沢井製薬株式会社(大阪市淀川区)は、2025年12月以降に発売する一部製品の包装材料に、メカニカルリサイクルによる再生PETフィルムを採用すると発表した。使用済みPETボトルを再利用した素材を導入し、製造時のCO₂排出量をおよそ2割削減する。同社は環境配慮型包装の拡充を目的としており、グループ全体で資源循環型の取り組みを進めている。
今回採用するリサイクルPETフィルムは、TOPPAN株式会社(東京都文京区)が提供する素材を用いたものだ。沢井製薬は、リサイクル技術による包装材活用の第一弾として位置づける方針で、持続可能な製造体制の確立を目指す。
再生PET比率8割の新材料で環境負荷抑制
導入されるメカニカルリサイクルPETフィルムは、使用済みPETボトルを粉砕・洗浄し、高温溶融と減圧・ろ過工程を経て再び樹脂化したものだ。フィルム中のリサイクル樹脂比率は約80%で、従来型PETフィルムと比べて製造段階のCO₂排出量を約20%低減できる。
この包装は、外側からPETフィルム、ポリエチレン、アルミ箔、ポリエチレンを重ねた4層構造で、印刷層・接着層・バリア層・熱シール層を分担する。最外層を再生PETに替えても、印刷適性や加工性能は維持できるという。
今回の変更により、既に導入しているケミカルリサイクル包装に加えて、沢井製薬はメカニカルリサイクル材料の採用も開始する。廃棄物を物理的な加工により再活用する「マテリアルリサイクル」の一種であり、同社製品では初の導入となる。
国内PETリサイクル率85%に上昇
プラスチック容器、とりわけPETボトルの再利用は国内でも年々進んでいる。獨協大学の調査によると、2023年度の清涼飲料用PETボトル出荷数は約267億本に達し、国民1人あたり年間215本を消費する計算だ。日本のPETボトル回収率は85.0%と高水準で、そのうち「ボトルtoボトル」などの水平リサイクルの比率も33.7%まで伸びている。
一方で、廃プラスチック全般では、リサイクルとされるうちの約7割が焼却熱を利用する「サーマルリサイクル」であり、実質的な再製品化比率は3割に満たない。
環境省などの資料では、リサイクル工程においても輸送・加工過程でエネルギー消費によるCO₂排出が発生する点が指摘されている。
このため、再資源化の促進と同時に、素材そのものを循環利用する技術の採用がより持続的な対策になるとされる。沢井製薬の今回の動きは、こうした流れに沿ったものだ。
製薬業界でも環境対応加速
沢井製薬は、ジェネリック医薬品の生産効率化と環境負荷低減の両立を掲げている。
同社はサワイグループホールディングス株式会社の傘下企業で、全国に医薬品供給網を持つ。従来も一部製品でケミカルリサイクル材を導入してきたが、今回、リサイクル方法の多様化に踏み込むことで安定調達と品質確保の両立を図る。
TOPPAN株式会社は包装材や機能素材の開発を手掛けており、再生プラスチック技術を持つことから、素材提供の役割を担った。
背景には、医薬品業界における脱炭素・資源循環の取り組み強化がある。製剤包装は製薬工程において環境負荷が大きい部分の一つであり、今後もリサイクル素材への切り替えやパッケージ仕様の見直しが進む可能性がある。
企業の間では、原料調達に関する規制対応やサプライチェーンの透明性確保が運用上の注目点となりつつある。
再生素材の選定と品質維持が課題
メカニカルリサイクル材は再溶融を繰り返すため、物性や透明度にばらつきが生じやすいとされる。
沢井製薬はトップ層での印刷や熱加工に適した条件を検証し、既存設計との両立を実現した。今後は製品特性ごとにケミカルリサイクル材との最適配分を検討し、素材ごとの再利用手法を選択していく構えだ。
同社は今後も包装材料や製造工程での環境対応を段階的に拡充する方針を示している。
医薬品包装の分野では、再生プラスチック活用の動きが浸透段階に入りつつあり、今回の取り組みもその流れの一環といえる。