株式会社NSJAPAN(東京都千代田区)は2025年12月、営業支援SaaS型研修サービス「Sales Knowledge Lab(セールス・ナレッジ・ラボ)」が、厚生労働省の人材開発支援助成金〈事業展開等リスキリング支援コース〉の対象サービスとして認定されたことを明らかにした。助成金の適用により、企業は営業人材育成の費用を最大75%まで軽減できる。人材育成の負担を抑えつつ、DX時代に対応した営業組織の強化を進めやすくなる。
同社は、政府が推進するリスキリング支援と人的資本経営の流れに呼応し、企業が持続的に成長できる仕組みづくりを目指している。助成金認定を受けることで、中小企業でもコスト面の制約を抑えつつ、研修導入を進めやすくなり、新たな需要喚起につながる可能性がある。国の制度活用によって、人材育成と組織改革を一体的に進める動きが広がる契機となりそうだ。
デジタルと伴走型支援で営業力強化
Sales Knowledge Labはオンライン上で実践的な営業教材やケーススタディを配信し、受講者の成果やKPIの進捗を可視化するSaaSプラットフォームである。加えて、営業経験を持つプロフェッショナルが定期的に1対1のコーチングを行い、オンライン研修の内容を実務で定着させるための助言を提供する点が特徴だ。 同サービスは「研修・ツール・人的支援」を組み合わせたハイブリッド型モデルを採用し、受講者を継続的に支援する仕組みを備える。営業活動の標準化を通じて、再現性の高い成果を生み出すことを狙う。
今回の厚労省認定により、特に中小企業の場合は訓練経費の最大75%が補助対象となる。大企業では経費の3分の2まで支援を受けられる。また訓練期間中の賃金支給も認められており、社員の学習機会を確保しつつ、生産性を維持できる。この制度設計は、企業が営業力強化とデジタルスキル習得を並行して進める後押しとなる。
「技術職」として変わる営業像
NSJAPANの代表・内藤修平氏は「営業職は才能依存型から再現可能な技術職へと変わりつつある」と述べた。Sales Knowledge Labはデジタルと人の力を結びつけて、再現性の高い営業モデルの構築を目指す。今回の補助金認定を通じ、従来は費用負担のため研修導入が難しかった中小企業にも機会提供が可能となったと明らかにした。社会的課題と指摘された人材育成の幅を広げ、成長中の企業にも販売人材の高度化を促進する効果が期待される。
東京都千代田区麹町に本社を置くNSJAPANは、2023年創業のベンチャーとして、営業教育・支援およびSaaS型プラットフォーム提供などの事業を進めている。従業員規模は外注を含め40名程度で、法人成長段階別のきめ細かな支援ニーズの高まりを受け、デジタル化事業の拡大を推進している。
導入先で業績改善 商談転換率向上
同サービスを導入した福利厚生サービス企業KOMPEITOでは、営業活動の成果指標に明確な改善が見られた。リード(見込み客)から相談への転換率は約10%から18%程度へ上昇し、相談から契約までの転換率も12%からほぼ20%へ高まったとのこと。その結果、月間新規受注件数が増加し、営業プロセスをデータに基づいて分析・改善する文化が定着している。KPIの可視化と実践的コーチングを組み合わせることで、営業組織の課題が早期に特定され、個の強みを活かした体制が機能している。
KOMPEITOの担当マネージャーはNSJAPANを『単なる代理ではなく、営業体制自体の設計段階から支援するパートナー』と評価した。データ分析に基づく改善提案を繰り返す過程で、自社の強み(USP)を明確化し、新規アプローチ戦略の構築に到達した。デジタル支援と人的コンサルティングを併せ持つ形で現れた営業高度化の模範事例といえる。
営業モデルの転換へ一歩前進
導入障壁が下がったとはいえ、中小企業への浸透には時間を要するとみられる。多くの企業では人材育成に対する投資判断が慎重で、学習継続のための組織体制も十分に整っていないケースが多い。NSJAPANは効果指標の可視化や成功事例の共有を通じ、研修投資の必要性を示す取り組みが求められる。
国全体でリスキリングの認知度が高まる中、Sales Knowledge Labは今後、営業組織改革を支える基盤としての存在感を高めるとみられる。加えて、厚労省の助成金制度は中小企業への浸透を後押しし、営業人材のリスキリング需要を一段と強める可能性がある。制度活用が進めば、同社が掲げる「デジタルと人的支援を統合した営業モデル」の普及が一層進むとみられ、国内の営業人材育成市場にも波及効果をもたらしそうだ。