株式会社ブロッコリー(東京都練馬区)は2025年9月18日に、完全新作アクションアドベンチャーゲーム「エトランジュ オーヴァーロード」を2026年3月26日に発売すると発表した。原作は喜多山浪漫氏によるWeb小説である。プロデューサーには新川宗平氏(合同会社スーパーニッチ)、キャラクターデザインは大塚真一郎氏が担当する。Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5向けに展開する。ブロッコリーのオリジナルタイトルとしては約5年ぶりの大型新作となる。
同社は近年、自社開発原作の強化を掲げており、今回の作品はその一環である。ゲーム開発はジェムドロップが担当し、ストーリー演出にはミュージカル要素など新たな手法を導入する。人気VTuberグループ「ホロライブ」から角巻わため氏と白上フブキ氏が声優として出演し、同社作品の新たな層への浸透を狙う。東京ゲームショウ2025への出展も決まり、新作の仕上がりに注目が集まっている。
悪役令嬢が主人公の新作に豪華制作陣
「エトランジュ オーヴァーロード」は、罪に問われ地獄に堕ちた公爵令嬢エトランジュ・フォン・ローゼンブルクが再び成り上がりを目指す物語だ。地獄の攻略をテーマに、バトルステージのSUSHIレーンなど独自の仕組みを導入したアクションアドベンチャーとなる。本作は「悪役令嬢」ジャンルにミュージカル演出を掛け合わせた独特の構成を採用しており、フルボイスの物語パートを実装する。角巻わため氏の歌唱、Elements Gardenの上松範康氏作曲による主題歌が用意され、エンターテインメント性を前面に押し出す作品構成とした。主要キャラクターには、水橋かおり氏が主人公エトランジュ役を務めるほか、新井良平氏、稲田徹氏、宇田川ももか氏ら実力派声優陣を起用。幅広い演技表現を通じて、ストーリー性とバトルの両立を図る狙いだ。
開発・原作・音楽が連携し海外展開も視野
作品制作には、大塚真一郎氏がキャラクターデザインとして参加し、視覚面の完成度を高めた。新川宗平氏はこれまで多くの女性向け・アニメ系ゲームの脚本を手がけており、今回もシナリオ監修とプロデュースを兼ねる。開発を担当するジェムドロップは、アクションと演出に強みを持つ独立系スタジオで、ブロッコリーの外部協力体制を象徴する布陣となった。原作小説はWeb連載から人気を博し、現在はKADOKAWA『電撃マオウ』誌上でもコミカライズ版が連載中。物語の世界観が漫画・小説・ゲームの三媒体にまたがる形となり、相互展開によるファン層拡大が見込まれる。発表にあたり、白上フブキ氏は「自分にとって貴重な声優の機会で、精いっぱい演じた」と述べており、IP横断型の制作手法に関係者の期待も高い。
東京ゲームショウ出展でマルチプレイ体験も
本作は2025年9月開催の東京ゲームショウ2025ハピネットブース(07-N12)で初出展される。来場者はシングルプレイとマルチプレイの両方を試遊でき、開発プロデューサーの新川氏によるステージ企画も予定されている。試遊者には角巻わため氏コラボデザインの特製ステッカーが配布されるなど、展示型プロモーションを強化する方針だ。ゲームは1人プレイを基本としつつ、最大4人までのマルチプレイに対応する。キャラクターやステージのカスタマイズ要素を多く盛り込み、個人プレイと協力プレイの両面を楽しめる仕組みとする。ブロッコリーは「マルチ要素を通じてファン同士が作品世界を共有できる」と説明している。
映像と音楽が融合するミュージカル形式
特徴のひとつは、物語に合わせて歌唱シーンが挿入される「ミュージカルアクション」形式だ。各キャラクターには専用曲が設定され、戦闘演出と連動して展開する。こうした形式はアニメ作品では多いが、家庭用アクションゲームでの採用は珍しい。関係者によると、声優によるフルボイス収録とライブ演奏音源の組み合わせを試みた点が制作の挑戦となった。音楽制作を担当するElements Gardenの上松範康氏は、多くの音楽ゲームやアニメで知られる作曲家で、主題歌を通じて作品の統一感を狙う。角巻わため氏の歌唱参加はホロライブ所属タレントによる音楽分野の拡張とも重なり、企業間タイアップの新たなモデルになる可能性がある。
また、物語の根幹には『誤って罪に問われた悪役令嬢の再生劇』という人間ドラマが据えられており、地獄を舞台に社会的テーマを重ねる構成もみられる。物語性と娯楽性を兼ね備えた作品として、ブロッコリーの今後のブランド方針を示す一作となる見通しだ。
女性向けヒット経験を生かし独自IPを拡大
ブロッコリーは『うたの☆プリンスさまっ♪』など女性向けコンテンツで知られ、国内外に根強いファン層を持つ。同シリーズが長期成熟期に入る中で、オリジナル作品を再び立ち上げる動きは事業の多角化に向けた試みだ。業界内では、VTuberやアニメ系タレントをキャスティングする動きが広がっており、プロモーションとファンコミュニティの両面で効果を持つとされる。本作でも人気タレントを軸とした情報発信を計画しており、SNSを通じた動画展開などが視野に入る。さらに、家庭用ゲーム市場では新規IPの定着が難しく、開発・広報コストの統合的管理が課題となる。ブロッコリーとしても、過去のキャラクターIP事業で得たデジタル販売ノウハウを活用し、長期シリーズ化の可能性を探る方針だ。
声優コメントで発売期待が高まる
主人公エトランジュ役の水橋かおり氏は「地獄に堕ちても前向きに生きる彼女の姿を、動く映像で見るのが楽しみだ」とコメント。角巻わため氏は「初めての収録で緊張したが、現場の温かさに助けられた」と語る。アリア役の白上フブキ氏も「自分の声でキャラクターを作る経験は貴重で全力で臨んだ」と話す。こうした出演者の発言はファンの間で注目を集め、発表当日には公式SNSの関連投稿が拡散した。オンラインコミュニティを中心に作品の知名度が急速に広がっている。
試遊と連載展開進行でIP拡張に期待
作品は現在開発中で、発売まで約半年を残している。体験版を用いた試遊イベントやメディア連載との連動を段階的に進める予定だ。ブロッコリーは、アニメ・音楽・ゲームを横断する総合エンタメIPの形成を掲げ、今後も外部クリエイターとの協働を進める方針だ。豊富なメディア展開を背景に、同作が中核タイトルへ育つかどうかが注目される。ゲーム市場では、既存シリーズに依存しない新IP開発の重要性が一層高まっており、同社の戦略転換の象徴となる可能性がある。今後は発売後の反応や海外市場での評価が焦点となりそうだ。