神姫バス(兵庫県姫路市)は2025年12月14日、西山酒造場(兵庫県丹波市)が実施する「発酵おせちづくり体験」に合わせ、地域情報メディア「Localprime」上で特別プランを企画したことを明らかにした。発酵をテーマに地域の食文化を学ぶ体験型企画は、兵庫県内の観光・地域事業支援の一環で実施される。
丹波市は酒造りをはじめ、味噌や甘酒といった発酵文化が根づく地域で、地域素材を生かした体験型事業への関心が高まっていた。西山酒造場との連携で、Localprimeが地域の体験企画を事業化する流れが定着しつつある。神姫バスは観光と文化の振興を推進する施策として取り組みを拡大している。
兵庫・丹波の酒蔵で特別体験
今回の体験は、12月14日に西山酒造場「鼓傳」で行われる。甘酒や酒粕、丹波栗などを使った4品を調理し、専門スタッフによる発酵の仕組みの解説を受けられる。メニューは「甘酒のまろやか酢仕立ての紅白なます」「丹波栗の発酵きんとん」などで、調理後は試食会も実施する。参加者には家庭で再現できるレシピが配布される。定員は16人で、オンラインで申し込みを受け付ける。参加者には酒蔵特製のまかないランチと甘酒ヨーグルトのお土産が用意される。現地集合・解散型の少人数制で、体験の質を重視した内容となっている。
体験販売を担うLocalprime
神姫バスは地域事業者と連携して兵庫県内の文化体験を商品化する「Localprime」を始動した。サイトでは、酒蔵体験のほか、鍛造ゴルフクラブづくりや歴史キャンプ、播州織工房でのものづくり体験など約数十件の企画を展開中だ。Localprimeは同社が展開するメディアとECを融合した地域発信プラットフォームで、姫路・丹波・神戸を中心に、観光と地場産業の接点を広げている。
兵庫・市川町の「藤本技工」と組んだ「侍アイアン製作体験」など、職人技を体感できるプランも扱う。クラブ製造を通じて産業技術の継承を伝える内容で、専門職人との直接対話が特徴だ。Localprimeではこうした一日完結型の企画を通じ、観光消費を地域内に還流させる構想を描いている。
観光と体験を結ぶ新たな流れ
兵庫県では、コロナ後の観光回復と地方誘客をめざし、「体験型観光」を軸にしたプログラムが増えている。神姫バスは路線・貸切バス大手で地域交通を担い、デジタルチケット「Mobers」や観光パス「しろのまちめぐり2DAYパス」などを通じ、旅行の事前予約・キャッシュレス利用を推進している。Localprimeはこの取り組みの一環として、交通と体験を一体化した地域の観光導線づくりを目指しており、今回の丹波での取り組みもその延長線上にある。
西山酒造場は江戸期創業の酒蔵で、近年は酒粕を活用した菓子や調味料づくり、見学型イベントにも注力してきた。発酵文化への理解を広げる場を設けることで、農業や観光との連携を深めており、神姫バスとの協業で販売チャネルの拡大を図る。
地域文化の発信と継承が焦点
体験型観光の広がりは、地域産業の技能継承と雇用維持につながると予想されている。発酵分野では、若手の起業や商品開発に結びつく動きも出てきており、酒蔵を拠点とするワークショップの経済波及効果が注目されている。一方で、継続的な人材確保や季節変動を踏まえた収益化の仕組みが課題とされ、Localprimeの安定した流通基盤構築が鍵を握るとの見方もある。
神姫バスは「地域事業者の魅力を正確に伝える橋渡し役になりたい」という考えを示し、県内外からの参加需要を見極めながら事業モデルの確立を図る。発酵文化や伝統産業をテーマにした体験型観光が、今後の地方経済の活性化にどの程度寄与するかが議論の中心になるだろう。