セールスイネーブルメントSaaSを展開するSALESCORE(セールススコア、東京都渋谷区)は2025年12月9日、シリーズBラウンドで総額11.5億円を調達したと明らかにした。ニッセイ・キャピタルをリードに、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタルの計4社が出資した。営業プロセスを科学的に可視化するAI開発や人材採用を強化し、営業文化の再現性向上を目指す。
AI開発強化と人材採用拡大へ
今回の資金調達でSALESCOREは、営業活動データの解析技術を中心としたAIプロダクト開発に重点を置く。営業担当者の会話内容や行動記録、成果データをAIで分析し、成功パターンを抽出する仕組みの高度化を進める。また、顧客企業に対して伴走型でのコンサルティングを継続しながら、自社SaaSと現場支援を融合させる体制を整備する。人材面では、事業拡大を担うエンジニアや営業改革の専門人材「Buddy」の採用を強化する。SALESCOREは、AIによる支援だけでなく、現場の実践知を融合することで、属人的な営業手法からの脱却を支援する狙いだ。
経営陣が示す変革への決意
代表取締役の中内崇人氏は、営業の現場には依然として「勘と経験」に頼る文化が根強く残っていると指摘する。AIやデータ活用の波が本格化するなか、営業プロセスを「科学できる」時代への転換を図ることが重要だと述べている。同氏は「成長実感を増やし、人類を前に進める会社を目指す」と強調しており、企業の営業基盤を支えるインフラとしての位置づけを目指す考えを示した。日本ベンチャーキャピタル業界関係者は、営業文化の標準化が今後の企業競争力を左右するとみなし、同社の取り組みを中長期的な潮流の一部だと捉えている。
SaaS市場拡大とデジタル人材の課題
国内SaaS市場は高い成長を続けている。ITRの分析によると、2024年度のSaaS関連売上は27億円で前年度比58.8%増、2025年度も46.3%増の成長が見込まれる。2029年度には市場規模が90億円に達する予測だ。営業支援や顧客対応の自動化では、AI導入によるコスト削減・効率化が相次いでおり、生成AIの急速な技術進展が追い風となっている。さらに、一方で国内企業ではデジタル人材の不足が深刻さを増している。特にエンジニアの需給逼迫は新規プロダクト開発のスピードに影響しており、スタートアップが優秀な人材を確保することが成長の前提となっている。SALESCOREは採用を投資目的の一つに据え、プロダクトと人材の相互成長を軸に事業を前進させる。
営業改革を支える伴走型支援
SALESCOREの事業は、単なるSaaS提供にとどまらず、顧客企業の営業文化そのものを変える「伴走型」の支援に特徴がある。予実管理やKPI管理といった業績データをSaaS上で統合し、属人的なノウハウを共有可能なナレッジとして蓄積する。これにより、個人の成果を全社的な成長に転換することを目指す構造だ。同社は2018年に創業。代表の中内氏は、インターネット系企業でゲーム開発に携わった後、営業組織の非効率を実感し、データに基づく営業改革の必要性を痛感したという。その経験をもとに、広告・IT・人材・不動産・金融など多様な業界の営業支援に取り組んできた。現在はSaaSとコンサルティングの両軸で事業を拡大している。
SALESCOREは資金調達後、AIプロダクト群の高度化とともにバーティカルSaaSへの展開も視野に入れる。営業領域がAIで変革期を迎える中、SALESCOREの動向は日本のSaaS産業の成熟度を測る指標の一つとなるだろう。