株式会社パーソルビジネスプロセスデザイン(東京都港区)は、組織開発などを手がけるあまねキャリア株式会社(静岡県浜松市)と共同で開発した「ライトプロジェクトマネジメント研修」の提供を開始することを明らかにした。短時間でプロジェクト運営の基礎を学ぶ実践型プログラムで、企業や自治体に向けて全国展開する方針である。
同研修は、パーソルグループがBPO事業などを通じて培ったチームワーキングの知見と、沢渡あまね氏が提唱する「ライトプロジェクトマネジメント」の理論を融合させた。多様な人材が協働する職場で共通言語を持ち、効率的にプロジェクトを進める体制づくりを支援する狙いがある。
静岡県磐田市で先行導入 公務員の協働力向上に成果
本研修は、両社が磐田市と結んだ「学び×共創の地域連携協定」に基づき、2025年10月に同市役所で試験導入された。自治体職員が、プロジェクトの立ち上げや進行を体系的に学ぶ取り組みとして実施された。全受講者の8割が「日常業務に実践的な効果があった」と回答した。現場での課題解決やチーム間調整の手法を体得するきっかけになったという。磐田市では今後も研修成果を庁内連携の改善やプロジェクト推進体制の見直しに反映させる考えを示している。
研修の時間は3~4時間程度と短く、業務への負担を抑えながら参加できる点が特徴だ。講義と演習を交互に行い、タスク分解や計画立案などの基本スキルを体に覚え込ませる。受講者の業務内容に応じて内容をカスタマイズし、実施後も相談対応やフォローアップを行う仕組みを備えている。オンライン形式にも対応し、チャットやリアクション機能を使いながら講師と対話できる環境を整えている。これにより、企業や自治体が場所を問わず導入しやすい形態とした。同社が提供するチームワーキングフレームワーク「COROPS(コロプス)」を土台に構築されたカリキュラムで、チーム運営を定量的に見直す方法も学べる。
地域人材育成の文脈で広がる実務研修
パーソルビジネスプロセスデザインは、これまで20年以上にわたりアウトソーシングや業務改革支援を展開してきた。その過程で得たチーム運営の知見を可視化して体系化したのが『COROPS』フレームワークであり、現場の課題を抽出し、改善・実行・振り返りを循環させる仕組みを定義している。同社はこのフレームワークを基盤に、自治体・企業の業務実行支援や育成研修を拡大している。学びと実務を結ぶ『共創学習』の形を構築しつつある。
共創パートナーのあまねキャリアは、個人や組織の越境学習をテーマに全国で組織開発・地域開発を支援している企業だ。代表の沢渡あまね氏は作家でもあり、これまで400超の企業・自治体・官公庁で改善プロジェクトを支援してきた。浜松市を拠点に、地域社会を巻き込んだワーケーションや人材交流事業も手がけ、公共分野でのイノベーション支援に実績を持つ。両社の連携は、地域社会の課題解決を担う『公民共創人材』の育成に向けた動きと位置づけられる。
企業・自治体の人材課題を補完 今後は全国展開へ
今回の取り組みは、企業のプロジェクト推進人材不足や自治体の人材育成負担の増大への対応でもある。人口減少や働き方の多様化で、現場任せの業務遂行には限界が生じつつある。研修では「仕事の5つの要素」を学び、プロジェクト移行時の属人化を防ぐ点が評価された。人事・企画部門からの引き合いも増えつつある。同社は事業所単位から自治体協定単位まで柔軟に展開できる体制づくりを進めている。特に短時間で基礎を習得できる点が、非製造業やサービス分野を中心に広がる見通しだ。
共創人材育成が新時代の焦点に
デジタル技術を活用した協働や複業・副業の拡大により、個人の業務範囲は拡張している。そうした中、組織横断で動けるマネジメント層や若手職員への研修需要が高まりつつある。業界関係者は「学びと実務推進を接続し、自治体・企業を越えた共創文化を育む試み」とみており、職場の生産性向上だけでなく、地域社会全体の人材循環にも波及する可能性があると指摘する。パーソルビジネスプロセスデザインは今後、全国の自治体や企業に研修を展開し、「はたらいて、笑おう。」のビジョンの下、共創的な働き方改革を後押しする方針を掲げている。人材育成の新しい形として、実務と学びを結ぶこのモデルがどこまで広がるかが注目される。