株式会社Meta Heroes(大阪市)は2025年11月22日、堺市役所前広場「Minaさかい」で開かれた体験型防災イベント「SAKAIソライロ防災フェス」に出展した。同社が開発した「防災メタバース」を一般公開し、約300人の親子連れなどが参加したことが分かった。ゲーム要素を取り入れた仮想体験を通じ、災害時の初動判断を学ぶ取り組みである。
同社は防災・教育の分野でテクノロジー活用を進めており、今回の出展はその一環である。子どもたちが災害状況を体験しながら避難経路を選ぶことで「行動としての防災教育」を実践的に促す狙いがある。堺市が進める地域防災啓発と企業の社会連携を組み合わせることで、行政主導では得にくい参加型の防灎意識醸成を狙ったとみられる。
仮想空間で避難訓練、300人超が参加
防災フェス当日は好天に恵まれ、会場全体がにぎわいを見せた。Meta Heroesの体験ブースでは、津波や火災といった想定災害をメタバース上で再現。参加者は3D空間を移動しながら、安全な経路や判断の手順を学んだ。特に子どもたちは、ゲーム感覚の操作に夢中になりながら、避難行動や初期対応を試みた。保護者からは「遊びながら学べるので現実でも役に立ちそうだ」との声が寄せられたという。仮想体験という形式が敷居を下げ、家族単位の参加を促した。
地域と企業連携による新しい防災の創出
同社は2021年に設立。大阪を拠点に、メタバースやAIを活用した教育・防災創生事業を展開している。運営するDX教育施設「Hero Egg」では、子どもから社会人までを対象にAI研修やリスキリング支援を実施しており、半年で1万5000人超が受講した実績を持つ。今回の堺での出展は、自治体が市民と企業を結ぶ協働防災の一事例となった。Meta Heroesはこれまで大阪・関西万博内で「防災万博」を主催し、全国153自治体・教育機関が後援を受けた。2日間で延べ1万4000人を超える来場者を集めた経緯がある。同社の蓄積した教育用XR技術は地域イベントへ応用・定着している。
テクノロジー活用で社会課題へ挑む
同社はSociety 5.0とSDGsの理念を掛け合わせた課題解決型のテクノロジー企業を目指している。AIやXRを用い自治体や企業の社会貢献活動を支援する全国展開可能な地域防災モデルを設計している。防災用メタバースは、時間や場所に制約されず誰でも避難訓練を実施できる仕組みとして注目を集めており、DX教育施設を活用した日常的訓練の定着を促している。
教育分野との融合が広まり将来への期待が高まる
堺での取り組みを契機に、教育現場との連携を強化する方針を示している。大阪芸術大学短期大学部の学生がHero Eggの仮想空間制作に携わり、教育機関と共同プログラムを進める企業研修や地方自治体の人材育成支援を通じて、地域のデジタル人材育成を加速させる考えだ。一方、防災メタバースの現実避難行動の再現検証を求める自治体教材の整合性や現地特性への対応といった課題も想定される。業界関係者の間では、自治体と民間の協働モデルが今後も注目を集めるとの見方が多い。