ブラザー工業株式会社(名古屋市)は、調整作業をデジタル化したアームベッド型プログラム式電子ミシン「NEXIO BAS-341K/BAS-342K(Kシリーズ)」を発売する。0.01mm単位での高精度な調整が可能となる機構を備え、人手に依存していた縫製調整工程を自動化することで、生産の均質化と人材不足対応を図る。
今回の新製品では、センシング技術を活用して釜周りの調整状態を数値化し、操作パネルで0.01mm単位の確認・設定を可能にした。これにより、従来は熟練作業者の感覚に頼っていた針棒位置や針と釜のタイミング調整などを標準化できるようにする。ブラザー工業はこの技術を、工業用ミシン部門の基幹機種における新たな標準仕様と位置づける。
高精度調整を数値化し同一品質を再現
NEXIO BAS-341K/BAS-342Kでは、ブラザー独自のセンシング技術「DIGIFLEX TUNE」を搭載した。釜まわりの可動部をセンサーでモニタリングし、調整状態をリアルタイムで数値化する。
この仕組みにより、パネル上で目標値と現状値を確認しながら針棒の高さや隙間を微調整できる。人や環境の違いによるばらつきを抑制し、縫製精度を保ちながら調整時間を短縮するのが狙いだ。
これらの情報がデジタル化されることで、異なる工場間でも同一条件での設定が可能となる。
同社は、生産拠点の分散化が進む中でも同品質の縫製を再現できる体制づくりを支援するとしている。こうした技術の導入は、人材育成が課題となっている縫製現場での技術継承負担を軽減する効果も見込まれる。
不良検知と張力監視を標準装備に
新機種では、不良検知技術と張力監視機能も標準搭載された。磁気センサーで上糸張力を直接検知し、糸切れや縫製異常の早期発見につなげる仕組みだ。さらに、一針ごとの張力データを収集し、自動的に閾値を生成できる。これにより、硬さや厚みの異なる生地に対応しながら精密な張力制御を行い、縫製不良を抑止する。
生地の厚みを縫製前に測定する「生地厚検知装置」も新たに搭載されている。設定値と異なる場合にはエラーを表示し、重ね枚数の誤りを未然に防ぐ。
これらの自動検知機構により、オペレーターの技能差による品質のばらつきを小さくする効果が期待される。同社では、工業用ミシンにおける品質管理の一元化と効率化を進める考えだ。
熟練頼みの工程を自動化 縫製現場の課題に対応
ブラザー工業は、創業期から家庭用・工業用ミシンの開発を主軸としており、マシナリー事業部を通じて縫製関連機器の自動化・省人化を推進してきた。
今回のKシリーズは、こうした長期的な取り組みの延長線上にある。同社はこれまでもサーボ制御や電子化ユニットを導入し、縫製精度のばらつき解消を目指してきた経緯がある。
一方、外部環境ではアパレル生産のグローバル分業が進み、東南アジアなど各国の工場で同一品質を確保することが課題となっていた。労働力の確保が難しい状況が続く中で、熟練作業者の感覚に依存しない調整技術の需要が増している。工場管理者の間では、デジタルによる調整記録の可搬性が生産管理上の注目点になりつつある。
縫製自動化の進展に広がる波及効果
ブラザー工業の担当者は、新製品について「縫製不良の原因をデジタル値で可視化することで、迅速な改善につなげられる」と説明する。従来の熟練技術を装置が補完することで、操業の安定と製品品質の均質化を同時に狙う構えだ。また、ソフトウェアの更新により既存機種にも一部機能を適用できるようにするという。
同社は今回の発表を通じ、工業用ミシンの精度制御やデータ活用の領域で先行的な開発姿勢を示した格好だ。
縫製工程のデジタル化が加速する中、他の縫製機器メーカーも同様の高精度制御技術を取り入れる動きが広がるとみられている。今回の取り組みは、製造現場の省人化と品質管理を両立させる流れの中に位置づけられる。