株式会社ファミリーマート(東京都港区)は2025年12月9日、パティシエのピエール・エルメ氏の監修によるスイーツシリーズ「ピエール・エルメ アンソロジー」第3弾を全国の約1万6400店で発売すると明らかにした。これまでのシリーズに加え、今回はブランド初となるアイスを含む全3商品を投入する。ホリデー商戦期に合わせた展開で、冬のスイーツ需要を取り込む狙いである。
ファミリーマートが継続して掲げる「『あなた』のうれしい」という取り組みの一環で、今回の監修はPH PARIS JAPON(東京都港区)が手掛けるライセンスブランド「ピエール・エルメ アンソロジー」を通じて行われる。同社はパティスリー界の第一人者であるエルメ氏のブランドを日本国内で展開しており、両社の協働は今回で3度目となる。これまで販売された第1弾・第2弾がいずれも好調だったことから、年末の需要期に合わせてラインアップを広げた。
シュークリームやショコラアイスなど3品を順次展開
新商品は「シュークリーム(バニラ)」「チョコレートバニラケーキ」「ザ・ショコラ」の3種類。12月9日にシュークリームが、16日にはケーキとアイスが発売される予定だ。シュークリームはクッキー生地をのせて焼き上げ、バニラカスタードとホイップクリームを組み合わせた。チョコレートバニラケーキは2種類のクリームをチョコレート生地でサンドし、ホイップで仕上げた。シリーズ初登場のアイス「ザ・ショコラ」は、ココアクルトンを混ぜ込み、天面にもチョココーティングとともにトッピングを施した構成。異なる食感を重ねることで、香りと濃厚さを両立させているという。いずれの製品も全国発売だが、一部地域では価格などが異なる可能性がある。
クリスマスケーキでもブランド共同 主力はチョコ&チェリー
同時期にファミリーマートが展開するクリスマスケーキでも、ピエール・エルメ アンソロジー監修スイーツを採用した。「ガトー・ド・ノエル(チョコレート&チェリー)」は直径約12センチの2〜3人向けで、アルザス地方の伝統的な菓子をもとに、濃厚なチョコレート生地とバニラ香るクリーム、チェリーで仕上げた構成となっている。全国で予約を受け付けており、数量限定での販売となる。ファミリーマートでは他にも国内外ブランド監修のケーキを複数そろえており、年末商戦では「ご褒美需要」と個人消費の高まりを意識した多層展開を図っている。
コンビニ各社で進むスイーツ差別化 専門ブランドとの提携拡大
コンビニエンスストア市場では、オリジナルスイーツ商品の競争が激しい。業界全体でプレミアム志向の傾向が強まり、有名シェフやパティスリーブランドとのコラボレーションが増加している。ファミリーマートは「ファミマルSweets」ブランドの下で高付加価値型商品を展開し、品質面での訴求を強化してきた。2025年には「あなたのうれしい」をテーマに、健康志向や特別感を訴えるブランド文脈を整理。これにより、若年層からシニア層まで幅広い購買層を取り込む方針を掲げている。
冬季需要に照準 店舗網強化で供給力アップへ
今回の監修シリーズ第3弾は、クリスマスから年末年始にかけた期間に焦点を当てている。ファミリーマートは全国約1万6400店の店舗網を活用し、アイス・スイーツ市場全体の需要拡大を取り込む。冬季にはチョコレート系商品の伸びが顕著であると分析されており、エルメ氏監修による「ショコラ」を加えることで、購買単価とブランド価値の双方を高める狙いとみられる。
関係者によると、ファミリーマートとPH PARIS JAPONの協業は長期的なブランド構築の一環であり、単なる限定販売に留まらない共同開発体制の深化を志向している。今後の新商品や季節イベントでの展開拡大も検討しているという。
専門店連携モデル定着への試金石
業界関係者の間では、今回のシリーズを通じて「コンビニが専門店ブランドと継続的に取り組むモデル」がどこまで定着するかが注目されている。共同監修による高級スイーツを量販チャネルに流通させるには、製造・物流両面の調整が欠かせない。これまで広がりを見せてきた「ご褒美スイーツ」需要が今後も継続するかどうか、年末商戦を経た販売傾向がその試金石となる見込みだ。
同社は「地域の生活拠点」を掲げる企業方針のもと、フランチャイズ加盟店と連携した商品力の強化を進めている。コンビニ業界全体で人材やコスト負担の課題が高まる中、ブランド価値を高めつつ安定的な供給を持続できる体制の構築が求められている。季節限定商品戦略によりブランドの認知度を高め、持続可能な形に転換することが次の焦点になるとみられる。