株式会社JIRAN JAPAN(東京都港区)は2025年12月6日、法人向けエンドポイントソリューション「EXOセキュリティ」の利用料金を2026年1月1日から改定すると発表した。ライセンスの最小単位を従来の50から5に見直すほか、料金体系を年額契約とオープンプライス方式に変更する。中小企業でも導入しやすい形への転換で、安定したセキュリティ提供を続ける狙いがある。
同社によると、改定の目的はサービス品質と支援体制の強化にある。情報管理人員を持たない企業の増加に対応し、利便性向上と運用の柔軟化を同時に進める。セキュリティ基盤の継続的な強化に加え、トライアル期間を従来の2週間から1カ月に延ばし、導入前に機能を十分試せるようにすることで、利用者の裾野を広げたい考えだ。
ライセンス単位追加で柔軟性拡大
今回の変更では、51ライセンス以上を1ライセンス単位で、5〜50ライセンスを5ライセンス単位で追加できる体系に変わる。基本契約は年額制となり、具体的な料金は個別対応とする。利用者が契約の柔軟性を確保しやすくする設計で、企業規模や運用状況に合わせた最適な導入が可能となる。
EXOセキュリティは、IT資産管理、アンチウイルス、情報漏洩防止を一体化したエンドポイント保護サービスである。導入や管理を容易にする機能があり、中小企業でも自社で運用できる点が特長とされる。競合する主要製品が多機能化・高価格化する中、必要十分な機能を手頃な構成で提供する姿勢を打ち出している。
中小企業への負担軽減策進む
日本では、全企業のうち約99%が中小事業者とされるが、専任IT人材を確保する余裕がない企業も少なくない。感染経路の多様化やランサムウェア被害の拡大を受け、業務端末の一元管理や外部デバイス制御への関心が高まっている。その現場事情を踏まえ、JIRAN JAPANは運用負荷を抑えつつ十分な防御実現を志向してきた。今回の料金改定は、同サービスが抱える導入規模の固定的制約を取り払う意味合いがある。グループ企業ではオンラインストレージ「DirectCloud」などクラウド系業務支援サービスを展開しており、EXOセキュリティもその生態系の一角を担う。導入単位が変わることで、他のジラングループ製品を利用する中小企業にも導入が広がる可能性がある。
JIRAN JAPAN戦略再構築
JIRAN JAPANは、韓国ジラングループが日本における事業統括を目的に2011年に設立した。グループは2004年に日本市場へ参入以来、情報セキュリティやオンラインストレージなど多様なソフトウェア事業を展開。現在は日本法人であるJSecurityやダイレクトクラウドを傘下に持ち、国内企業2,800社超が関連サービスを利用している。日本子会社群の連携を通じた中堅中小へのITセキュリティ普及が一段と進む見通しだ。
同社が2026年に実施する料金体系の刷新は、単なる価格調整にとどまらず、長期的な顧客維持とストック収益型サービスへの転換を意識した動きともみられる。ジラングループが掲げる「JAPAN TO GLOBAL」の方針に沿い、日本市場で得た知見を海外展開にも生かす構えだ。
利便性重視の製品再編が進む市場
エンドポイントセキュリティ分野は、ESET、トレンドマイクロ、ソフォスなどの海外勢が上位を占めており、クラウド対応、MDM(モバイル端末管理)機能の統合など、利便性を軸にした再編が進んでいる。近年はクラウドベースの管理機能や、パターンファイル更新を不要とする仕組みが一般的になりつつあり、中堅・中小向けの市場も拡大の兆しを見せている。
ITreviewの法人向けサービス評価では、EXOセキュリティが「簡易な管理」「費用対効果」「総合機能バランス」で支持を集めている。レビューでは「ウイルス対策以外にもUSB制御やWeb制限が可能」「クラウド管理でサーバ不要」などの意見が寄せられており、実装範囲とコストの均衡が強みとされる。大手製品が多機能化するなか、必要十分な機能に絞った設計が評価を受けている形だ。
運用サポート拡充が鍵
今回の体系変更で、従来型ライセンスを契約していた企業にとっては契約更新時の手続き変更が必要となる。オープンプライス化により契約ごとに条件が異なる可能性があり、移行段階の案内やサポート体制の整備が課題となる。特にセキュリティポリシーが厳しい業種では、運用継続に関する十分な説明が求められるだろう。同社は改定後も顧客サポートを強化し、ユーザーの業務環境に合わせた運用支援を行う方針だ。トライアル期間の延長で利用者の声を吸い上げ、改善サイクルを速める狙いもある。
専門家の間では、こうした柔軟な契約制度が中小企業の情報セキュリティ水準を底上げする契機になり得るとの見方が出ている。
セキュリティ文化の裾野広げる転換点
日本では依然として、コストや人材不足を理由に本格的なエンドポイント対策を後回しにする企業も多い。テレワーク定着で社外端末の管理難度が上がるなか、導入障壁を下げる動きは市場全体の安全性向上にも寄与する。EXOセキュリティの料金改定は、セキュリティを「一部の大企業の専有領域」から「広く業務インフラの一部」へと位置づけ直す流れの一端を担う可能性がある。同社の取り組みが、ユーザー企業の実務にどの程度浸透し、どれだけの継続率を獲得するかが今後の焦点となる。中小企業のセキュリティ対策が社会的課題として広がる中、使いやすい制度設計と確実なサポート提供が、次期競争力の鍵を握るだろう。