アイコニア・ホスピタリティ株式会社(東京都港区)は2025年12月9日、静岡県伊東市で運営する「AMBIENT伊豆高原コンドミニアム」と「伊豆高原わんわんパラダイスコンドミニアム」を統合し、「ほったらかしの宿 ゆうふり伊豆高原」として同年12月20日にリブランドすることを明らかにした。栃木県内に展開している「那須塩原」「那須高雄温泉ロッジ」に続く3棟目の「ゆうふり」ブランドとなり、ワンちゃんと泊まれるスタイルを維持しつつ、自由な滞在をテーマに刷新する。
リブランドにより、2施設が一体的に運営されることでサービスの効率化とブランド統一を図る。アイコニアは宿泊特化型や温泉ホテルなど全国約185棟・約2万5千室を直営または運営受託する。観光・ビジネス両市場に宿泊特化型ホテルを多数持ち、再編とブランド戦略を通じて施設価値の向上を進めている。同社は、伊豆高原エリアの観光需要の高まりに対応し、愛犬家需要に応える宿泊提案を強化する狙いを示している。
全83室体制で温泉と自由な滞在スタイル
新施設は8階建て、全83室。すべての客室にキッチンを備え、洋室、和洋室、メゾネット型など多様な間取りを用意する。レストランは設けず、宿泊者が好きな時間に地元食材を持ち帰って食べる「フリースタイル滞在」を提案。フロントではグループホテルのシェフ監修による冷凍弁当を24時間販売するなど、非対面型の利便性も高めた。温泉は美肌効果などで知られる赤沢対島温泉の湯を使用。大浴場と貸切風呂に加え、ワンちゃんと一緒に入浴できる貸切風呂も備える。屋上にはドッグパークや温水プール、愛犬と利用できるカラオケルームも設置し、ペットとの共生型リゾートを志向する。
立地は伊豆急行線・伊豆高原駅から車で約15分。大室山や一碧湖、伊豆シャボテン動物公園、伊豆ぐらんぱる公園など観光地へのアクセスが良く、季節を問わずレジャー客の訪問が見込まれる。観光関係者によると、近年はワーケーションやペット連れ旅行の需要が拡大しており、宿泊施設には柔軟な滞在スタイルが求められている。伊豆高原では宿泊者1人あたりの滞在単価が上昇傾向にあり、別荘地需要とともに長期滞在型のホテル開発が広がっている。
ブランド再編で運営体制転換進む
アイコニア・ホスピタリティは1999年に設立し、2025年7月に旧マイステイズ・ホテル・マネジメントから社名変更した。国内185棟・約2万5千室を直営または運営受託する。観光・ビジネス両市場に宿泊特化型ホテルを多数持ち、再編とブランド戦略を通じて施設価値の向上を進めている。「ほったらかしの宿 ゆうふり」は同社の独自ブランドで、施設側の過剰なサービスを控え、宿泊者が自由に過ごせる空間づくりを特徴とする。那須地区での実績を踏まえ、地方温泉リゾートの需要変化に対応する新モデルとして、伊豆・東海地区に初進出する。
同社は宿泊施設間の送客を促進する新しいロイヤリティプログラム「GoTo Pass」を2025年5月に始動。全国180棟以上で利用可能。会員制度を一新し、各施設の管理システムを強化する。会員制度の刷新により、各施設で異なっていた利用履歴やポイント管理を一体化し、国内外のリピーター確保を狙う。今後は「ゆうふり」ブランド宿を中心に電子決済連動などの利便性を高める計画も検討しているという。
再生と投資効率化へ、ホテル業界の収益構造変化
感染症流行後、地方リゾートでは長期滞在型の宿泊需要が定着し、レストランや宴会機能を持たない「宿泊特化型」への転換が相次いでいる。エネルギーコスト上昇や人手不足もあり、館内サービスの簡素化と単価維持の両立が課題となっている。宿泊運営を中心とするアイコニアの方針は、こうした市場構造の変化を踏まえたもので、ホテル統合やブランド再編による運営効率化が進むとみられる。業界関係者の間では、同社が地方観光地の施設再生を主導する動きが今後の再編トレンドを占うものになるとの見方が出ている。
自然と共生型リゾートの成長性
伊豆半島では近年、自然環境を生かした体験型・ペット同伴旅行が増加している。県内ホテル業界ではサステナブルツーリズム(持続可能な観光)を掲げる施設も増え、客層の多様化が進んでいる。「ゆうふり伊豆高原」は、都市圏から車で3時間圏内に位置する立地を生かしつつ、滞在時間や行動を制約しない宿泊スタイルを導入することで、リゾート市場の裾野拡大に寄与する可能性がある。開業後の稼働率や再来訪率が注目されるところだ。
同社は今後、「ゆうふり」ブランドを地方中核観光地に順次展開する方針を示している。地域農産物との連携や温泉地の魅力発信など、宿泊以外の付加価値事業にも取り組む。一方、従来のコンドミニアム型ホテルからリゾート型宿泊への移行により、施設運営の人員構成や設備維持コストの最適化も課題に浮上する。地方観光地における持続可能な運営モデルをどこまで示せるかが今後の試金石となるだろう。