株式会社ティーケーピー(東京都新宿区)は2025年12月10日、アパグループが所有する「アパホテル〈姫路駅北〉」(兵庫県姫路市)と「アパホテル〈魚津駅前〉」(富山県魚津市)の2棟を取得し、アパホテル株式会社とフランチャイズ契約を締結したと発表した。運営開始は2026年3月2日で、同社が運営するアパホテルは全国で22棟となることが明らかになった。
ティーケーピー(TKP)は2005年創業のフレキシブルスペース事業者で、ホテル事業では「会議と宿泊を組み合わせたハイブリッド型ホテル」の拡充を進めている。今回の取得は既存店を引き継ぐ方式とし、初期投資を抑えつつ短期間での事業開始を狙う。関西エリアでの基盤強化とともに、北陸地区への初出店となることから、出店戦略上の節目となる。
フランチャイズホテル22棟・3896室体制に
ティーケーピーによるアパブランドの運営はこれまで20棟で展開しており。今回の取得で全国22棟・3896室規模に拡大する。自社運営の宿泊施設全体では35棟・4727室(開業準備中含む)となる。売上高は2025年2月期連結で592億円に達し、ホテル・宿泊研修事業を中核に展開を加速している。同社は2023年4月策定の中期経営計画で掲げた出店目標を上回るペースと説明している。
アパホテルとの関係は2014年の「アパホテル〈TKP札幌駅前〉」開業に始まり、宴会場運営などを通じた協業が続いている。TKPはアパホテルの最大フランチャイジーとなっており、事業提携の深化が収益面にも寄与している。
姫路と魚津 地域特性に応じた展開
アパホテル〈姫路駅北〉は、JR・山陽電鉄姫路駅から徒歩圏内に位置する鉄骨鉄筋コンクリート造11階建て、全168室のホテルである。敷地面積は約691㎡、延べ床面積は4041㎡。姫路城やコンベンション施設「アクリエひめじ」に近く、観光・国際会議・イベント需要を取り込む。ビジネス客と観光客が混在する同地域では、宿泊機能と会議・研修用途を組み合わせるTKPモデルの適応が見込まれる。
一方、アパホテル〈魚津駅前〉はあいの風とやま鉄道魚津駅から徒歩1分、6階建て145室。延べ床面積は約2466㎡で、北陸新幹線延伸により関西方面からのアクセスが向上している。周辺には製造業の事業所が集積しており、出張需要に加えて立山黒部アルペンルート観光の拠点としても期待される。TKPが直接運営するホテルとして北陸初の展開であり、今後同エリアでの認知度向上が課題となる。
リブランド型出店で投資効率を重視
新築ではなく既存施設を取得しリブランドする方式は、TKPの出店戦略の特徴といえる。設備更新を最小限に抑えることで投資コストを軽減し、開業準備期間を短縮できる。取得後もアパホテルブランドを維持するため、利用者はこれまでの予約動線や会員制度をそのまま使え、運営側もブランド価値を活かせる。
ホテル業界ではインバウンド回復を背景に地方都市でのM&Aやリブランド案件が増えており、設備を活かした早期再稼働が収益改善の鍵となっている。TKPはこの流れを踏まえ、会議室・宿泊の両事業でシナジーを高める方針だ。
関西拠点強化と北陸市場の成長性
関西では大阪・京都に続き兵庫での拠点拡大が進む。姫路は新幹線停車駅を擁する交通結節点で、中国地方にも広がる需要が見込まれる。北陸では新幹線延伸に伴う観光客増加が顕著であり、魚津は黒部立山エリアの入り口に位置する。観光と産業の両面に宿泊需要がある地域を同時に取り込む戦略的な布陣となる。
ティーケーピーは今後もアパホテルとの協業を軸に、宿泊・研修・会議需要を一体的に取り込む戦略を継続する見通しだ。関西では他エリアとの連携、北陸では観光シーズン変動への対応力が問われる。また、既存施設取得モデルによる拡大は合理性がある一方で、設備更新や人員確保、地域観光との連携強化が持続的成長の鍵になる。国内旅行需要の回復と企業研修需要の増勢を背景に、TKPの宿泊事業は多地域展開の局面を迎えた。関西・北陸両市場での成果が、今後の全国戦略の指標となるか注目される。