NTT都市開発株式会社(東京都千代田区)は11日、豪州ビクトリア州において新たに2件の宅地分譲プロジェクトを実施すると発表した。豪州現地法人のNTT UD Australia Pty Limitedを通じて取り組むもので、2011年の同州進出以来築いてきた事業基盤を活かし、域内での住宅供給力を強化する狙いだ。
両案件はメルボルン都市圏を中心に住宅需要の拡大が続く中で企画されたもので、NTT都市開発としては当地の住宅分譲事業を一段と安定した収益源に育てる方針である。購入しやすい価格帯の商品設計を通じ、人口増加地域の需要を取り込む。
開発の一部はビクトリア州政府による地区計画の指定を受けており、住宅や教育施設、交通結節点の整備が進む土地利用政策と連動する。
メルボルン北部とトーキーで計画進行
Camerons Laneプロジェクトは、メルボルン中心部(CBD)から北へ約40キロの位置にある。
2025年8月にはビクトリア州政府が当該地を含むエリアで新たな地区計画(Precinct Structure Plan)を制定し、住宅・教育・公園整備と新高速道路インターチェンジの開設を盛り込んだ。これにより都市圏北部では一層の人口流入が想定されており、NTT都市開発は中所得層向け宅地供給の拡大で需要を取り込む構えだ。
もう一つのTorquayプロジェクトは、同州第2の都市ジーロングから南方約20キロの海岸部が舞台となる。サーフィンで知られるトーキー地区は、自然環境と都市機能を兼ね備えた居住地として注目度が高い。
NTT都市開発はメルボルン近郊の住み替え需要やリタイア層の移住志向にも応える住宅企画を進める。いずれの計画も今後の地域開発計画に基づき段階的に立ち上げられる見通しだ。
豪州事業は10年以上の展開 現地協業重ね基盤拡充
同社は2011年12月にビクトリア州で宅地分譲事業を開始。以降、優良な地元デベロッパーと協働しながら販売・運営の実績を積み上げてきた。これまでメルボルン郊外を中心に複数の区画開発を手掛けており、事業ノウハウの蓄積を背景に新案件へと展開している。
親会社のNTTアーバンソリューションズグループ全体でも、海外不動産投資の地域分散を進める方針が掲げられている。
背景には、ビクトリア州の着実な人口増がある。
オーストラリア全体でみると、東南部の温帯地域では温暖で安定した気候を背景に住宅需要が高く、特にメルボルン周辺は人口流入が続くエリアだ。近年は地価上昇や都市中心部の飽和を受け、郊外への開発が拡大している。この動きに対応して公共交通・道路網の整備が進み、宅地分譲への投資環境が整いつつある。
人口集中地帯の温帯気候を背景に住宅需要持続
オーストラリアの気候は地域差が大きいが、メルボルンを含む南東部はケッペンの気候区分で西岸海洋性気候(Cfb)に属する。夏は穏やかで冬の寒さも緩く、年間を通じて居住に適した環境が保たれている。
こうした温温帯気候の安定性が、他地域からの移住や長期定住を後押ししているとみられる。雨量は年間を通じて適度にあるため、住宅開発に必要な水資源の確保もしやすい。
また、州都メルボルンはインフラ整備計画の集中的な投資対象となっており、通勤圏の拡大が分譲事業の下支えとなる。郊外住宅地では共同開発や上下水道整備を公民連携で進めるケースが増え、民間デベロッパーが参画しやすい環境が形成されている。
NTT都市開発はこれらの制度的な枠組みと整合を図りながら、販売・施工管理を現地法人を通じて実施する体制だ。
現地市場連携の深化が焦点
NTT都市開発では今後も豪州における宅地分譲事業を拡大する方針を示しており、現地パートナーとの協働関係維持が鍵となる。
社会インフラの整備や気候対応を踏まえた設計が求められるため、地域行政との連携や環境規制の順守も継続課題だ。豪州市場では郊外住宅開発の競争が激化しており、都市圏人口動態と土地利用政策を的確に捉えた供給計画の実行力が注目される。