株式会社メニコン(名古屋市中区)は2025年11月、岐阜県内で開かれた地域イベント「関の工場参観日」と「はいてくヒルズ」に、同県の関工場と各務原工場がそれぞれ参加したことを明らかにした。
参加はいずれも地域住民との対話を目的としたもので、関工場と各務原工場が岐阜県内のイベントに参加した。
同社が地域イベントに参加したのは、ものづくりの現場を公開し、地元住民に生産工程を知ってもらう狙いがある。岐阜県内で、企業と地域社会が連携して人材育成や産業振興を進める機運が高まっており、同社もその一環として積極的に関わった形だ。
関工場で製造体験に反響
関市主催の「関の工場参観日」は、刃物のまちとして知られる同市の工業団地で12回目を迎えた。
今年は11月13日と15日の両日に開かれ、メニコンの関工場では「見て、聴いて、触れて、感じるメニコン」をテーマに工場見学やワークショップを実施した。多様なコンタクトレンズの製造を手掛ける同工場では、事前予約の枠が満席となり、2日間で計38人の見学者が訪れたという。
見学者は社員の作業工程や品質管理体制を見学し、コンタクトレンズ製造の現場に触れた。参加者からは「製品へのこだわりを感じた」「品質維持の姿勢に感銘を受けた」との声が寄せられたほか、公式キャラクター「メル助」による来場者対応も行われ、地元住民との交流が図られた。
各務原工場が初オープン
一方、各務原市の「はいてくヒルズ」は今年で2回目を数える地域主導のイベントで、メニコンの参加は初めて。同市のテクノプラザ工業団地にある「ものづくり支援センター本館」で11月24日に開催され、約140人が訪れた。
今回は、1DAYコンタクトレンズを生産する各務原工場と生産技術拠点テクノステーションの技術を紹介。
レンズ素材に触れる体験や、家族連れ向けの目の健康展示「みるパーク」などを通じ、子どもから大人までが参加できるプログラムを用意した。来場者からは「初めてコンタクトを触った」「家族で目の健康を考えるきっかけになった」との反応があったという。
地域とのつながり強化を重視
メニコンは1951年に日本初の角膜コンタクトレンズを開発して以来、名古屋を拠点に世界80カ国以上で事業を展開している。今回の両イベントへの参加は、同社が掲げる経営理念の中でも「社会との共生」を体現する動きといえる。
岐阜県内には複数の生産拠点を持ち、技術者育成や環境対応型の製造にも注力してきた。
国内ではものづくり産業の担い手不足が課題となる中、メニコンは地元の学生や若年層に対し、製造業の魅力を直接伝える機会を増やしている。こうした公開イベントは採用活動や技術継承の面でも好影響を与えるとされ、地元自治体も企業参加を歓迎している。
県内で広がる製造イベント
岐阜県では、関市の「工場参観日」をはじめ、複数の自治体で地域一体型の製造体験イベントを展開している。参加企業は工作機械、金属加工、精密製品など幅広く、工場を開放して生産プロセスを紹介する取り組みが広がる。産官学連携による地域産業振興の新たな形として、他県でも同様の動きが相次いでいる。地元の人々に「製造を身近に感じてもらう」という趣旨は、今後の企業活動にも共通する課題認識を与えるものとなっている。
同社は今後も地域との協働を深める方針を示している。関工場や各務原工場を軸に、教育機関との連携や次世代ものづくり人材の育成を検討しているとみられる。来場者との交流を通じて、製品の安全性や環境対応への理解を広げる取り組みを継続する見込みがある。
一方で、製造公開イベントは安全確保や機密情報管理など運営上の課題であるとみられる。メニコンが今後どこまで公開範囲を広げられるかが注目される。企業と地域が相互に信頼関係を築ける仕組みづくりが鍵となるだろう。