株式会社三好ホールディングス(福岡市)は、不動産管理会社の松嵜産興株式会社(福岡市南区)の株式を取得し、三好不動産グループに加えたことが分かった。松嵜産興の新たな代表取締役社長には長谷武氏が就任した。管理戸数約1,200戸を抱える同社の参加により、グループの連結会社は8社体制となる。
今回のグループ化は、福岡市を中心に賃貸・売買・信託など不動産関連事業を幅広く展開する三好グループが、賃貸管理や資産運用分野の強化を狙ったものだ。地域密着型の不動産管理を行う松嵜産興のノウハウを取り込み、管理サービスの品質向上とエリア拡張を進める狙いがある。
管理戸数1,200戸規模 地域密着の松嵜産興を統合
松嵜産興は1973年創立の老舗で、福岡市南区を拠点に賃貸物件の管理や仲介事業を手がける。資本金は1,000万円、従業員は7名で、宅地建物取引業者免許は福岡県知事(14)第3315号。約1,200戸を管理しており、地元志向の細やかな運営で知られる。同社は長年にわたり、個人オーナーを中心とした物件管理を主軸に安定した事業基盤を維持してきたが、近年は管理業務の高度化や法令対応など中小事業者にとって負荷の大きい課題が浮上していた。三好グループの傘下に入ることで、システムや人材面での支援を受け、競争力の維持につなげる。
三好グループ8社体制に 不動産・信託・管理を一体化
今回の株式取得により、三好不動産グループの連結対象は8社となる。持株会社である株式会社三好ホールディングスのもと、賃貸仲介・管理を担う株式会社三好不動産、信託業務を行う三好スマイル信託株式会社、資産運用を担当するミヨシアセットマネジメント株式会社などが並ぶ。
他にも、三好エージェントトラスト株式会社や相続支援を手がける株式会社福岡相続サポートセンター、人材・業務支援にあたる株式会社FORWORKSを含み、松嵜産興の合流でグループの機能がより広範に整う形となった。グループでは業務連携を進め、管理から資産承継までの一連の不動産サービス強化に取り組む。
福岡市の不動産市場、管理統合の流れ加速
福岡市では人口流入を背景に賃貸住宅の供給が続き、管理戸数の増加とともに大手・中堅管理会社による統合が進んでいる。国土交通省のデータによると、九州地方における賃貸住宅管理業者登録の件数は年々増加しており、業界の再編傾向が強まっている。一方で、物件の老朽化や入居者ニーズの多様化により、運営コストの上昇も課題となっている。専門性を高めたグループ経営によって、管理効率や法令遵守体制を強化する動きが相次いでいる。今回の松嵜産興の統合も、その流れの一つといえる。
地域資産の継承と人材育成が課題に
地場中小業者の中には、創業者が高齢化するなかで後継者不足に直面する例が増えている。松嵜産興でも長年経営に携わってきた松嵜繁氏が会長に退き、後任に長谷武氏が就いた。グループ内部での人事登用により、経営の安定と事業継承を図る狙いがうかがえる。福岡市では近年、再開発や交通網整備を背景に賃貸・分譲住宅の新規供給が活発化しており、管理人材の確保と育成が業界全体の課題となっている。大型化する管理物件を支えるため、システム整備や人材教育への投資強化が求められている。
今回の再編により、三好グループは地域の中堅不動産管理会社を取り込む形で事業領域を広げた。不動産仲介や信託業務との横断的な連携を進めることで、物件オーナーへのサポート体制を強化し、安定した管理品質を維持する考えだ。業界関係者は「管理業務のIT化や法改正対応を単独で進めるのが難しくなるなか、グループ連携による経営効率化が進む」とみており、今後の地域不動産市場における中小企業の再編の行方が注目される。中長期的には、地域に根ざした企業間協働のあり方が主要なテーマとなるだろう。