株式会社ビームス(東京都渋谷区)は、大阪・心斎橋の南船場にメンズカジュアルレーベル〈BEAMS PLUS〉の単独店「ビームス プラス 大阪」を開設した。「永年着られる飽きのこない本物の男服」を掲げる同レーベルの世界観を体現し、西日本で唯一の旗艦拠点として運営する方針だ。店舗では同レーベルのオリジナル商品をビームス全店舗の中でも最大規模で取り揃える。
新店舗は、ビームスにとって1999年に初の〈BEAMS PLUS〉単独店を出店した思い入れのある地での再展開となる。原宿と丸の内に次ぐ国内3店舗目として位置づけ、ブランドの国内営業基盤を強化するねらいがある。心斎橋を再び拠点とするのは、関西圏で長年育まれてきた顧客層との結節を図るためだ。
国内3店舗目の旗艦を大阪に配置
店舗は大阪市中央区南船場4丁目に構え、面積を生かしてオリジナルアイテムのほか国内外ブランドとの協働製品を取り揃える。
2024年には台湾とロサンゼルス、25年にはニューヨークでポップアップを開くなど海外展開を進めていた〈BEAMS PLUS〉にとって、恒久的な関西拠点の再設置は戦略的な意味を持つ。
店頭では米国ブランド「JOHN GLUCKOW(ジョン グラッコウ)」との限定商品などが展開される。
内装はブランド創設期に着想を得たアメリカ東海岸ロウアー・イースト・サイドの建物をモチーフに、煉瓦壁や木材を多用。過去の洋服タグを再構成したウィンドウサインを掲げ、来店者がソファでスタッフとの対話を楽しめる動線を整えた。
営業時間は平日12時~20時、土日祝は11時~20時で、不定休運営となる。
関西で培った顧客基盤を軸に再成長
〈BEAMS PLUS〉は1999年の大阪・心斎橋店を機にスタートし、2003年まで4年間営業していた。
その後は「ビームス 神戸」など関西の店舗を舞台に、受注会「BEAMS PLUS WEST」や音声企画「プラジオ」の公開収録などを重ねてきた。新店舗開設はそうした顧客との長期的な関係構築が背景にある。
ビームスは国内約175拠点を展開しており、心斎橋の旗艦化で近畿の販売網を補強する狙いもみられる。
溝端秀基ディレクターは「大阪はレーベルの原点であり、単なる売り場ではなくブランドの現在を表現する場としたい」とコメント。顧客とスタッフが交流する場を通じてコミュニティを再び育てたい意向を示した。
ビームスの多角展開と外部環境
ビームスは1976年創業のセレクトショップ運営企業で、ファッション・雑貨・アートなどを含む多分野型店舗を日本とアジアで約175店展開している。コラボレーションを核にした商品開発で知られ、企業や自治体との協働経験も豊富だ。
近年はアジア圏における生活提案型店舗の拡張、海外イベントへの販路拡大を進めており、今回の大阪出店は国内市場の再整備の一環とみられる。
関西では心斎橋や梅田など商業地区の再開発が進み、国内外ブランドが相次ぎ旗艦店を出す。観光需要やインバウンド回復もあり、国内アパレル市場では地域特化型の実店舗戦略が再び重視されている。
人件費や物価上昇の影響が続くなか、体験価値を中心にした販売形態が有力なモデルとなりつつある。
コミュニティ形成が次の焦点
〈BEAMS PLUS〉はファッションの4カテゴリー(アイビー、ワーク、ミリタリー、スポーツ)を軸にし、1940~60年代アメリカの衣服文化を再解釈して現代的に再構築してきた。今回の大阪店ではその理念を空間演出でも可視化した。関西エリアに根ざしたブランドや職人との協働を企画する動きもあり、地域経済への波及も見込まれる。
今回の出店は、ビームスが重視する「人・モノ・コトを軸にした文化的接点づくり」の流れの中に位置づけられるだろう。