第一三共ヘルスケア(東京都中央区)は2024年8月、しみケアブランド「トランシーノ」の薬用スキンケアシリーズの主力商品を刷新すると発表した。同社は「トランシーノ薬用ブライトニングフェイシャルマスク」を2026年2月13日にリニューアル発売する予定で、紫外線によるダメージ肌への対応を強化した処方を採用する。医薬部外品として販売し、美白市場でのシェア拡大を目指す。
リニューアルの狙いは、日常的に増加した紫外線ダメージへの対応と利用体験の向上にある。第一三共ヘルスケアは、親会社である第一三共が創製した有効成分「トラネキサム酸」をはじめとする「Wの有効成分」を軸に、肌の炎症抑制とシミ予防を両立する製剤設計を採用した。新たに美容液の浸透性を高める技術を導入し、シート形状も改良することで密着性と使いやすさを高めたという。
美容液浸透と肌密着性を改良
今回のマスクは、従来品の特長を維持しつつ紫外線によって低下するバリア機能と水分蒸散の抑制に焦点を当てた。配合される「Wの有効成分」は、トラネキサム酸とグリチルリチン酸2Kで、メラニン生成の抑制と炎症予防の双方に作用するとされる。さらに新たに配合した「キメの乱れ着目成分」や「アクアベール成分」によって、透明感のある仕上がりを目指した。美容液には、保湿成分としてシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールを追加し、角質層までの浸透をサポートする構造を導入した。これらの処方強化に加え、シート形状の見直しにより剥がれにくさを改善し、短時間で肌なじみを感じられる仕様とした。製品は「10分間貼るだけで明るい肌に導く」とし、集中ケアから日常ケアまで対応する位置づけとして投入する。
シートマスク市場拡大が追い風
第一三共ヘルスケアによると、シートマスクは20~50代女性の約半数が自ら購入して使用している。美容液タイプに加え、化粧水の延長として日常的に使えるタイプの品ぞろえが増加しており、用途の広がりが市場を押し上げている。富士経済の調査では、シートマスク市場は2023年から2024年にかけて約1.5倍に拡大し、今後も成長が見込まれる。同社の「トランシーノ」シリーズのマスクは、紫外線対策を重視するユーザー層から支持を集め、夏季や旅行先での定番品となっている。今回の刷新は、こうした使用場面での満足度向上を図る狙いがあるとみられる。
ブランド展開と歩み
トランシーノは、第一三共が創製したトラネキサム酸を主成分とするOTC医薬品として2007年に登場した。肝斑への効果が認められた国内唯一のOTC医薬品として知られ、発売当初から「内外両面のしみケア」を打ち出してきた。現在では内服薬と薬用スキンケアシリーズの両軸で展開し、しみや透明感の悩みに対し総合的なケアを提供するブランドとして位置づけている。第一三共ヘルスケアは、OTC医薬品を中心にスキンケアやオーラルケアなどの機能性商品も展開。近年は「セルフケアの推進」を企業理念に掲げ、生活者が自ら健康を守る仕組みづくりに注力している。今回のリニューアルもその理念と連動する施策の一環といえる。
市場拡大と持続可能性への課題
シートマスクを含むスキンケア市場の拡大は、消費者の肌意識の高まりだけでなく、在宅時間の増加や日常的なセルフケア文化の定着に支えられている。化粧品企業各社は、短時間でも高い効果を得られる製品や、環境負荷の低い素材を組み合わせた新製品を相次いで検討している。今後は美容効果に加え、環境・安全性を両立した商品開発の動向が注目されるだろう。業界関係者の間では、今回の第一三共ヘルスケアの取り組みが、医薬部外品市場における品質基準の底上げにつながる可能性があるとの見方もある。今後は美容効果に加え、環境・安全性を両立した商品開発の動向が注目されるだろう。