パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社(神奈川県横浜市)は、2027年4月1日付で社名を「モビテラ株式会社(Mobitera Inc.)」に変更すると発表した。2024年12月からApollo Global Management Inc.をはじめとするアポロ・グループとの戦略的パートナーシップの下で新経営体制を敷いており、社名変更により持続可能なモビリティ社会の実現へ向けた取り組みを加速させる。
同社は自動車メーカーや利用者との協業を強化し、安全性と環境性を両立するソリューション提供を目指す。社名変更はアポロ・グループとのパートナーシップ体制発足後、初めての企業ブランド上の再構築にあたるもので、今後の事業成長戦略の一環と位置づけている。
グローバル子会社も「モビテラ」名に統一
モビテラへの社名変更は横浜本社のみならず、国内外の連結子会社にも適用される。パナソニックITS株式会社は「モビテラITS株式会社」、パナソニック カーエレクトロニクス株式会社は「モビテラ ソリューションズ株式会社」、さらに米国やメキシコ、インド、ヨーロッパ、アジア太平洋など各地域の関連会社も順次改称する。唯一、オープン・シナジー有限会社のみ現行社名を維持する。
同社は子会社の商号統一により、グローバルでのブランド認知と経営の一体化を図る方針を明確にした。
これにより、部品開発からエレクトロニクス技術、車載ソフトウェアまでを貫くモビリティ領域全体での事業再編が進む見通しだ。
背景にアポロ・グループとの提携と体制転換
2024年12月に始動した新体制では、米投資会社アポロ・グループとの戦略的パートナーシップを中核に、資本と経営の両面での支援を受けている。
グローバル自動車産業がEVやCASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)などのトレンドで再編を迎える中、パナソニックグループはオートモーティブ部門の独立運営強化を進めてきた。
今回の商号変更はその流れを象徴する一手であり、企業ブランドよりも事業価値や独自性を前面に出す経営への転換点といえる。
社名が示す理念と社会的方向性
新社名「モビテラ」は、英語の“Mobility”とラテン語で「道」を意味する“Iter”を組み合わせ、“未来を照らす”という想いを込めた造語だ。
中央の「i」は「人」を象徴し、「人に寄り添う企業姿勢」を示すと説明している。
また、コーポレートカラー「モビテラブルーグリーン」は、人・街・地球との調和を象徴し、快適さと環境配慮を両立するブランドメッセージを担う。同社は今後、安心・安全かつ快適な車載技術を中核に「世界一の移ごこちデザインカンパニー」を掲げ、ビジョン策定を具体化していく計画だ。
グループ理念に基づく再編の位置づけ
今回の社名変更は、パナソニックホールディングス株式会社の「自主責任経営」を基調とするグループ方針に沿った再編の一環でもある。
グループ全体では、事業持株会社制導入以降、分社ごとのブランド再構築が続く。
パナソニック オートモーティブシステムズはそのなかで技術資産と企画機能を統合し、経営自立性を高める役割を担ってきた。
背景には、自動車産業における競争激化とともに、車載エレクトロニクスの高度化がある。電動化・安全支援システムなど複合領域での新技術開発と外部提携の重要性が増しており、同社はモビテラブランドの下でサステナビリティ経営および欧米アジア拠点を横断する連携を強化する考えを示している。
永易正吏社長は「新しい社名は私たちのミッション・ビジョンを体現し、モビリティ社会における存在意義をさらに明確化するもの」と述べた。これまでの車載エレクトロニクス事業を継承しながらも、ブランド再構築による次世代移動体験の創出を目指す姿勢を明確にした。
業界関係者の間では、パナソニックグループが製造子会社の再編を本格化するなかで、外資との提携を軸にした新たな独立ブランド体制がどのように機能するかが注目されている。
今後の注目点
モビテラへの移行は2027年4月1日に完了予定で、国内外あわせて十数社が同日付で社名を変更する。
グローバルブランドとしての統一運用が始まることで、製品開発、企業広報、採用活動などにおける表記や体制も順次整備される見込みだ。
自動車関連の主要事業会社が相次いでブランド再構築に踏み出すなか、モビリティ社会でのパナソニック系事業再編の行方が焦点となる。