ミツウロコグループの連結子会社である株式会社ミツウロコ(東京都千代田区)とミツウロコグリーンエネルギー株式会社(MGE)、株式会社ミツウロコヴェッセル(MV)は、太陽光発電を活用したオフサイトコーポレートPPAの取り組みを開始した。グループ会社が開発した発電所からの電力と環境価値を一体で調達し、ミツウロコが運営する複合商業施設「HAMABOWL EAS」(神奈川県横浜市)に供給する。
本事業は、MVが新規開発した太陽光発電所で発電される電力および環境価値を、MGEがフィジカルPPAの形式で「HAMABOWL EAS」に供給する枠組みだ。発電事業者と需要家の間に小売電気事業者を介在させる構造とし、このスキームを用いた再生可能エネルギー導入はグループとして初の取り組みとなる。
年間2,157t削減、グループScope2の約1割に相当
本事業による年間の温室効果ガス(GHG)排出削減量は約2,157t-CO2eqと推計されている。削減量は「HAMABOWL EAS」単体のGHG排出量の約56.50%、ミツウロコグループ全体のScope2 GHG排出量の約10.16%に相当する。Scope2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を指し、電力調達の見直しが削減効果に直結する領域だ。
ミツウロコグループは『Sustainability Report 2024』でScope2の排出削減をKPIに位置づけており、今回の削減推計値も同レポートの集計データに基づき算定した。施設単位とグループ単位の双方で削減効果を数値化することで、具体的な排出量管理と対策の進捗把握を可能にする。
「HAMABOWL EAS」は2009年の開業以来、同名称で運営してきたが、リノベーションを機にビル名称を「ハマボールビルディング」に変更する。設備改修と合わせてエネルギー調達スキームを見直すことで、建物の更新と脱炭素戦略を一体的に進める狙いもにじむ。
オフサイトコーポレートPPAは、需要家が発電事業者から小売電気事業者を介して長期間・固定価格で再生可能エネルギー由来の電力を調達する手法だ。今回の枠組みでは、商業施設の電力使用量を施設外で新たに開発した電源の発電分にひもづけ、電力調達と環境価値の取り扱いを同時に設計した。
発電・供給・需要をグループ内で分担、追加性を確保
本スキームでは、MVが新規開発した太陽光発電所の発電分を対象とし、MGEがフィジカルPPAを通じて電力および環境価値を商業施設に供給する。需要家はミツウロコが運営する「HAMABOWL EAS」であり、発電側・供給側・需要側の役割をグループ内で分担する構造をとる。
対象とするのは、追加性のある電力および環境価値だ。追加性とは、再生可能エネルギー電力や環境価値証書の購入が新たな再エネ設備の増設や投資を促す効果を持つことを意味する。既存の発電所由来の証書を購入するのではなく、新規開発の電源を組み込むことで、需要家の調達行動が設備投資につながる因果関係を明確にしている。
電源開発を担う主体と需要家への供給を担う主体を分けることで、需要家側は自社敷地内での太陽光パネル設置などに依存しない再エネ調達が可能になる。商業施設の運営は従来通りミツウロコが担い、電源開発と電力供給をグループ会社が担うことで、施設運営とエネルギー供給の役割を切り分けながら、グループ全体としての脱炭素戦略を構築する。
供給対象が商業施設であることから、テナント構成や営業時間の変化に応じて電力需要が大きく変動しやすい。この需要変動に対し、外部電源の発電分をひもづける設計を採ることで、施設側では電力調達の実務と排出量算定の運用が連動しやすくなり、供給スキームを日常の業務フローに組み込めるようにした。
今回の事業は、追加性のある電力と環境価値を組み合わせる設計を採り、電力の供給と環境価値の扱いを一体化するフィジカルPPAにより実施する。どのデータに基づき、どの範囲を施設側のScope2として取り込むかといった算定設計を伴う点が特徴で、電力調達契約とGHG算定のルールを一体で設計する枠組みとなる。
契約・請求・環境価値の帰属整理の面では、小売電気事業者を介する供給形態であること、電力と環境価値を一体で扱うことが、取引条件や環境報告書における記載内容と密接に結びつく。ミツウロコグループは、MVが電源を新規開発し、MGEが供給し、自らは需要家として施設を運営するという一連のプロセスをグループ内で完結させるモデルを示した。
