株式会社ALTWELL(東京都江戸川区)は11日、株式会社LITALICO(東京都目黒区)から、訪問看護ステーションなどを運営するAmu.あむ株式会社(東京都世田谷区)の全株式を取得し、完全子会社化したことを明らかにした。これによりALTWELLは、東京西部エリアでの医療・介護の連携を一層強化し、地域密着型ケアの体制を拡充する方針だ。
ALTWELLは介護サービスを主軸とする企業である。今回の取得を一環と位置づけている。譲渡元となるLITALICOは教育・福祉支援を手がける上場企業であり、Amu.あむの全株式を保有していた。ALTWELLによる事業譲受によって、訪問看護と介護の連携モデルを広域的に展開する狙いがある。
東京西部に拠点拡大、包括的ケアを展開
Amu.あむは、世田谷区や調布市を中心に5拠点の訪問看護ステーションを運営しており、精神科領域に特化したケアを提供している。さらに調布市では障害者グループホームを1拠点展開しており、地域での自立支援と療養環境の確保を両立させてきた。ALTWELLはこれらの事業基盤を引き継ぐことで、西部エリアにおける新拠点づくりを進め、医療と介護の一体運用を目指す。
ALTWELLは2023年に介護分野へ本格参入して以降、東京東部および千葉県内で事業を拡大してきた。これまで在宅介護や地域密着型サービスを主軸に据えていたが、訪問看護を組み込むことで、看護・介護の両面から高齢者や精神疾患を抱える地域住民を支援する体制を整備する。今回の子会社化により、地域間で異なる医療・介護のニーズを横断的にカバーする構想が具現化する。
LITALICOからの譲渡で新展開、既存事業の補完に
今回株式を譲渡したLITALICOは、発達障害支援や教育分野で事業を展開する企業で、Amu.あむを100%子会社として運営してきた。譲渡にあたっては、障害者支援分野での事業整理を進める中で、ALTWELLが地域医療・介護の現場で培ってきた運営ノウハウを生かせると判断した形である。両社の間では、今後も人的・地域的な協働体制を維持する考えがあるという。
Amu.あむの設立は2016年で、精神疾患を中心とした訪問看護分野では地域から高い支持を得ている。特に「精神科訪問看護」と地域生活支援を組み合わせた取り組みは、都内でも早期に定着した例とされる。ALTWELLにとっても、介護中心の事業に医療の専門性が加わることは大きく、既存のケアネットワークの補完につながるとみられる。
高齢化対応と地域包括ケアの潮流
背景には、東京都をはじめとする都市部で進む高齢化と、精神疾患を含む多様なケアニーズの増大がある。訪問看護やグループホームなどの地域拠点は、医療機関と在宅介護施設の「中間領域」にあり、入院を避けながら日常生活を維持する支援の要となっている。ALTWELLの動きは、こうした地域医療・介護の一体運営という政策的潮流にも沿った形だ。
一方で、人材の確保や制度対応の面では課題も指摘される。看護師人材の安定供給や、精神科訪問看護の運営コスト負担などが、今後の持続的運用に影響する可能性がある。厚生労働省が進める「医療措置協定」制度でも、訪問看護事業所は医療提供体制の一端を担うことが想定されており、今後ALTWELLグループとしても制度面の運用対応が求められることになりそうだ。
地域拠点の整備と体制運用が注目点
今回の完全子会社化により、ALTWELLは東部から西部に至る都内の介護・看護事業網を一体運営できる体制を手に入れた。グループ内では、訪問看護を医療パートナーと位置づけ、高齢者福祉との連動を制度的に整備する計画がある。今後は、地域医療機関や自治体との連携を拡大し、居住支援・リハビリ・精神科ケアを含む包括的な地域支援の枠組みづくりを進める見通しだ。
地域での拠点整備と人材運用の両立は、多拠点経営の中で重要な注目点となる。医療と介護の連携強化を掲げるALTWELLの取り組みが、地域包括ケア体制の整備にどのような影響を及ぼすかが、今後の焦点となるだろう。