Luminary ROLI(本社:イギリス・ロンドン)は21日、株式会社ヤマハミュージックジャパン(神奈川県横浜市)とのパートナーシップのもと、日本市場での展開を開始すると発表した。次世代楽器とAIを活用した音楽学習プラットフォームを国内で本格的に提供する。ヤマハの全国販売ネットワークを生かした店頭販売を軸に、オンライン販売も組み合わせる。体験展示と学習アプリを連動させ、国内での体験機会と学習導線の整備を進める。
ヤマハミュージックジャパンが全国の販売網を通じた店頭販売と展示運営を担い、ROLIは製品群と学習ツールを組み合わせ、一体的なユーザー体験の構築を図る。デジタル楽器とAIを組み合わせた音楽学習サービスを、日本で本格展開する動きとなる。
5月21日販売開始へ
ROLI製品は2026年5月21日から、ヤマハ直営店および全国のヤマハ特約店で取り扱いを始める予定だ。各店舗に体験展示を設け、来店者が操作性や機能を直接確かめられる環境を整える。東京・渋谷のYamaha Sound Crossing Shibuyaは展示専用拠点とし、発信拠点としての役割を持たせる。
同日には、渋谷のYamaha Sound Crossing Shibuyaで日本展開の披露イベントを開催し、メディア関係者やアーティスト、音楽業界関係者が参加した。ROLI製品とAI学習ツールのデモンストレーションに加え、日本の電子音楽シーンで活動するアーティストによるライブパフォーマンスも実施した。
提供する製品には、ライトアップキーで演奏や練習を支援するキーボード「ROLI Piano」、独自のキーウェーブ構造を採用する「Seaboard」、ハンドトラッキングデバイス「Airwave」などが含まれる。楽曲の練習から演奏技術の向上までを支える学習アプリ「ROLI Learn」と組み合わせ、初心者から経験者まで幅広い層の需要を取り込む構えだ。ROLIは従来のピアノ鍵盤にとらわれない演奏インターフェースの開発を進めてきた。音の高さや音色、強弱、ビブラートなどを指先の細かな動きで直感的にコントロールできる演奏体験を掲げ、MPE(MIDI Polyphonic Expression)と呼ぶ多次元的な入力・表現仕様の普及を主導している。近年はハンドトラッキング技術やAIを音楽学習に組み合わせる取り組みを強めている。
ROLIは現在の法人形態として2021年に設立され、「Free the Music(音楽を解放する)」をミッションに掲げる。MPE対応楽器の開発と標準化に力を入れており、ROLI Pianoシリーズは発光する鍵盤で次に押すキーを示すなど演奏ガイド機能を備える。Seaboardシリーズは連続したシリコン製のキーウェーブ構造により、押す・なでる・押し込む・前後にスライドさせるといった操作で多彩な表現を可能にする。Seaboard MやROLI Piano Mはマグネット連結で最大96鍵まで拡張できる構造とし、コンパクトさと拡張性を両立させている。
デジタル楽器市場では、体験型の売り場づくりが広がっている。実機に触れる機会の設計が購買や学習の導線を左右しやすくなっているなか、ROLIは店頭での「触れる」体験とアプリでの「学ぶ」体験を一体で設計し、ヤマハミュージックジャパンの店舗網を通じて展開する。視覚ガイド付きの演奏支援やハンドトラッキングなど、入力インターフェースの多様化が進む一方、ソフトウエア側の学習支援と機材側の操作体験をどこまで統合できるかが各社の競争要因になりつつある。
店頭体験を軸に展開
日本での取り扱いでは、ヤマハ直営店と全国の特約店による販売に加え、各店舗に試奏可能な展示コーナーを設置する。渋谷のYamaha Sound Crossing Shibuyaは販売を伴わない展示専用拠点として位置づけ、販売店舗と体験拠点を分けたオペレーションを敷く。販売チャネルは店頭を中心としつつ、ヤマハが運営するオンラインストアでの販売も組み合わせる。
運用面では、ROLIが販売スタッフへの研修や日本市場向けコンテンツの提供を担う。製品と学習ツールを組み合わせて提供する枠組みの下で、店頭スタッフによる説明力やデモ運用が体験の質を左右しやすく、研修プログラムは販売現場のオペレーション要件として組み込まれる。ROLIは手の動きを捉えて新たな演奏や操作を実現する「Airwave」を開発しており、空中でのジェスチャー操作を鍵盤入力と並ぶインターフェースとして位置づける。さらに、Airwaveに対話型AIを組み合わせた学習支援機能「AI Music Coach」(2026年2月公表)の開発を進めており、演奏された音に加え、指の動きやフォームを踏まえて練習方法を助言する仕組みを目指す。
ROLIは2025年11月、ハンドトラッキング技術を持つ英Ultraleapを買収した。Airwaveの製品化では3Dカメラを内蔵し、空中の手の動きを高精度に検出する構成を採用する。鍵盤やパッドに触れないジェスチャー操作を前提にした演奏体験を組み込むことで、既存のMPE対応楽器とは異なる表現の幅を打ち出す。今回の日本展開では、ヤマハミュージックジャパンが店頭側の流通と顧客接点を担い、ROLIが製品と学習ツール、スタッフ研修、コンテンツ提供を担当する分業体制を構築する。
AI音楽教育が競争軸
デジタル楽器と学習支援ソフトの結合が進み、競争軸は単体機材のスペックから「体験の設計」へ移行しつつある。ROLIはMPEに対応したSeaboardなど多次元入力を前提とする演奏系統と、ROLI Learnのような学習系統を組み合わせてきた。ここにAirwaveのハンドトラッキングと対話型AIを組み合わせるAI Music Coachが加わることで、入力データは音だけでなく手指の動きや姿勢にも広がり、フィードバック設計の自由度が増す。
日本市場では、店頭での体験展示とスタッフ研修を並行して整備することで、こうした体験設計を売り場レベルで再現するオペレーションを組み込む。ROLI製品の本格的な店頭販売が日本で世界初とされる点も、グローバル展開の順序として特徴的だ。デジタル楽器はオンライン購入との相性が良い半面、インターフェースの癖や学習の入り口は実機に触れて初めて理解される側面がある。ヤマハミュージックジャパンの直営店・特約店網と渋谷の展示拠点を組み合わせる構成は、都市部での情報発信拠点と全国の販売接点を連動させる狙いを持つ。
競合環境では、発光鍵盤による学習支援や可搬型コントローラーの拡張機構など、初心者の導入障壁を下げる設計が差別化要素となりやすい。ROLI PianoのライトアップキーやSeaboardのキーウェーブ構造、マグネット連結で最大96鍵まで拡張できる設計は、学習ガイドと演奏表現の拡張を同時に追求する設計思想と位置づけられる。ハンドトラッキング領域では、Ultraleapの技術を取り込んでAirwaveの製品化につなげた経緯があり、入力インターフェースを外部技術との連携で拡張する姿勢は、電子音楽シーンにおける表現拡張ニーズとも重なる。
事業運営面では、店頭での体験展示とスタッフ研修、学習コンテンツ供給を一体で展開する方針を示す。導入を検討する教室や専門店にとっては、店舗オペレーションとコンテンツ供給の整合が論点となり、ヤマハ直営店・特約店での取り扱いと展示拠点の運用、スタッフ向けトレーニングを前提に商談や導入計画を組み立てる必要が生じる。ROLIとヤマハミュージックジャパンは、日本国内での次世代楽器とAI学習サービスの提供を2026年5月21日から本格化させる。
