キリンホールディングス(東京都中野区)は2025年12月8日、子どもの健康啓発を目的とした幼稚園・保育園向けの「免疫ケア推進園」が開始当初の約2.6倍に拡大したことを明らかにした。現在、全国2,637園で展開している。
同社がこの取り組みを強化するのは、幼少期からの生活習慣が免疫機能に与える影響への関心が高まっているためだ。発表会やお遊戯会など行事が集中する秋冬期は体調を崩しやすい園児も多く、教育現場や保護者の間で「子どもが元気に大切な日を迎えられるよう支援してほしい」との声が広がっていた。キリンはこうした社会的要請を受け、園と家庭が連携して短期間で健康行動を学ぶ「免疫ケアサポートアクション」を導入した。
全国2,637園が参加し家庭連携が進展
プログラムは「キリン キッズケア」プロジェクトの一環で、全国47都道府県の幼稚園・保育園が参加する。平日は園内で、週末は家庭でも実践する3週間の集中取り組みとして設計され、園児が主体的に健康行動に取り組む。園では日替わりで「けんこう大臣」を任命する。食事や運動、睡眠、手洗い・うがい、呼吸の5要素を中心としたミッションに挑戦する。家庭では保護者が配布された「ミッションカード」で活動を確認し、達成した園児には園で「ミッションクリアカード」が渡される。順天堂大学医学部の小林弘幸教授が監修し、科学的知見に基づく生活習慣教育を取り入れている。園児の自発性を促しながら、楽しみながら続けられる内容に工夫している点が特徴だ。
地域団体と協働し啓発活動を拡大
取り組みには複数の教育団体が賛同しており、北海道や新潟、埼玉、愛知、東京の幼稚園・保育園協会などが連携する。地域ごとの差を踏まえつつ、各地で保育現場と家庭が一体となって免疫ケア活動を推進する体制が整った。キリンは過去から続く「食と健康」を重視する企業戦略の一環として、この活動を社会的価値創出の柱に位置づけている。教育現場との協働により、子どもの健康リテラシーを高めることが狙いだ。同社は園児および教職員向けに自社開発の免疫ケア関連製品を無償提供しており、各園で活動を支える下地となっている。
免疫ケア飲料が好調、需要拡大続く
関連商品の販売も拡大傾向にある。キリンビバレッジが手がける機能性表示食品「おいしい免疫ケア」シリーズの2025年1〜11月販売数量は前年同期比約3割増となった。特に新製品「+ダブルビタミン」は、発売から3週間で年内目標を達成するなど堅調だ。
プラズマ乳酸菌を配合した飲料への関心の高まりは、同社が教育現場で進める啓発活動とも連動している。家族を単位とする健康意識の向上が購買行動にも影響しているとみられ、秋冬の需要期にファミリー層の購入率が伸びたとの調査結果もある。社会全体で体調管理への意識が強まる中、同社グループは「科学的根拠に基づく健康支援」を事業の中心に据え、飲料・サプリメントの両領域で連携を強めている。
ヘルスサイエンス事業を軸に成長加速
キリングループは「自然と人を見つめるものづくり」を掲げ、酒類・飲料に加え、ヘルスサイエンス領域の事業拡大を進めてきた。今回の教育支援活動はその象徴的事例であり、同グループの長期経営構想にも位置づけられている。CSV(共有価値の創造)経営の下で、健康関連事業と社会貢献活動を連動させ、地域社会と次世代育成への貢献を可視化する狙いもある。関係者によると、教育現場からの協力要請やプログラム導入の希望は予想を上回るペースで増加しているという。今後はプログラム内容の地域性への対応や、家庭での継続支援の在り方が次の課題となる。子どもの自発的な健康行動をどこまで定着させられるかが、取り組み拡大の鍵を握るとみられる。