小野薬品工業株式会社(大阪市中央区)は、国際環境非営利団体CDPが実施する企業の環境活動評価のうち「気候変動」と「水セキュリティ」の両分野で、最高評価に相当するAリストに選定されたと発表した。「気候変動」は8年連続、「水セキュリティ」は5年連続でのAリスト入りとなる。
同社は医薬品メーカーとして、事業活動が環境に与える影響を減らす体制の整備を進めてきた。
今回の評価は、温室効果ガス削減や水資源管理に関する施策が国際的基準で高く評価された結果であり、「ECO VISION 2050」を軸にしたサステナブル経営の推進策が一定の成果を示したとみられる。
中長期環境ビジョンの実行を加速
小野薬品は、中長期環境ビジョン「ECO VISION 2050」のもと、製造・研究活動での温室効果ガス排出量や水使用量、廃棄物削減、生物多様性保全などに取り組んでいる。中長期環境目標を設定し、国内外拠点の省エネルギー化、サプライチェーンを含めた環境負荷低減活動を進めているのが特徴だ。
今回のAリスト選定は、こうした施策の継続性と透明な情報開示姿勢が国際的に認められた形となった。
CDPは、世界の主要企業約2万2,000社が参加する環境情報開示プラットフォームを運営し、回答内容をAからD−までのスコアで評価している。Aリスト入りは、開示の包括性や環境リスク管理、目標の野心度など複数の観点で最高水準と判定された企業に与えられる。
同社は、医薬品製造分野で長期にわたり高評価を維持している数少ない企業の一つだ。
世界で広がる情報開示の潮流
CDPは、企業の環境対策を投資判断に結びつける情報基盤として国際的に定着している。
2025年時点で127兆米ドル以上の資産を運用する640の機関投資家が、企業に対し気候変動や水リスクに関するデータ提供を求めており、世界の運用資産の4分の1超がCDPデータにアクセスしている。
Aリストに選ばれた企業は、投資家・金融機関からの信頼性向上につながるとの見方がある。
こうした流れを背景に、製薬業界でも環境情報の透明化が求められている。
小野薬品は自社の環境戦略を国際的な開示基準に合わせて整備しており、水資源や温暖化ガスへの対応だけでなく、廃棄物処理や生物多様性保全も含めた広範な枠組みでマネジメントを実施している。
産業全体で進むESG対応
気候変動や水セキュリティは、製薬業界においてもサプライチェーンの安定や研究開発拠点の運営に直結するリスク要因とされる。
業界関係者は、Aリスト評価が企業のESG対応力を示す指標の一つとなりつつあると指摘する。
小野薬品の社内では、環境課題を経営の主要テーマに据え、各部門単位で削減指標を設定する運用が行われている。
同社の環境報告制度は、国際的な情報開示基準との整合性を重視している。
今後も脱炭素社会への移行に向け、取引先との協働を視野に入れた排出削減体制を拡充する方針だ。
こうした対応は、製薬業界におけるサステナビリティ経営の深化を後押しする動きと位置づけられる。
小野薬品は、今後も次世代に向けた環境保全施策を継続する姿勢を示している。長期ビジョンで掲げる温室効果ガス削減や水利用の効率化、生物多様性保全の各分野で具体策を重ねる構えだ。
今回の選定は、環境情報開示の国際標準が広がる中、日本企業による持続的な取り組みの位置づけを明確にする事例の一つとなる。