スポーツテック企業の株式会社ユーフォリア(東京都千代田区)は9日、株式会社イオレ(東京都港区)が運営するグループコミュニケーションサービス「らくらく連絡網+(プラス)」事業を2026年1月1日付で譲り受けると発表した。全国約70万人の登録者を抱えるサービスを取得することで、同社はスポーツ分野におけるデジタル支援の拡充を進める。
ユーフォリアは、アスリートのコンディション管理システムや部活動向け運営管理アプリを展開しており、今回の譲受を自社事業群の一体的な発展につなげる狙いだ。「らくらく連絡網+」の既存顧客と機能基盤を取り込み、スポーツ現場の情報共有や運営管理を包括的に支援する体制を整える。これにより、学校や地域団体の活動効率化を高めるとともに、デジタル化の潮流に対応する。
全国70万人が利用する連絡サービス
事業譲受の対象となる「らくらく連絡網+」は、スポーツチーム、学校部活動、サークル、PTAなどで活用されている団体向けコミュニケーションアプリだ。利用者は2025年11月末時点で全国約70万人に達し、「一斉連絡」「日程調整」「出欠確認」など、団体活動に不可欠な機能を搭載している。
2004年のサービス開始以来、長期にわたり地域スポーツや学校活動を支えてきた実績を持つ。
ユーフォリアはこの大規模なユーザーベースを自社のサービス群と統合し、スポーツ現場や教育機関のデジタル運営支援を一層強化する方針だ。同社の既存サービス「ONE TAP SPORTS」や「Sgrum」との補完関係を生かし、トップアスリートから地域クラブまで、幅広い層に対応するエコシステムを構築する狙いがある。
スポーツ現場のデジタル化を促進
ユーフォリアは2008年の設立以来、「人とスポーツの出合いを幸福にする」を掲げ、アスリート支援と教育・地域スポーツの運営効率化に特化してきた。トップチーム向けにはSaaS型のデータマネジメントシステム「ONE TAP SPORTS」を提供し、身体データを分析してケガ予防や競技力向上につなげている。
一方で、学校・地域団体向けの「Sgrum」は、部活動の運営や会費決済などを一元化する仕組みを提供し、教員や指導者の業務負担を軽減してきた。
今回の事業譲受により、これらの運営支援機能に加えて、日常的なコミュニケーションを担う「らくらく連絡網+」のノウハウを融合させる。結果として、スポーツチームや部活動、地域クラブの管理を「データ」「運営」「連絡」の全領域でカバーできるようになるためだ。ユーフォリアはこれを「スポーツ現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)」の中核施策と位置づけている。
地域スポーツ政策の追い風
地方自治体でも、部活動の地域移行を進める動きが広がっている。
兵庫県芦屋市では、2024年に地域クラブ登録制度を導入し、学校と地域団体が協働して子どもたちの部活動環境を整備している。登録団体は市内で活動計画を策定し、安全体制や指導方針の審査を経て地域クラブとして認定される仕組みだ。市は今後も登録団体を段階的に拡大する意向を示している。
こうした流れの中で、オンラインでの連絡・調整を効率化するIT基盤の需要が高まっている。特に部活動が地域主導へ移行する過程では、学校外の指導者・保護者・行政担当者をつなぐ情報共有ツールの必要性が増しており、ユーフォリアが譲り受けた「らくらく連絡網+」はその役割を担う可能性がある。
背景には、教育現場の負担軽減と安全管理の両立を図る行政方針がある。
今後の展開と注目点
ユーフォリアは、スポーツテック事業を軸にした多層的なデータ連携を進め、今回の事業譲受を地域スポーツ支援網の整備につなげる見通しだ。
今後は学校・クラブ・自治体など多様な主体との連携が焦点となる。芦屋市のように地域クラブ制度を採用する自治体が増える中、同社のツールが連絡・運営基盤として活用範囲を広げるかが注目される。