企業のPPA導入加速と算定実務の高度化
企業の脱炭素対応では、電力の調達手段を通じてScope2の削減を積み上げる動きが広がっている。経団連のカーボンニュートラル行動計画に関する調査では、ビジョンを策定した業種が48業種で全体の76.2%となり、前年度の47業種から拡大した。業界横断で排出量の把握と削減目標の設定が進むなか、電力調達のあり方は企業戦略上の主要テーマになりつつある。
排出量データの整備も進展している。国立環境研究所は、日本の温室効果ガス排出量の1990~2023年度の確報値を公表しており、自治体でも報告制度の運用が広がる。北海道庁は地球温暖化防止対策条例に基づき、特定事業者の温室効果ガス排出量報告について、2020~2024年度実績の集計と2025年度の報告状況を公表した。こうした枠組みの整備により、企業は自社の排出量を把握し、説明可能性を高めることが求められており、調達した電力と環境価値をどう位置づけるかが運用設計の中核的な論点になっている。
他社の削減目標や実績開示も進む。佐川急便(SGホールディングスグループ)はScope1+2で2030年度に2013年比46.0%削減の目標を掲げ、2024年度実績として309,462t-CO2の排出量を公表した。商船三井グループは環境ビジョンで2030年までに累積270万t-CO2eの削減目標を示し、2019年比でScope1、2および一部Scope3の削減率も開示している。野村アセットマネジメントは2030年に全拠点のScope1+2を2017年比55%削減する目標を掲げ、温室効果ガス排出量の計測を軸にした運用方針を示した。
このように、削減目標や実績の開示が積み上がるにつれ、削減量の根拠や算定の整合性を重視する動きが強まっており、電力調達スキームの選択にも影響を与えている。単に再エネ由来電力や証書を購入するだけでなく、その調達が新たな設備投資につながるか、どの範囲の排出量にどのように反映されるかが、投資家や取引先からの評価にも直結しつつある。
この文脈で、ミツウロコのオフサイトコーポレートPPAは、電源開発をグループ内のMVが担い、供給をMGEが担う分担を明確にした点が特徴だ。再エネ導入を施設内の設備増設だけで完結させず、外部で開発した電源を活用する設計は、需要家の立地や建物条件に左右されにくい手段として整理されてきた。加えて、追加性を前面に打ち出すことで、既存電源由来の環境価値購入とは異なる説明軸を持たせ、電力と環境価値を一体で扱うフィジカルPPAの採用を通じて、算定実務と直結する構図をつくる。
商業施設はテナント構成や営業時間などにより電力需要が変動しやすく、需要パターンの変化が大きい。オフサイトでの調達は、需要家の設備投資と発電設備の所在を切り離し、供給側の開発計画と需要家側の使用実態を契約でつなぐ仕組みとなる。小売電気事業者を介する枠組みは、発電事業者と需要家の間に供給の実務主体を置く設計であり、電力と環境価値の受け渡しを同一の枠組みで組み立てることが、排出量算定と運用フローの整合性確保に直結する。
オフサイトPPAは長期間・固定価格で再エネ電力を調達する手法として、自前の電源開発を持たない需要家にも広がってきた。新規開発した発電所を対象とし、追加性を示す形は、電源の新設と需要家の調達をひもづける構造を明確にする。一方で、電力と環境価値を一体で扱うフィジカルPPAでは、どの単位で環境価値を配分し、排出量算定に反映するかが実務の中心となり、施設運営側のエネルギー管理と一体で設計される。
こうした枠組みは、同業他社の削減目標の提示や排出量データの精緻化と並行して進む。削減量の規模は業種や拠点数によって差が出るが、サティスファクトリーのCO2削減プロジェクトでは2025年度の年間CO2削減量が8,571tとされ、複数年にわたり5,000t超の水準を続けている。削減量の大小そのものより、削減の根拠と算定の筋道をどう示すかが企業間比較の場面で重要度を増しており、ミツウロコの取り組みは、電源開発を伴う追加性の提示、フィジカルPPAによる電力と環境価値の一体供給、施設単位とグループ単位の削減推計の公表を組み合わせ、算定実務との接点を強める方向性を打ち出した。
