ゴーウェル株式会社(東京都中央区)はJTB株式会社(東京都品川区)と共同で「高度外国人財採用伴走RPO」を締結した。両社はこの新たな枠組みを通じ、日本企業における多国籍人財活躍のモデルを構築し、採用文化の転換を促す。年間数十名規模の採用支援を予定し、ゴーウェルが採用全般にわたり伴走する。
今回の連携は、JTBグループのグローバル戦略を人材面から支えるもので、ゴーウェルがRPO(Recruitment Process Outsourcing)の提供主体を担う。採用文化や制度の設計段階から関与し、同社の外国人財データベースや人材紹介実績を活用して多国籍組織づくりを後押しする。
採用活動を単なる人事施策ではなく、企業変革に直結する経営施策に位置づける狙いだ。
年間数十名規模の採用を伴走支援
提供するRPOでは、ゴーウェルがJTBグループに専任コンサルタントを配置し、通年で採用に伴走する。80カ国・12,000人超の外国人財データベースと10,000社以上の導入実績をもとに、採用計画の設計から候補者の母集団形成、人選までを一気通貫で実施するという。
新卒・中途の区別を問わず、将来の中核人材としてグローバル人財を採用する仕組みを設ける。
採用数は年間数十名規模が想定され、日本企業としては比較的規模の大きい国際採用となる。
採用面だけでなく、配置や組織文化への定着支援を含む広範な取り組みで、外資系企業主導だった多国籍採用運用を国内大手企業に導入する試みといえる。
多国籍人財の活躍進むJTBに人事変革の波
JTBグループではこれまでもタイ、韓国、インドネシア、中国、ネパール、ベトナム、マレーシア、ブラジルなど、多様な国籍の社員が各部署で活躍してきた。
今回の締結はこうした実績を基盤に、組織文化の再構築を目指すものだ。
人事制度や採用手法を刷新し、グローバル採用を通じて経営資源の多様化を進める。
ゴーウェルは2010年創業の通訳翻訳・語学教育事業者で、人材分野でもアジア圏へのネットワークを強みに持つ。海外拠点を含むグループ会社を通じて、東南アジア各国との接点を生かした採用支援を行ってきた。
両社の協働は、こうした既存事業資産をもとに「企業カルチャーと人事の融合」を描く挑戦でもある。
採用を経営課題に転換 日本的雇用の再定義
背景には、日本企業で進む労働人口減少とグローバル人材争奪の激化がある。
採用活動は人事部門の業務を超え、経営戦略上の課題としての性格を強めている。
ゴーウェルは「日本的雇用の再定義」を掲げ、同質性や年功序列に依存しない多様性重視の組織づくりを支援してきた。今回の取り組みもその延長線上にある。
多国籍人財が組織内部で力を発揮するためには、制度よりも文化面の受容が鍵となる。
採用後の配置や人事評価のあり方も含めたトータルな変革が求められるため、RPO導入は短期支援ではなく、年間単位で継続的に行う点が特徴だ。
この「伴走型」支援は、雇用文化変革を構造的に支える方式といえる。
経営陣コメントにみる組織変革の意図
JTBの大八木勢一常務執行役員CHROは、「グローバル採用は単に外国籍人財を受け入れることではなく、新たな交流を創造できる人を採用・育成すること」と語る。
多様性を企業文化の中心価値に据える設計そのものが問われるとし、ゴーウェルとの協働は企業再構築の挑戦と位置づけた。
また、ゴーウェルの松田秀和社長は、JTBのように人材と経営戦略を一体で進める動きが「日本全体に大きな意味をもつ」と述べ、採用を文化づくりの起点と捉えていることを強調した。
企業単位の取り組みが社会全体のアップデートにつながるとの認識を示し、伴走支援を通じて多様性が組織の力となる社会をめざす考えを示した。
ゴーウェルは今回の枠組みを他企業にも広げ、「採用を起点とした組織変革」を加速する方針を掲げている。多国籍人財が企業文化の中で自然に力を発揮し、グローバル採用が日本企業の標準形となる環境を支援する考えだ。既存の雇用慣習を見直す動きと連動し、持続可能な成長を実現する企業の増加が注目される。
今回の協働は、日本企業の採用慣行に変化の兆しをもたらす取り組みであり、多様性を経営資源とする潮流の一環と位置づけられる。