パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社(東京都港区)は、企業の請求書発行や受領業務の効率化を目的とする新サービス「請求業務のゼロ化」を提供開始したことを明らかにした。生成AIをはじめとする先端技術を活用し、請求業務における“人の工数ゼロ”を実現することを目指すとしている。同社によると、従来手作業が中心だった確認・照合作業の自動化により、業務負荷とヒューマンエラーの低減を図る。
今回のサービスは、請求書の発行・受領、契約・実績の照合、承認ワークフローなど、請求関連の全工程を自動化する伴走型DX支援として位置づけている。AIやRPAの導入を支援する専門コンサルタントが業務を分析し、選定した技術を実装することで、非定型な処理や顧客ごとに異なる要件にも対応する。企業の請求業務を抜本的に改革するソリューションとして展開する方針だ。
AIと自動化で工数76.3%削減例も
「請求業務のゼロ化」は、既存システムとの連携が難しく自動化が進まなかった企業の課題解消を狙う。従来は契約条件が案件ごとに異なり、請求書の仕様を統一できず、各担当が依頼に応じて請求書を手作業で作成していた。非構造データやフリーテキストの取り扱いが主であったため、RPAなど従来手法では省人化が困難だったという。
同社はAIを活用し、請求書作成の指示内容の理解や〆切計算、処理フロー判断を自動化し、請求書作成業務の工数を最大76.3%削減した事例があると説明する。
また、請求関連データの整備によって後続業務の流れも改善し、組織全体の処理精度向上を支援する。成果確認や追加処理を自動で反映する仕組みを取り入れ、月末月初に集中する作業量の平準化も見込む。
「ゼロ化」シリーズの中核に位置づけ
同社は営業やマーケティング、採用などホワイトカラー業務のDX分野で「ゼロ化」シリーズを展開している。「セールスのゼロ化」「マーケティングのゼロ化」「採用のゼロ化」に続く新たなラインとして今回の「請求業務のゼロ化」を位置付け、バックオフィス領域の生産性改善を強化する構えだ。生成AIや機械学習の技術進化を取り込み、業務プロセスを定型・非定型を問わず自動化する。
シリーズ全体では、企業ごとの異なる要件に合わせてプロセスを再設計し、PoC(概念実証)や業務定着までを一貫して支援している。パーソルグループが掲げる「はたらいて、笑おう。」のビジョンのもと、AIを活用した業務の高速化と品質維持の両立を目指す。同社によると、100人超のAIスペシャリストを育成しており、導入支援や業務設計を内製化する体制も整えている。
企業現場のDX需要に対応
請求業務は月末や月初に集中し、担当部署の負荷が高い。既存システムとのデータ整合性確保や顧客システム連携の煩雑さなどが、効率化を阻む要因になってきた。背景には、取引先指定のフォーマットに対応する作業や、契約単位での個別条件管理が求められ、標準化が進まないという構造がある。本サービスでは、こうした非定型部分もAIに処理を委ね、業務変動リスクを縮小させる。
同社の親会社であるパーソルホールディングス(東京都港区)は、人材派遣・BPOを中心に多様な事業を展開しており、グループ全体でDX支援に注力している。BIM・CIM技術研修や障害者雇用促進など、多様な分野で「はたらく」を支える取り組みを拡充してきた。今回の請求業務領域への展開も、業務デジタル化需要が高まる企業との連携拡大を視野に入れている。
持続的な拡張と導入効果の普及
サービスは今後、他のミドルバック業務にも適用範囲を広げる計画だ。AI技術を中心とした自動化ソリューションを共同開発・提供するパートナー企業との連携を強化し、企業の定型外業務や非構造データ処理の迅速化に取り組む。依頼作成・承認・照合といった連鎖的なタスクを統合管理する設計により、業務全体のPDCAを支援するモデルへの転換が進む見通しだ。
同社は、今回の取り組みを通じて、現場の事務負荷だけでなくプロセス全体の透明化を図り、中長期的な企業価値向上に寄与すると位置付けている。生成AI導入の広がりやBPO領域の再構築が進む中、請求業務の完全自動化は今後のバックオフィスDXの焦点となりそうだ。