兵庫県姫路市の株式会社神姫バスは15日、国土交通省および神戸市と「一般国道2号 神戸三宮駅交通ターミナル特定運営事業等 三宮バスターミナル特定運営事業等」に関する基本協定書を締結したことが明らかになった。神姫バスは代表企業として、株式会社東急コミュニティーと株式会社大林組とともにコンソーシアム「STO」を組成しており、2025年11月27日に同事業の優先交渉権者に選定されていた。
本事業は、公共施設等運営権によるコンセッション方式を採用し、民間の効率的な運営手法を取り入れた長期運営を目的としている。神姫バスは、地域交通の中核を担うターミナル事業の運営主体として、地域経済の活性化と交通拠点の再整備を一体的に進める狙いを持つ。今後、協定書に基づき、特別目的会社(SPC)の設立や実施契約締結の準備を進め、本格的な事業着手に移行する。
STOが運営を担うターミナル管理へ
「STO」は、代表企業である神姫バスのほか、東急コミュニティー(東京都世田谷区)と大林組(東京都港区)により構成される民間コンソーシアムである。事業期間は15年間にわたり、内装整備や保全、運営業務、利便増進事業の各機能が一体的に委ねられる。ターミナルの所在地は、兵庫県神戸市中央区雲井通5丁目の新バスターミナル(Ⅰ期)および同区7丁目の三宮バスターミナルとなる。
コンセッション方式を適用することで、施設の公共性を維持しながら、民間が柔軟な運営を行う仕組みが導入される。国土交通省と神戸市は行政的監督と公共インフラの管理権を担い、STO側が事業運営の実務を受託する構図である。神姫バスは地域公共交通網の整備で長い経験を持ち、東急コミュニティーは施設管理運営で実績を有する。なお、大林組は設計・施工分野の技術支援に参画する計画だ。
背景は三宮再整備と官民連携の推進
神戸市では近年、三宮周辺の再整備計画を進めており、交通ターミナルの刷新は都市再構築の柱とされてきた。老朽化が進む既存バスターミナル群を統合し、安全で利用しやすい拠点を整える必要から、国と市が官民一体でのコンセッション方式を導入する方針を打ち出した経緯がある。神姫バスは地域交通を支える企業として、この官民連携の枠組みに参加し、事業の代表企業を務めることになった。
背景には、地域経済活性と公共交通・観光交通の結節点を再設計する狙いがある。三宮エリアは阪神間・播磨地域からのバス集約点であり、鉄道や空港アクセスとも接続する交通のハブとしての役割を担っている。再整備後は、都市来訪者の増加やイベント需要対応などによる利用者増が見込まれる一方、事業運営では維持管理コストの抑制や安全対策の持続的な実装が求められる。
SPC設立へ、長期的運営体制を構築
今後、コンソーシアム構成企業はSPC(特別目的会社)を共同出資で設立し、事業主体として施設運営を担う予定だ。SPCが実施契約締結後に管理・運営を一元的に担うことにより、利用者サービスの向上と事業の持続可能性を両立させる仕組みを整える。協定書締結をもって、施設整備や開業に向けた準備段階へ正式に移行した。
神姫バスは本業のバス輸送事業に加え、駅やバスターミナル整備、団地交通の運営受託など地域密着型の都市交通事業を広く手掛けている。今回のプロジェクトはその延長線上にあるもので、地域交通の持続的運営と都市拠点のにぎわい創出を両立させる試みといえる。長期契約による運営統制と、東急コミュニティーの管理ノウハウ、大林組の施工技術を組み合わせることにより、公共施設運営の新たな枠組みを示す事例と位置づけられる。
官民連携事業の広がりが注目点に
神戸市内では、港湾・交通・観光施設の分野で官民コンセッションが相次いでおり、今回のバスターミナル運営もその一環にあたる。民間事業者のノウハウ活用によって、行政コストの削減とサービス水準維持を両立する施策が拡大傾向にある。公共交通の利便確保と都市機能再編の両軸を支える点で、事業運営の成果が今後の同型プロジェクトにも波及することが期待されていると業界関係者は指摘する。
神姫バスは今後、協定に定めるスケジュールに沿ってSPC設立や運営移行に取り組む方針で、三宮地区再整備プロジェクトの進展に実質的な動きを与える節目となった。官民連携による都市拠点運営の取り組みが、地域公共交通の維持と再生のモデルケースとなるかが注目される。