大阪府池田市とふるさと納税ポータルサイト「さとふる」を運営する株式会社さとふる(東京都中央区)は、2025年12月8日からクラウドファンディングを活用した寄付受付を始める。「部活動から地域クラブへ【池田の文化・スポーツを未来へつなぐ】プロジェクト」と題し、目標額は2,000万円。寄付募集は2026年2月27日までの予定で、同市内で進む学校部活動の地域移行に活用されることが分かった。
池田市は2028年度中の完全地域移行を掲げており、今回の取り組みはその実現に向けた支援強化策となる。少子化や教員の長時間労働の是正などを背景に、従来の学校単位の部活動だけでは多様な競技環境を維持しにくくなっているため、指導者不足を補う地域クラブへの再編を急ぐ考えだ。自治体がふるさと納税を資金源とするプロジェクトを立ち上げる動きは全国に広がっており、地域コミュニティ再生の一環として注目されている。
地域クラブ支援へ寄付呼びかけ
募集は「さとふるクラウドファンディング」上で行われ、寄付者は使途を明確に確認しながら資金を拠出できる。寄付金は地域クラブの運営費や指導体制の充実などに充てられる見通しだ。寄付者はサイト内で寄付金額の推移を随時確認でき、自治体への応援メッセージも投稿できる。なお、今回のプロジェクトは同社と業務提携を結ぶクラウドファンディング運営会社CAMPFIRE(東京都渋谷区)からも申し込みが可能だ。両社は自治体の企画設計や広報記事の共同制作などで連携し、ふるさと納税制度を活用した寄付プロジェクトを支援している。
2028年度完了へ段階的整備進む
池田市では、教員負担の軽減と中学生のスポーツ・文化活動機会維持の両立をめざす。市担当者は、「すでに学校ごとに体験できる種目の偏りが生じており、地域で受け皿を整えることが不可欠になっている」と説明する。今回のプロジェクトで寄せられた寄附は、文化・運動分野を含む複数種目のクラブ運営体制整備に使われる見込みだ。全国的には、文部科学省が部活動の地域移行を段階的に推進しており、自治体のモデルづくりが加速している。池田市のように2020年代後半を完了目標としている自治体も増えており、寄附を通じた資金調達手段が定着している。
ふるさと納税型協働モデルが定着
「さとふるクラウドファンディング」は、ふるさと納税制度の枠組みを活用して寄附金用途別に事業を設立する仕組みだ。自治体課題をテーマ別に掲げ、寄附者は社会的意義を確認しつつ支援先を選択できる。2024年時点で多くの自治体が教育・動物保護・防災など領域を横断的に取り組んでいる。 一方、CAMPFIREは「資金調達の民主化」を掲げて地方自治体やNPOと共同事業を多数展開してきた。両社の連携により、従来の寄附募集だけでなく企画設計や情報発信まで一体的に支援する体制が構築されており、官民協働モデルとして評価されている。
全国拡大する動きへの対応
全国的には、ふるさと納税を活用した自治体主導型クラウドファンディング(いわゆる「ガバメントCF」)は拡大している。主要サイトの公開データによれば、2025年末時点で実施自治体は800を超え、総額は約2,400億円規模となっている。目的別の寄附を通じて行政財源の補完と住民参加型の政策運営が両立される動きだ。しかし、募集後の事業評価や進捗公開の仕組みなどが課題として残っている。透明性の確保が制度定着の鍵を握るため、池田市も「用途を明確にし理解を得る」方針で臨んでいるという。
今回のプロジェクトは、2026年初旬の募集終了後に市へ公表される予定である。クラウドファンディングを軸とした教育関連の取り組みは、他自治体でも文化・スポーツ施設の整備と共に拡大が見込まれ、民間プラットフォームとの協働は加速する見通しだ。今後、地域クラブの自立・継続的な財政循環をどう構築していくかが焦点となる。