ホームセンター大手のコメリ(新潟市)は2025年12月21日、栃木県矢板市の「コメリハード&グリーン矢板店」で、建設・工務業者向けの専門売場「PRO館」を開設することを明らかにした。既存店舗の一部を拡張して整備し、資材や建材、工具などの在庫を拡充する。早朝営業や修理、レンタルなどの機能も備え、地域のプロユーザーの利便性向上を図る。
同社によると、矢板店周辺では住宅や施設の建設工事が活発で、工務店や設備業者から専門商品を一括で調達したいという要望が高まっていた。コメリはこうした現場需要に対応するため、従来の一般消費者向け売場を一部改装し、仕入れから修理、工具レンタルに至るまでを一連でできる体制を整えた。地域密着型店から専門性を備えた複合型拠点への転換を進める判断といえる。
建材・工具など業者需要を狙う
今回のPRO館は、売り場面積約2,575㎡を活用して展開される。専門工具や電動機器、建築金物、作業衣料などの多品種を常時在庫し、現場で使う資材の「当日入手」を可能にする構成だ。開店時間も現場作業に合わせて平日午前7時からとし、朝の仕入れ需要への対応を重視する。消耗資材や電材をストックすることで、継続的な発注や取り置き依頼にも対応する。修理、工具レンタルといった各種サービスを導入し、現場稼働率を支える仕組みを整備した。これにより、コメリが強みとする調達ネットワークを生かし、資材供給とサービスの双方を地域単位で完結できるようにした。
全国1,200店超 成長の軸は専門業態
コメリは全国47都道府県に1,200店超を展開し、主力の「ハード&グリーン」業態を中心に地域密着型店舗を広げてきた。直近では建築・建設分野での需要増を見据え、プロ仕様の資材を扱う店舗形態を強化している。全国での店舗数は、2025年11月末時点で1,227店舗を運営しており、北は北海道から南は鹿児島まで展開網を持つ。今回の矢板店は、関東圏におけるプロ対応店舗拡充の一環であり、今後の店舗網再編にもつながるモデル店となる可能性がある。
建築現場の即応需要が拡大
建設分野では、住宅やインフラ更新などの中小工事が増え、資材供給のスピードと在庫力が重視されている。特に地方都市では、専門資材を扱う卸拠点が限られる中で、ホームセンターが即日納品や修理対応を担う例が増えている。矢板市は県内でも国道沿いに工場・物流施設の立地が進む地域であり、店舗が地域の施工業者の仕入れ拠点となることが期待される。業界関係者は「中小工務店が現場移動の途中で必要な資材を確保できるようになれば、生産性向上につながる」とみている。
地域サービスと専門機能を融合
コメリは従来から園芸・農業用品など生活密着型の品ぞろえで地域店を運営してきた。一方で、現場従業者向けの仕入れ需要に応じたサービスを拡大し、店舗の多機能化を進めている。矢板店のPRO館は、住宅建設からリフォーム、農業用設備まで幅広い利用に対応可能な業態転換の試みだ。同社は今後も顧客要望を反映し、在庫・修理・貸出などのサポート体制を充実させる方針を示している。こうした店舗形態が定着すれば、地方都市における施工支援型ホームセンターの普及が広がる可能性がある。需要変化に対応した店舗運営のモデルとして注目されそうだ。