大日本印刷(DNP)は2024年11月、機関投資家とアナリスト向けに2026年3月期第2四半期決算説明会を開いた。印刷・情報事業を中心とする同社が、収益構造の転換と新事業分野の強化をテーマに掲げた説明会を開催するのは初めてである。ポスト印刷時代の成長戦略を具体化する場となった。
説明会開催の背景には、印刷関連需要の縮小やデジタル化による市場変化がある。大日本印刷はこれまで出版印刷や包装材などで国内トップ級のシェアを持つが、情報コミュニケーション分野やエレクトロニクス事業の成長を通じて収益の多角化を急いでいる。説明会では、これらの成長分野が連結業績の中核に移行している現状や、今後の再投資方針を示した。
主力印刷の安定維持、情報事業が成長牽引
同社の第2四半期累計業績は、主軸の生活・産業資材事業で堅調な需要を確保しつつ、情報コミュニケーション事業が成長を支えた。特にディスプレイ関連素材やデータ管理サービスの収益貢献が顕著で、前年同期比で営業利益が増加した。紙媒体出力の落ち込みを補う形で、デジタル分野での顧客基盤拡大が進んでいる。会場では、研究開発型の企業体質を生かし、「社会課題に対応したBtoBソリューションの拡充を進める」と強調した。
DX支援と半導体関連を強化 海外展開も加速
大日本印刷は今期、ICT・デジタル領域での新価値創出に力を入れている。半導体製造用部材や高機能フィルムなど成長性の高い製品群に投資を集中させるとともに、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業を国内外で拡張している。
海外では北米・アジアでの電子部材生産体制を強化し、中期的には輸出依存度の低減を目指す。資本効率を重視した経営指標の改善も進め、安定的な利益体質の構築を図っている。
国内印刷業界では需要構造の変化が続いており、従来の出版・商業印刷中心のビジネスモデルから脱却する動きが広がっている。大日本印刷と凸版印刷の2社が先行してエレクトロニクス事業や生活資材分野で投資を進める一方、業界関係者の間では、デジタル技術との融合が進むことで、「印刷産業」から「情報産業」への転換が加速するとみられている。DNPの説明会は、こうした流れの中で同社の立ち位置を改めて示すものとなった。
投資家関心は収益性改善と成長持続性
決算説明会では、経営の効率化や株主還元方針に関する質疑も相次いだ。特に、資本コストを意識した経営資源配分や新規成長事業への再投資方針に対し、投資家の関心が集まった。一方で、主力の印刷分野の長期縮小や、海外展開に伴うコスト増の影響も課題として指摘された。市場では、同社がどの程度のスピードで新規事業比率を高められるかが焦点となっており、今後の説明と実績が注目される。