ケイミュー株式会社(大阪市中央区)は、「施主が実際に住みたいと思う理想の外観」をテーマとした住宅外観デザインコンテスト「ソトカラデザインコンテスト2025」の受賞作品を決定・公表したことが明らかになった。受賞作品は同社の公式ウェブサイトで公開されている。
同社は住宅用外装材や屋根材などを手がける建材メーカーで、今回のコンテストを通じて一般施主と住宅設計の視点を結びつける狙いがある。審査は社内審査の後、ウェブ上の一般投票によって行われ、最終的にグランプリほか複数の賞が決定された。企画は同社の顧客接点拡大と外観デザインに関する市場動向の把握を目的とした取り組みの一環で位置づけられている。
全国から応募、2部門で計96作品を選定
「ソトカラデザインコンテスト2025」は、ケイミューの商品を使用した住宅を対象に実施された。対象期間は2023年4月から2025年7月までで、応募は全国のハウスメーカーや建築会社が参加した。審査は一次審査の後、同年12月に一般投票を経て結果が確定した。部門は「住みたい住宅部門」と「住みたい街並み部門」の2種類で、各部門ごとにグランプリ1件、金賞2件、銀賞2件、銅賞2件、そして「ケイミュー賞」86件が選出された。
グランプリは「住みたい住宅部門」で株式会社カワムラホーム、「住みたい街並み部門」でアーレックス株式会社が受賞した。金賞には岡田建設株式会社(Pacific Home)や泉北ホーム株式会社、ポラスガーデンヒルズ株式会社、株式会社マイホーム建設などが選ばれた。その他、オープンハウスディベロップメントやメルディア、大東建託、ケイアイスター不動産など、全国規模で事業を展開する企業も名を連ねた。
ケイミュー賞86件、地域性反映した多様な住宅提案
ケイミュー賞には全国各地の中小建築会社・設計事務所が多数選ばれた。アーキテックスやアーキテックプランニング、健康住宅、太陽住宅、トヨタウッドユーホーム、ファイブイズホームなど、地域ごとに特色を打ち出した設計事例が受賞している。対象作品は地域の気候や景観に調和するデザインが多く、外装材を生かした色彩や素材感の提案が評価されたという。中でも複数作品で入賞した谷川建設や九州八重洲は、地域連携型の住宅づくりを進めていることで知られる。
同社によると、コンテストの評価基準を「実際に住みたいと思える外観」に設定した理由は、外構や街区景観を含めた住宅全体の調和への関心が高まっているためだ。近年の住宅市場では、個性と標準化の両立を意識したデザイン提案が求められている。こうした評価軸を一般消費者との対話を通じて検証する動きも広がっている。
企業・設計事務所の参加が拡大、多様な担い手が協働
今回の応募企業は大手ハウスメーカーだけでなく、地域密着型のビルダーや建築士事務所も多数含まれた。イデアハウス、イワクラゴールデンホーム、SUBLIME HOME一級建築士事務所、松田恵蔵建築研究所など、建築のプロフェッショナルが多様なスタイルで参加している。こうした顔ぶれの広がりは、住宅デザイン分野でのBtoB連携が進む中、設計・建材・施工の連携強化を促す動きとみられる。
ケイミューは外装材メーカーである。製品の採用促進だけでなく、建築家や施工業者との共同企画や情報発信を積極的に進めている。今回のようなコンテストを通じ、デザイン性と実用性の両面から商品価値を検証する仕組みを磨く狙いがある。業界関係者の間では、施主目線での外観提案を促す試みとして注目されている。
背景に「実需発想」への回帰、住宅美観の新潮流
外観デザインに対する需要が再び高まりつつある背景には、個人住宅を中心としたリノベーション需要の拡大がある。特に2020年代に入り、断熱・防汚などの機能性を重視する傾向から、景観と調和する「見せる外壁」への志向が強まっている。ケイミューは主力の外装材ブランドを中心に、色彩や質感の提案幅を拡充してきた経緯があり、顧客層に向けたデザインインスピレーションの提供も進めている。
一方で、生活者の価値観が多様化し、住宅そのものに「街並みの一部」としての調和を求める声も増えている。この流れが、同社が設定した2部門構成に反映された形だ。特に「街並み部門」は、分譲地や共同開発街区の景観形成を重視する事例を対象にしており、各地域の住宅地計画や建材選定に示唆を与える。
同社は審査に一般投票を取り入れたことで、業者・設計者の発想と施主の感覚のずれを具体的に把握できた。これを踏まえ、投票データを商品開発や外装材カタログ作成に反映していく方針だ。応募期間をまたいで継続的に実施することで、全国の施工事例を横断的に比較できる設計情報の蓄積が進む見込みである。今回の動きは、建材メーカーが主導して住宅デザインの評価軸を開く事例であり、今後の住宅市場変化を見極めるうえでも注目される。