株式会社カドフジ(静岡県伊東市)は2026年1月24日、同市吉田に「わらび餅専門店 門藤(かどふじ)伊東店」を開業することを明らかにした。同社の主力商品である本わらび餅「脆味(ぜいみ)」を中心に、ドリンクなども展開し、観光地・伊東での和菓子需要を取り込む狙いだ。同社が静岡県内で本格的なわらび餅専門店を開くのは初めてで、伊豆観光地でのお土産消費の活性化にもつながるとみられる。
今回の出店は、観光・土産分野で高まる「和スイーツ」志向を踏まえた動きだ。全国的に抹茶やわらび餅など、伝統的な甘味を現代風に再構成する店舗が増加しており、特に伊豆・熱海などの観光地では地域素材を用いた高付加価値商品が注目を集めている。カドフジはそうした流れに対応し、地元客と観光客双方に訴求するブランド展開を強化する方針を示した。
本わらび餅「脆味」シリーズが看板商品
カドフジが販売する主力商品「脆味(ぜいみ)」は、古典『韓非子』に由来する「香美脆味(こうびぜいみ)」から名付けられた。香り高くとろけるような柔らかさを特徴とする本わらび餅で、三種のきな粉(深煎り、黒ゴマ、ふくゆたか)を使い味の変化を楽しめる。季節ごとの食べ方を提案しているのも特徴だ。春は花見菓子、夏はガラス器で涼味菓子、秋は抹茶と合わせ、冬は温かくして提供するなど、年間を通じて多様な楽しみ方を提示している。
観光土産と新たな甘味文化を融合
伊東市は首都圏からの観光客が多く、温泉街としての歴史も長い。地元では観光需要を背景に、菓子業界で地域ブランド化を志向する企業の動きが活発化している。カドフジもその一環として、伊豆エリアの地元菓子文化を観光客に発信しようとしている。店では看板商品のほか、新感覚の「わらび餅ドリンク『WARABI-TA』」を展開し、若年層や訪日外国人を含む幅広い層の関心を見込む。わらび餅をドリンクとして楽しむスタイルは全国的にも浸透しつつあり、地域観光の新たな飲食トレンドを生み出す可能性がある。
伊豆観光地で競争激化の兆し
伊豆・伊東地域では、地元食材を使ったスイーツや飲食店の新規出店が続いている。観光客の嗜好が多様化するなか、専門性の高いメニューや体験要素のある店舗が支持を集める傾向がある。一方で、季節変動や観光動線への店舗配置など、収益構造を左右する要因も多く、安定した集客が課題となる可能性もある。業界関係者の間では、カドフジの新店舗は伝統菓子の再評価を促す動きとみられており、地元食文化と観光ビジネスを結びつける事例として注目されている。今後は地域資源との連携や店舗展開の広がりが焦点となりそうだ。
地域経済にも広がる効果
カドフジは、今回の伊東店開設を通じて製造・販売体制を強化する方針で、地元雇用の創出にもつながる見込みだ。観光客が多いエリアに拠点を設けることで、地産素材を用いた商品開発や、地元農産物の活用機会を広げる考えも示している。同社の動きは、地域の伝統和菓子を観光資源として再構築する試みと位置づけられる。今後、他の温泉地や観光地においても、同様の取り組みが広がる可能性がある。