株式会社中西製作所(大阪市生野区)は、給食調理現場の人手不足と生産性向上を目的に、2030年を見据えた「未来の給食センター」構想を映像化したイメージ動画を公開した。現行技術を基盤としながら、自動化や省人化を進めた厨房設備群を提示している。
同社は給食センターへの厨房機器供給と設計支援を行う業務用機器メーカーで、今回の映像は事業の方向性を示すものと位置づける。
労働力不足が深刻化するなか、既存製品の技術発展を前提に、現場が直面する構造的課題の解消を狙う。
自動搬送を含む調理工程を体系化
動画では、給食センターの各工程を自動化する複数の装置が描かれている。上処理工程では、高圧水流で食材を裁断するウォータージェットスライサーを導入する。刃の交換作業を不要にし、異物混入のリスクも軽減する仕組みだ。
煮炊き工程では、クラス単位での分量調理を行い、配缶から洗浄までを自動化する「連続式釜調理ロボット」を紹介した。焼き物工程には、過熱水蒸気を用いた「SVロースター」と自律走行搬送ロボット(AMR)による自動搬送機構を採用。投入から取り出しの一連作業をロボットアームが担う構成とした。さらに洗浄工程では、返却された食器をカゴ単位で無人洗浄する仕組みを設け、センサーでの自動カウントや自動収納まで完結する流れを示している。
同社は1940年代の創業期から給食用調理器具を供給しており、いまでは設計から施工まで一貫で担う体制を築いてきた。
今回の構想は、学校給食の安全と効率を両立するための自動化技術の集約となる。
給食市場は堅調 経験と設備設計力が強み
中西製作所は、全国の給食センターや外食チェーン向けに過熱水蒸気調理機、ガス連続炊飯器、冷凍冷蔵庫などを供給している。府中市立学校給食センター(延床1万4305㎡)では、自社製の過熱水蒸気調理機や全自動炊飯ラインを納入し、設計から調達までを担当した。事実上、サブコンの役割も果たす総合厨房メーカーとして事業を拡大している。
社内には全国40名規模のレイアウト設計部があり、給食センター新設時には設計段階から関与する。省人化機器が求められる現場ニーズに対応する体制だ。
2019年3月期の売上高255億円は、2025年3月期に399億円へと伸長した。従業員数も476人から635人に増加し、案件受注の拡大が収益向上に寄与した。
学校給食向け市場は少子化による縮小傾向にあるが、同社はセンター統合や再編に対応する案件を継続的に確保している。
地方創生にも寄与 全国自治体と連携
同社は厨房機器事業に加え、企業版ふるさと納税を通じた地方創生支援にも取り組んでいる。2025年には群馬県みどり市、埼玉県ときがわ町、福岡県那珂川市、長崎県雲仙市など複数自治体が推進する子育て・定住促進施策に拠出した。子育て支援や教育環境整備に関連する事業を支援し、地域の持続性向上に資する動きをみせている。
同社は2022年、社員の子どもの学校給食費を会社が支給する制度を導入。少子化対策の一環として、従業員福祉と次世代育成を両立させる企業モデルを構築している。
地方との協働や制度導入を通じて、学校給食・教育分野への継続的貢献を図る姿勢が明確となっている。社会インフラとしての給食体制の維持に不可欠な要素とされる人材・設備両面での支援が特徴だ。
自動化と官民連携の拡大が焦点
今後は、PPP・PFI(官民連携)方式を用いた給食センター整備が増加する見通しで、同社のように設計と製造を一体で担う企業の役割が大きくなる。今回の「未来の給食センター」動画で示された構想は、こうした官民共同プロジェクトへの対応力を高める一環とも位置づけられる。
自動化、省人化、地域連携を組み合わせた運営モデルが今後の標準となるかが注目される。