ブックオフグループホールディングス株式会社(神奈川県相模原市)の子会社であるブックオフコーポレーション株式会社(神奈川県相模原市)は、2025年12月10日に北海道札幌市西区琴似2条で新店舗「BOOKOFF シーナシーナ琴似店」を開業することを明らかにした。既存店舗「BOOKOFF 札幌琴似店」閉店後の再出店となり、売場面積を約2倍に拡大する。
ブックオフが同地で新店舗を展開するのは、琴似エリアでの利用者が多くリユース需要が堅調なため。店舗規模を従来の約140坪から約280坪に拡張し、アニメグッズやホビー、トレーディングカードなど若年層や家族層の利用が見込まれる分野に注力する。地域密着型の旗艦店として、再び周辺商圏の集客力を高める狙いがある。
札幌・琴似に新拠点 280坪で再始動
新店舗「BOOKOFF シーナシーナ琴似店」は、JR琴似駅近くの商業施設「シーナシーナ」内に位置する。営業時間は10時から21時までで、取扱商品は本、CD、DVD、ゲームに加え、スマートフォンやタブレット、デジタル家電などへも拡大する。トレーディングカード専用の対戦スペース(53席)を完備し、愛好家の交流拠点としての利用も想定される。
一方で、開業初日から3日間は来店者への記念品配布を予定しており、開業告知を通じて地域住民への認知度向上を図る。琴似エリアで20年にわたり運営してきた前店舗を引き継ぎ、規模拡大と商品多様化により持続的な再出発を目指す。
全国800店舗超、ブックオフの事業拡大戦略
ブックオフグループは1990年に神奈川県の小規模店から事業を開始し、現在では国内外で約800店舗を展開している。年間利用者数は約8,800万人、年間売買点数は6億8千万点を上回る。国内主要都市のみならず、百貨店や高級住宅地への出店を進める「プレミアムサービス事業」も拡大中だ。海外ではアメリカ、マレーシア、カザフスタンへも進出しており、多様なリユース市場で競争力を高めている。
同社は「リユースのリーディングカンパニー」として、循環型経済に貢献する企業モデルの確立を掲げる。出店戦略の軸は、地域ごとの需要特性と店舗規模の最適化にある。琴似店もその一環と位置づけられ、都市生活者とホビーユーザー両方に対応する店舗設計となっている。
再出店の背景にリユース消費の拡大
琴似地区の旧店舗は2025年11月に閉店したが、閉店後もリユース品の買取やカード販売を求める声が多く寄せられたという。ブックオフは、利用者の動線や購買行動を再分析し、同一エリア内での再展開を決めた。売場拡張により在庫点数を倍増し、商品サイクルを高速化することで利便性を高める狙いだ。
札幌市内では近年、再利用・持続可能性を意識する生活者が増加している。環境配慮型の取引市場が広がる中で、リユース産業は家庭から企業まで多面的に浸透している。ブックオフは、地域連携による循環型社会への寄与を企業理念の中心に据え、店舗網の整備を進めている。
同社はまた、業界全体で進展するデジタル取引や越境販売に対応するため、オンライン事業やアプリ連携も強化している。実店舗はそのリアル拠点として位置づけられ、買取・販売・体験を一体化させるプラットフォーム化が進む。琴似店の開業は、その実地展開を担う先行モデルともいえる。
グループのサステナビリティ方針と地域連携
ブックオフグループホールディングスは「事業活動を通じた社会貢献」と「従業員の物心両面の幸福追求」を経営理念に掲げる。環境と経済の両立を目指して毎年リユース実績を公表し、リサイクル啓発イベントなどにも参画してきた。近年は、地域の学校や自治体と連携した古本寄贈事業や、子ども向け体験イベントを通して、モノを循環させる価値を発信している。
札幌市でも、リユース品販売を通じて地域の資源循環を支える事業者として定着しており、今後は家庭内で眠る家電・玩具の再利用ルート拡大も検討されている。新店舗はその実証拠点の役割も担うとみられる。
トレカ市場の成長が後押し
国内ではトレーディングカードの取引市場が拡大を続けており、専門店やカード大会のニーズが高まっている。ブックオフもこの潮流を受け、全国の主要店でホビーやトレカ売場を増床してきた。琴似店では新設した対戦スペースを活用し、カードゲーム愛好者の定期的なイベント開催を見込む。
業界関係者は、カードやアニメ商品に特化した売場を強化する動きがリユース業界全体で加速していると指摘する。特に北海道は観光客の流入も多く、リユース店舗が地域交流の場として機能する可能性がある。ブックオフは、再利用と娯楽を融合させた新たな商業モデルの提示を模索する姿勢を見せている。
今後の出店計画と課題
ブックオフは2025年に入ってから全国で十数店舗の新設・改装を進めており、琴似店もその一環に位置づけられる。同社は地域性に合わせた商品構成や規模を検討しながら、主要都市圏への出店バランスを整えている。直近では、京都太秦店や広島段原店など、西日本エリアでの大型リニューアルも発表された。
今後の課題は、オンライン取引の拡大と来店体験の差別化だ。業界全体でネット買取が普及する一方で、実店舗は地域コミュニティとの結節点としての役割が求められている。店舗ごとの独自企画や交流イベントを継続できるかが焦点となるだろう。
リユース市場の拡大と環境意識の高まりを背景に、再生型小売の重要性は増している。琴似店の開業が、消費と循環を両立する地域モデルとなるか注目される。