株式会社コナミデジタルエンタテインメントは12月3日、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが主催する「PlayStation Partner Awards 2025 Japan Asia」で、『eFootball™』が「GRAND AWARD」、「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」と『SILENT HILL f』が「PARTNER AWARD」を受賞したと明らかにした。さらに『SILENT HILL f』は「USERS’ CHOICE AWARD」との二冠を達成した。シリーズ30周年を迎えた『eFootball™』が最高賞に輝き、コナミが持つ複数の主要IPが同時受賞する形となった。
同社によると、今回の表彰は2024年10月から2025年9月までの販売実績を基に選出されたもので、日本・アジア地域の開発タイトルが対象となった。複数の作品が同時に受賞したのは、グローバル市場における同社コンテンツの存在感を改めて示すものとなった。シリーズの持続的展開とプレーヤーコミュニティの厚い支持が大きく寄与したとみられる。
30周年迎えた『eFootball™』が最高賞
『eFootball™』は「GRAND AWARD」を獲得した。日本・アジア地域で開発されたタイトルのうち、期間中に特出した全世界売上高を達成した作品が対象となる。シリーズは初代『ウイニングイレブン』の登場以来、グローバルで定着しており、継続的なアップデートによって最新データやイベントを展開してきた。統括プロデューサー田谷淳一氏は「30周年を迎える節目にこの賞をいただけたことに感謝している」と述べ、今後もリアルなサッカー体験の追求を続ける姿勢を示した。
同賞では『eFootball™』のほか、中国HoYoverseの「ゼンレスゾーンゼロ」やカプコンの「モンスターハンターワイルズ」などが選出されており、日本・アジア発タイトルの競争力が拡大していることがうかがえる。
『メタルギア』と『サイレントヒル』が高評価
「PARTNER AWARD」を受賞した『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』は、2004年発売の原作をリメイクした作品だ。映像や音響を現行技術で刷新し、新世代のユーザーにも訴求した点が評価された。
同じく「PARTNER AWARD」と「USERS’ CHOICE AWARD」を同時受賞した『SILENT HILL f』は、日本を舞台とする新作ホラーとして注目された。4K描写による幻想的な世界観やサウンド演出が支持を集め、総ゲームプレイ時間上位タイトルの中からユーザー投票により選出された。シリーズ離れしていた層も呼び戻した形となった。
継続する表彰制度がアジア開発を後押し
「PlayStation Partner Awards」は1995年から継続するプログラムで、今年で31回目の開催となった。販売実績だけでなく、プレイステーション文化を支えた開発者やユーザーコミュニティへの敬意を込めた表彰として位置づけられている。
2025年は「PLAYSTATION INDIES AWARD」が新設され、独立系クリエイターの作品も顕彰対象に加わった。多様なジャンルで開発が進む中、特に日本・アジア地域のゲーム作品が国際的に存在感を増している。バンダイナムコエンターテインメントやNetEase Gamesなどの大手も多くのタイトルを受賞しており、地域全体としての創作力の厚みを印象づけた。
広がるゲーム産業の地域拡大
2020年代に入り、世界のオーディオビジュアル産業は急速に変化している。欧州などではアニメーションやゲーム関連スタジオ数、従業員数ともに増加が続いており、スペインでは2024年のビデオゲーム売上が前年に比べ3%増、eスポーツ収益も4,400万EURに達した。オンライン販売が実店舗の減少を補う形で拡大しており、デジタルプラットフォームの主戦場化が進む。
この流れは日本・アジアでも同様で、配信サービスやオンライン競技が市場をけん引している。『eFootball™』の世界販売や『SILENT HILL f』の投票型受賞は、その潮流の中に位置づけられる動きといえる。
関係者の声が示す期待
田谷氏は「長くプレイステーションで遊び続けてくださった皆さんに支えられた結果だ」と語り、プレーヤーコミュニティとの継続的な対話を強調した。業界関係者からも「複数の自社IPが同一年度に表彰されたことは、コナミの開発基盤の多様化を示す」との見方が出ている。
一方、ソニー・インタラクティブエンタテインメント側も、本賞が開発者のモチベーションと市場全体の活性化につながると評価している。独立系スタジオと大手メーカーが並び表彰される構図が定着すれば、裾野拡大に拍車がかかる可能性がある。
受賞を機に進む展開強化
受賞を契機に、コナミはサッカー、ステルスアクション、ホラーの3ジャンルでグローバル展開をさらに強化するとみられる。オンライン更新やマルチプラットフォーム化が進むなか、継続的なユーザー支持をいかに確保するかが課題となる。
ゲーム産業全体では、アジア地域の成長やデジタル販売モデルの転換が注目される。映像や音楽と同様、ゲームも国境を越えた流通が標準化しつつある。業界では、開発費の高騰や人材確保の難しさも顕在化しており、持続的な創作環境の整備が求められる。
多様なジャンルと技術が交差する現在、今回の表彰は国際市場における日本・アジア発タイトルの位置づけを測る一つの指標となった。持続的な成長を支える構造をどう築くかが今後の焦点となりそうだ。