業での調整に時間を要していた。今回のシステム化により、干渉リスクを可視化し、施工前の調整を容易にする効果が期待される。
今後の展望と課題
応用技術と杉孝は、リリース後の追加開発へ向け、支保工対応などの拡張機能を構想している。仮設BIMの利用領域を拡大し、施工管理データと連携させることで、より包括的な建設DX基盤の構築を目指している。業界関係者の間では、仮設機材分野へのBIM適用が設計・施工双方の生産性を左右する新たな焦点になるとの見方が出ている。実際の施工現場でどの程度まで自動配置や干渉回避が実用化できるかが、普及の行方を左右しそうだ。