野村不動産とタオ・エンターテイメントが共同で設立したNRE&TAOエンターテイメントパートナーズ合同会社は、2026年4月に京都市内で常設劇場「DRUM TAO THEATER KYOTO」を開業すると明らかにした。世界的な和太鼓パフォーマンス集団DRUM TAOの専用劇場を開設し、京都の夜間観光の新たな拠点をめざす。劇場はJR京都駅八条口そばの商業施設「アバンティ」ビル内に整備され、日常的に公演を展開できる専用空間として位置づける。
野村不動産は不動産開発を通じて地域交流拠点の創出を進めており、京都では観光資源の多角化を狙う。今回の専用劇場は、地域の夜間需要の掘り起こしや文化体験型コンテンツの拡充を目的に企画された。パートナーのタオ・エンターテイメントはDRUM TAOの制作・マネジメントを担う企業であり、芸術文化の発信力を強みに共同事業を進めている。さらに、JTBコミュニケーションデザインが包括的業務提携のもとで事業運営に参画し、野村不動産コマースが事業推進を担う。
京都の夜観光に新拠点、専用劇場が生む体験価値
DRUM TAO THEATER KYOTOは、観客が和太鼓の迫力を間近で体感できる専用ホールを核とし、滞在型の体験空間を備える。客席での鑑賞に加え、作品世界に没入できる演出を取り入れる予定だ。劇場内には京都の職人と協働した巨大提灯や暖簾を備えるラウンジを設置し、照明演出で開演前後の雰囲気を醸成する。提灯は小嶋商店、暖簾はのれん中むらが手がける。さらに家紋デザインの京源による紋章作品が装飾され、伝統美と現代デザインの融合が象徴される。屋上には開放的なルーフトップスペースを設け、観劇後の余韻を楽しめる空間を設計する。さらに、劇場内のショップでは限定グッズや京都の伝統品とのコラボ商品を取りそろえる。
1日2回公演で幅広い観客層に訴求
公演は1日2回、テーマをそれぞれ変えて実施する。訪日旅行者から地元住民まで幅広い層に和太鼓芸術を届ける狙いだ。常設劇場として年間を通して上演を続けることで、京都の夜間経済の安定的な活性化を促す。公演内容は非言語(ノンバーバル)型で、言葉の壁を越えて国際的来訪者にも伝わりやすく設計される。DRUM TAOはこれまでも世界31カ国・500都市での公演実績があり、累計観客動員は1,000万人を超える。関係者は「京都を舞台に、伝統を次代へ継ぐ文化拠点を形成したい」と話す。
地域文化と連携し伝統を現代に再生
劇場の構想は京都の文化と現代アートの共生を核としている。DRUM TAOが長年磨いてきた和太鼓表現を軸に、京都の職人やアーティストと連携し、新しい演出や美術を取り入れる。これにより日本の伝統文化がグローバル視点で再解釈され、地域の創作活動とも結びつく形をめざす。開業後も地元企業や工芸職人との協働プロジェクトを継続し、京都全体の文化産業との波及を図る。
観光と芸術融合、企業協賛で広がる支援
事業にはクレジットカード大手のJCBが協賛パートナーとして参加する。JCBは伝統と革新の融合という劇場理念に共感し、文化発信を支援する立場を示した。自社の国際ブランド網を通じて日本文化の魅力を海外に紹介している。今回の協賛を通じ、京都観光の持続的発展への貢献を掲げる。金融業界でも文化事業への支援が増えるなか、観光と企業連携の新しいモデルとして注目される。
文化回廊形成進む京都、夜間経済に追い風
京都市は観光の季節・時間帯の偏りを是正するため、夜間滞在型コンテンツの整備を推進している。市中心部では2025年にかけて、劇場や美術イベント、香文化体験などが相次ぐ見通しだ。京都北部の京丹後などでも音楽や美術の年間イベントが増え、文化を軸にした広域観光圏が形成されつつある。JR京都駅前に常設劇場が加わることで、市内回遊の拡がる可能性がある。観光関係者は宿泊・食・文化体験を組み合わせた夜間観光の形成に弾みがつくとみている。
公演拠点化進む京都、国際発信に期待
和太鼓を核とした舞台芸術は言語に依存しない発信力を持つ。欧米やアジアで高評価を得てきたDRUM TAOにとっても、京都の中枢に専用劇場を設けることは日本文化輸出の象徴といえる。公演を継続することで芸術・観光・商業の波及が見込まれる一方、運営面では持続可能な事業モデルの構築が課題となる。出演者や地域職人を巻き込んだものづくりの仕組みづくりが、京都の都市文化戦略の中でも注目されそうだ。
2026年開業へ、期待と課題が交錯
開業まで残り2年。設計・施工の最終調整や地元企業との協働体制づくりを進める。関係者によると、開業初年度から国際観光需要を見据えた演出体制を整備する計画が検討されている。一方で、訪日客数の変動や公演の長期運営に伴う採算確保など、運営上の課題も残る。文化・観光・商業の連携が持続的に機能するかが成否を左右しそうだ。和太鼓を中心とした日本発の公演芸術が、どこまで世界の観光都市・京都の中で根づくか。2026年春の開業に向け、地域と企業の協業モデルの成果が問われる局面に入っている。