株式会社クボタ(大阪市浪速区)は2025年12月11日、同日開催の取締役会で自己株式を消却することを決定したと分かった。発行済み株式総数の約1.1%にあたる1,218万株を対象とし、消却日は12月26日を予定している。消却後の発行済み株式総数は約11億3,871万株となる。
同社は、株主還元策の一環として1株あたりの価値を高め、資本効率の改善を進める狙いを明確にした。クボタは農業機械や水インフラ機器などを手掛ける世界的メーカーで、持続的な成長と財務の健全化を両立させる方針を掲げている。今回の株式消却はその戦略の一環に位置づけられる。
発行済み株11億株超から1.1%を削減
消却対象となるのは同社普通株式1,218万株で、消却前の発行済み株式総数に対して約1.1%に相当する。消却後の総数は11億3,871万6,846株となる見通しである。2025年12月26日に実施する予定であり、同社は法定手続きに基づきこれを完了させるとしている。今回の株式消却に伴う特別な会計処理費用は発生しない見込みである。
株式の消却は、発行済み株数を減らすことで1株あたりの利益や純資産価値を高める効果がある。クボタはこれを通じ、株主価値の一層の向上を図る意向を示した。同社は近年、グローバル市場での競争環境が激化する中で、資本効率と財務健全性の両立を掲げて経営を進めている。自己株式の消却は、内部留保資金の最適化を進める施策の一つである。
東証プライム上場、時価総額2兆6千億円規模
松井証券のデータによると、クボタの2025年12月時点の時価総額は約2兆6,100億円で、発行済み株式数は約11億5千万株。株価は同月12日時点で2,270円台を推移していた。自己資本比率は41.2%、利益剰余金は1兆8,000億円超と安定した財務基盤を保持している。これにより、株式消却後も財務余力に十分な余裕があるとみられ、資本政策上のリスクは限定的とされる。金融機関関係者は「クボタは安定配当と自己株取得を両立させる企業の一つ」と評価している。
同時期には、ホシデンやミルボンなど上場企業でも相次いで自己株式の消却が決定された。12月第2週(8~12日)だけで十数社が自社株買いまたは消却を発表しており、資本政策の柔軟化が市場全体で進んでいる。製造業各社では、海外経済の減速や円安の長期化を見据え、資本コストを抑制し株主還元を強める動きが広がっている。資本市場では、自社株の消却を通じて企業が長期成長に向けた経営再配分を進めるケースも増えている。
創業130年超の製造業、日本企業の象徴的動きに
クボタは1890年創業の老舗で、農業機械、水環境、インフラ関連まで事業領域を広く持つ。国内では農業用トラクターや水道管分野で高いシェアを維持しており、海外展開も加速している。今回の株式消却は、成長投資と株主還元のバランスを取る同社の資本政策を象徴する施策である。アナリストの間では「グローバル展開を進める中での自己株消却は、資金効率向上策として理にかなう」との見方も出ている。今後は、こうした株主還元戦略が他の製造業大手にも波及するかが注目される。
持続的な成長と株主意識の両立が課題
クボタは長期ビジョン「GMB2030」を掲げ、農業・水・環境分野での持続可能な成長を目指している。利益成長とともに還元方針の明確化を進めてきたが、為替変動や原材料市況の影響は依然として経営上の不確定要因である。株主からは安定配当への信頼が厚い一方で、成長投資とのバランスをどう取るかが今後の焦点となる。総還元性向の持続的な引き上げや資本コストの低減など、実Effocal施策が次の課題となりそうだ。