株式会社ブロードリーフ(東京都品川区)は、自動車ガラス商向けクラウドサービス『Glass.c(グラスドットシー)』に仕入・支払管理機能を加えた最上位プラン「トータルパック」を提供する。受発注業務に加えてバックオフィス領域を一体で管理できるようにすることで、業務効率化と経営の高度化を支援する狙いだ。
同社はクラウド基盤「Broadleaf Cloud Platform」を軸に展開する中期経営計画(2022―2028)において、「クラウドの浸透」と「サービスの拡張」を重点戦略として掲げている。今回の機能拡充はその一環で、自動車ガラス商の現場業務から経営管理までを一貫して支援する体制を整備するものである。
受発注から支払管理まで一括化
トータルパックでは、これまでの見積・受注・発注機能に加え、仕入・支払管理を一体で扱えるようにした。発注履歴をもとにした仕入計上や売上・仕入の同時計上が可能で、従来分断されていた業務を連携させることで事務作業の手間と転記ミスを減らす効果がある。日々の取引データをリアルタイムで集計し、粗利や買掛金残高など経営指標を即時に把握できるようにした点が特徴だ。
また、完全クラウド型である特性を生かし、PCだけでなくモバイル端末からもアクセスできる。複数拠点を持つ事業者は、全拠点の在庫状況をリアルタイムで確認可能となり、在庫共有や融通を通じて過剰在庫や販売機会損失の抑制が期待される。同社によると、こうした仕組みにより経営判断の即時化や生産性向上を促すという。
顧客要望を背景に機能拡充
『Glass.c』は自動車ガラス商向けに2023年からサービスを開始しており、利用企業からは、受発注業務だけでなく仕入や支払も同一システムで管理したいとの要望が多く寄せられていた。
これを受け、ブロードリーフは新たな仕入・支払管理機能を開発し、現場での利用実態に合わせた経営支援システムへと進化させた。これにより現場担当者が入力するデータが経営層の意思決定に直結する仕組みが整う。
同社はすでに整備業向け『Maintenance.c』、鈑金業向け『Repair.c』、自動車部品商向け『Partsman.c』など、モビリティ関連事業者向けに複数のクラウドサービスを展開している。今回のトータルパック追加は、それらと並ぶ形で、バックオフィス領域を含めてクラウド活用の幅を拡大する施策といえる。
モビリティ産業の業務DX推進へ
ブロードリーフはモビリティ産業におけるSaaSプラットフォーム企業で、クラウド基盤に基づくサービス連携を進めている。自社開発した共通基盤は拡張性が高く、今回のような機能追加や新分野への横展開が比較的容易に行える構造を持つ。
業界全体で進む人手不足や業務標準化の流れを受け、取引先間でのデータ連携や在庫最適化をクラウド上で進める動きも広がってきた。
背景には、自動車関連事業者の間で進むデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速がある。部品・整備・塗装など関連分野で業務連携を高める動きがみられ、効率的な管理基盤を複数業態にまたがって構築するニーズが増している。
ブロードリーフの一連のサービス拡充は、こうした需要に即した動きと位置づけられる。
中期計画での重点施策が進展
中期経営計画では、2028年までに自社プラットフォームを活用したクラウドサービス群の統合を進める方針を掲げている。トータルパックの投入は、その中で「クラウドの浸透」を進展させる具体策にあたる。同社にとって本事業は本業領域の補完ではなく、次世代の主要な収益源としての位置づけを持つ。
経営陣は、業界横断でのデータ共有や分析の高度化を視野に、今後も利用者の要望を反映した機能追加を計画しているという。自動車ガラス商に限らず、関連サービスの連携拡大を続ける構えを見せており、モビリティデータを核としたクラウド運用の深化が焦点となる。
今回のトータルパック提供は、ブロードリーフのクラウド戦略を具体化する過程の一里塚といえる。