株式会社大塚商会(東京都千代田区)は2026年2月、東京と大阪で「実践ソリューションフェア2026」を開催すると発表した。開催は東京が2月4日から6日、大阪が2月18日と19日で、開催規模は過去最大になる見込みだ。同社によると、フェアのテーマは「AIで拡がる!まるごとDX」であり、100社を超える協賛企業が参加する予定だ。イベントはITを軸に業務効率化や生産性向上を支援する企業展示・ステージ・セミナーで構成され、生成AIやAIエージェントを活用した実践的な事例の紹介も予定されている。
同社がこうした規模拡大に踏み切る理由は、AI技術の高度化が企業経営や組織運営のあらゆる層に影響を及ぼしているためである。生成AIの普及やセキュリティ基盤の進化により、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は「部分最適」から「全社的業務革新」へと重心が移りつつある。同社は「お客様に寄り添い、共に成長する」姿勢を掲げ、業種を問わずAI時代に対応した総合的な提案を行う方針を示した。
東京・大阪で2月開催 49回目で過去最多規模
大塚商会が主催する「実践ソリューションフェア」は来年で49回目を迎える。東京会場はザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区芝公園)、大阪会場はグランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)で開催される。過去最多となる100社を超えるIT関連企業が協賛し、AIやDX分野の最新技術を展示・講演を通じて紹介する。展示エリアには「AIワールド」「まるごと競争力強化」「まるごとセキュリティ・インフラ強化」などのテーマ別ゾーンを設け、製造、建設、介護、小売、災害対策といった業種別のDX事例を取り上げる。オフィス備品通販「たのめーる」やLED照明を活用したワークスタイル改善提案など、業務の周辺領域にも踏み込む。
ステージプログラムでは、大塚商会が自社の実践を交えてAIがもたらす業務革新をデモンストレーション形式で紹介する。協賛15社によるトレンドセッションでは、市場動向や技術潮流を分析し、企業経営に直結する情報を提供する予定だ。セミナーにはサイボウズの青野慶久社長、日本マイクロソフトの西脇資哲執行役員などが登壇し、経済産業省の担当者が中小企業向けのセキュリティ評価制度と支援策を説明する予定だ。
創業60年、「ITでオフィス元気に」でDX支援拡充
1961年創業の大塚商会は、情報システムの構築から保守・運用までを手掛ける情報通信産業の大手企業として、システムインテグレーションとサービス&サポートを二本柱に事業を展開している。2024年12月期の連結売上高は前期比13%増の1兆1076億円、純利益は12%増の534億円で、過去最高益を更新した。設備投資額は107億円、研究開発費は22億円でIT基盤の強化を進めている。従業員数は単一基準で7,949人、連結ベースでは約9,800人に達し、国内SIerの中でも規模が大きい。平均年収は約1,000万円に及ぶ。IT商品流通からネットワーク構築、セキュリティ対策、クラウドサービスまで一括提供体制を整え、全国に営業拠点を有する。
同社は、総務・経理など非製造部門も含む“オフィス全体”の支援を掲げており、今回の博覧会ではAIを活用した事務の効率化・文書の電子化・人事業務の自動化などを提案する。特に生成型AIやAIエージェントを活用した事例を紹介し、働き方の再設計とリスク管理の強化につながる方針だ。
広がる協賛ネットワーク 実務現場への導入加速へ
今回の博覧会には、ソフトウェア開発会社OSKをはじめ、クラウドサービスや業務管理システムなど国内の主要IT企業が協賛・出展する。OSKは販売・会計・人事・給与などを統合した業務パッケージ「SMILE V」シリーズを提供しており、製造業から建設業・小売業など約170業種のシステムを展開中だ。同社と大塚商会は長年のパートナー関係として、現場志向の業務効率化支援提案を共同で推進している。博覧会ではAIを活用した顧客管理(CRM)や会計の自動処理事例研究セッションも予定されており、生成型AIが経営判断の迅速化にどう寄与するかを確認できる内容だ。ITベンダーと顧客企業が直接対話する場を設け、導入後の課題共有と改善プロセスの可視化も図る。
大塚商会の今回の博覧会は、単なる展示会にとどまらず、中小企業など幅広い利用者が自社のDX方向性を点検できる場として位置づけられている。同社が掲げる「統合DX(マルごとDX)」のコンセプトは、個別ツール導入にとどまらず、組織運用基盤ITを統合的に提案する姿勢に基づく。特別セミナーでは地方自治体や政府関係者も参加し、中小企業向けのセキュリティ対策と補助金政策の連携動向が紹介される予定だ。産官協力の拡大は、産業全体の競争力向上にも寄与するとの評価だ。
今回の博覧会の運営は経済産業省の関連支援制度と連動しており、参加者は補助金活用とともにAI導入の検討を初期段階から並行できる。大塚商会は創業以来「オフィス元気づけ」の精神のもと、AI技術と人材育成・運用支援を結びつけた新しい顧客対応モデルの確立を掲げている。
堅調な財務基盤と市場存在感高まる
同社は東京証券取引所プライム市場上場(コード4768)である。2025年末時点の時価総額は約1兆2000億円、自己資本比率は53%。主要株主は大塚装備株式会社(33%)、国内機関投資家約30%、海外法人26%。最近AIソリューション関連の需要増により売上は10年間で約1.8倍、純利益は約2.3倍と増加した。連結ベースの利益成長率は8%台を維持しており、従業員の平均勤続年数は17年以上と長期雇用の安定性が高い。
次回展開見据えた布石 広がる生成型AI活用
今回の実践ソリューションフェア2026は、業界の革新を牽引する大きな分岐点となる可能性が高い。展示・講演・相談を通じて、各業種ごとに目標に適合したAIの適用例を具体的に提示する。今後、大塚商会はこれまでの経験と課題を踏まえ、AI・クラウド・セキュリティを統合したソリューションの提供を強化する。生成AIをめぐる制度設計やリスク管理の再構築も喫緊の課題となっており、実務と政策を結ぶ重要なポイントとして位置づけられる。